第2節 その1 ペンダントと杖
朝早く、《偽りの月》が太陽を隠す前に、僕らは家を出た。
ノース・カパーへ向けて出発した。
準備はばっちりだ。
旅の分担としては、荷物持ち兼魔物退治担当が僕。
ナビゲーター兼食事担当がマテリアだ。
僕らの冒険が始まった。
城塞都市の北門を出ると、街道が一直線に北へ向かっている。
聞き込みした通りだ。
人気はない。
街道を進んでいくと、草原や林が左右に時折みられるが、魔物の姿は見当たらない。
1日歩いて、夕方になった頃、予定していた洞窟が見つかった。
洞窟にはドアが付いており、人為的に作られたものであることが分る。
ドアには錠がついているが、これには文字が書いてあり、簡単な文字が読める者(マテリアにでも読めた)なら簡単に開けることができた。
「特に魔物もお化けもでなかったねぇ。」
麦わら帽子をかぶったマテリアが気楽な調子で言う。
「そうだね。
逆にいえば、明日ノース・カパーへ到着するまでに魔物がいるんだろうね。
明日は今日よりも用心しないと。」
僕は実のところ緊張しっぱなしだった。
キョロキョロとあたりを見回しては、腰に付けた短剣を直ぐに手にできるように身構えていた。
マテリアの方はお気楽なもので、歌なんか歌っていたような気がする。
まるでピクニック気分だ。
正直、僕は疲れ切っていたので、直ぐにでも眠りたかったが、マテリアが今日の食事だと張り切って作っていたので、とても横になれるような状況ではなかった。
「そういえば、マテリア、その首から下げているペンダントはどうしたの?」
僕はふと気がついて尋ねた。
「ご領主様にもらったんだよ。
『マテリアに似合うものを見つけたのでどうぞ』だって。」
伯爵は、本当にマテリアに優しい。
洋服も貰って来たようで、かわいらしいワンピースとカーティガンのようだが、何気に堅い革や金属が一部使われていて、僕よりも安全な装備になっているようにもみえる。
他にもいろいろ貰っていそうだが、今回は僕の修行だ。
むしろ助かるといってもいいだろう。
「あと先生にはこの杖を借りたの。
ご領主様からお借りしているものだからあげられないけど、持っていきなさいって。」
マテリアは結局、クプラムさんにも会いに行っていたようだ。
ほんとうに不思議な女の子だ。
頼りになるのならないのか分らないけど、自分にできないことをサラッとしてくれる。
マテリアが伯爵やクプラムさんのところでどんな話をして来たか、いろいろ話をしてくれたような気もするが、僕はいつのまにか眠ってしまっていた。
(ごめん、マテリア・・・・・・)




