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第1節 光介とマテリアの作戦会議



僕とマテリアは、伯爵の城である《白銀の塔》から家に帰ると、今後の方針について話あった。



伯爵からの依頼である一つ目のクエストの目的地は北方の台地にある都市だ。


僕は当然、マテリアですら、どのくらいの距離があるのか分らないし、食糧や寝場所をどう確保するかしっかり作戦を立てる必要がある。




「マテリア、作戦会議だ。


そう、とりあえず、お互い情報収集をしよう。


僕は仕事先や取引先の人に聞いてみるよ。


マテリアは、クプラムさんに相談してもらえるかな?」


僕は、妥当な分担をマテリアに提案したつもりだった。


しかし、マテリアは、


「うーん。


私はご領主様に聞くのがいいと思うな。


一番物知りだし。」


たしかに。




「でも、昨日伯爵は、『修行するのだ』とか、自分で頑張れみたいな感じで言っていたし、そんな簡単に教えてくれたりは、しないんじゃないかな?」マテリアの言うことはもっともだが、教えてくれるなら、そもそも昨日の時点で話してくれたのではないか?


「じゃあ、私がご領主様のところへ行ってくる。


コースケは、クプラムさんのところも行ってきて。


明日の夜まで時間かかるかもしれないけど。


もう一度行ってくる。」


マテリアはもう一度伯爵のところへ行くつもりだ。


たしかに、伯爵はマテリアの事を気に入っているようだし、いきなり怒ったりはしないだろう。




「わかった。


じゃあその分担でいこう。


明日の夜お互いの情報を持ち寄って、明後日は買い出しと出発の準備に、最終手順の確認、旅の出発はその後だ。」


僕もまだ体の方は万全とは到底いえないし、マテリアも相当疲れているだろう。


情報収集は明日にして、今日は早く寝ることにした。






 次の日は朝から二人とも別々に行動し、お互いの担当する情報収集先に向かった。


僕は慣れ親しんだ鍛冶屋や、取引先の武器屋に食堂、さらに役場のクプラムさんに話を聞いた。


まずは、北方の都市の場所や名前について、そして途中に現れるという魔物の噂や対応の仕方だ。


僕は聞き込みをしながらも、マテリアの事が心配だった。


伯爵の住む塔まではとても近い距離とは言えないし、そもそも依頼された直後に、その依頼した本人にいきなり助けを求めるようなことをして、気を悪くしないだろうか。


そんな小さなことを気にするような人ではないと思うが、いまいち何を考えているのか分らないし・・・・・・・。


そんなことを考えつつ、ひと通り知り合いに話を聞いた結果、収穫はあった。


まとめると、


1.城塞都市の北門からまっすぐ北へ向かう。

2.街道沿いに行けば着くが、念のため、コンパスを準備した方がいいだろう。

3.途中で左に大きな坂がある道に分岐するので、その坂道を登れば、そこから先は目的地である北の都市ノース・カパーだ。

4.途中に野犬のような魔物がでるが、大人の魔族よりは弱い。

5.複数出てくる時があるのと、夜はもっと強い魔物が出るらしく、街道の途中にある休憩用の洞窟があるので、そこで朝まで待ってから向かうと良い。

6.2日歩けば十分辿り着く。

7.ノース・カパーの住民は人間しかいない。

8.魔族のマテリアと行くなら、帽子を被せるなりして、できる限り気付かれない方が良いかもしれない。


そんな感じだった。


クプラムさんは、自分も魔族だからかマテリアの事を気にしていた。


帽子の話もクプラムさんらしいアドバイスだったのかもしれない。


僕は十分と思われる情報を携え、家に戻った。


もう外は暗くなっていて、マテリアが帰っているか心配だと思いドアを開けると、マテリアは自分のベッドの上で、うたた寝をしていたようだった。


そして、僕のドアを閉める音がマテリアを起こしてしまった。




「ただいま。


起しちゃったみたいだね。


ごめん。」


マテリアに声をかける。




「ううん。


あれ、もう夜?」


マテリアは寝ぼけているようだ。




「そうだね。


そっちは収穫あったかい?伯爵に怒られたりしなかった?」


僕はとりあえず、気にかかっていたことを率直に訊いた。




「えっとね。


今日は、チョコレートのケーキとりんごのジュースをくれた。


フフン。」


上機嫌に応えるマテリア。


ある意味では、質問の答えにはなっているのかもしれない。




「・・・・・・それは大収穫だね・・・・・・良かった。


じゃあ、僕の方から報告するけど、夕ご飯を食べながら話そうか?」


僕はそう言いながら、もうテーブルに食事の用意を始めていた。


マテリアは、「うん!」といいながら手伝ってくれる。


食事をしながら、僕は先ほど仕入れた3つの情報を説明した。


説明をしながら、整理も兼ねて、明日の準備と買い出しリストを書き出して行った。


荷物を背負うためのリュックサック、食糧、水筒、寝袋、マテリアの帽子、そして、魔物と戦うための装備だ。


どれも帰りに下調べしてあるし、予算も何とかなる範囲だ。


「大体こんな感じかな。


マテリアはどう思う。」


マテリアはこっくりこっくりしている。


僕はリストをつくるのに一生懸命だったので、気付かなかったが、マテリアは疲れ切って寝てしまっていたのだ。


僕は苦笑いをしながら、マテリアをベッドに運ぶと、自分も早めに寝ることにした。


作戦会議は明日買い物をした後でもいいし、1日を争うわけでもないだろう。




「仕事は少し休ませてもらうことになっちゃったな。


店主マスターありがと・・・・・・」


僕は、鍛冶屋のマスターが、何も言わずに、むしろ背中を押すように送り出してくれたことを思い出しながら、眠りについた。






 次の日は、朝から2人で買い物に出かけた。


マテリアは買い物リストを見ながら、靴やナイフを買うんだとか、いくつか勝手に付けたしていたようだが、言われてみればたしかに、どれも必要に思われた。


ひと通り、買い物をして、準備ができたことを二人で確認した後、次の日の朝、早速出発することにした。


昨日と違うのは、マテリアが起きていたのと、魔物が出た時の対応だけは事前に打ち合わせをしておけたことだ。


正直マテリアは足手まといかもしれない。


だけど、僕は一人で旅をする自信もなかったし、マテリアも一緒に行きたいと言ってくれた。


僕は魔物にあって、戦うことなんかできるのだろうか?そして、その時、僕は彼女を守る事ができるだろうか?





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