第3節 その2 行方不明の警官
町の北は海から離れているからか、割と普通の民家が多い、この町特産と思われる農作物を作っている僅かな人達が、このあたりに住んでいるとのことだ。
その畑を抜けたところに、派出所のような建物があり、警官のような魔族が1人頭を抱えている。
「あのう。
城塞都市から伯爵の使いで来たものです。
この町で今行方不明事件が多発していると聞いたのですが・・・・・・」
僕は率直に訊いてみた。
交番や公務員のような人に対しては、何故か昔から話かけやすい。
個人的にだが。
「ああ、よそ者か・・・・・・。
今忙しいんだよ。
どっかいけ。」
警官魔族はとても冷たい。
僕は傷ついて、固まってしまった。
そのままでいると、マテリアが、横の袖を引っ張り、優しく声をかけてくれた。
「大丈夫?交代するね。」
マテリアが今度は警官魔族に声をかける。
「なんか大変そうだね。
おじさん。
どうしたの?」
また、適当にマテリアが話かける。
「ああ・・・・・・そうなんだよ。
大変なんだよ。
同僚の警官が行方不明になっちまった。
つい一昨日まで一緒に働いていたのに、昨日から来ないんだ。
家に行っても、誰もいない。
全くどうしたらいいんだ。
二人でこれから、どうやって行方不明者を探しに行くかを考えていたところなのに・・・・・・・もう駄目だ・・・・・・・。」
(おいおい、なんか僕の時と対応が違うんだけど・・・・・・)
「どんな作戦だったの?」作戦という言葉が大好きなマテリアはいつも直球で訊く。
「えっ?ああ、君たちはご領主様のお使いだっけ?そうか、なら教えてもいいんだ。
そんな大した計画でもないし。」
警官は明らかに僕を無視して、話し出す。
(僕に分らない何か交渉術というか会話の作法があるのだろうか?そうに違いない。)
「簡単にいうと、この島には昔から立ち入り禁止の地域があってね。
そこぐらいしか見当がつかないし、そこに行ってみようという話だ。
町長代理の許可も得ていたんだ。
昨日の昼に、出発予定だったんだが。
場所は、ここからさらに北に進んだ洞窟だ。
・・・・・・洞窟の入り口にしめ縄があるから、それは切らんようにな。
どうせいくんだろ?止めはせんよ。
子供といっても伯爵の使いだからな。
ちなみに同僚の目印は、腕を螺旋状に3周ぐらい取り巻く黒い腕輪をつけている。
そんなの着けている奴この島にはいないから、すぐに分かると思う。
なんだかんだ言って大事な友達なんだ。
よろしく頼むよ。」
警官は投げやりなようで、実は親切に僕らにいろいろ教えてくれた。
ただ自分ではもう何もする気力がでないんだろう。
僕らはお礼を言うと、今日はもう遅いので、宿屋を探し、明日その《北の洞窟》へ出発することにした。




