第9節 その4 三つのクエスト
「よし、まず基本的には、この世界を知ること。
国中を回り、装備を揃えることと街を巡ること。
その中で、自分の指輪の力とその使い方を学ぶこと。
これは基本だ。
具体的には今から話す3つのクエストを進める中で常に意識しろ。
もちろん、私が直接赴けばどれもすぐに済むものばかりだが、それではまるで意味がない。
軟弱な君を鍛えるための修行だと思え。
良いな?
さて、まず、一つ目のクエストは、北方の台地にある都市へ赴き、そこの領主に私が蘇ったことを伝えろ。
そして、城塞都市で交易することを伝えるのだ。
畜産に必要な用具類も発注するようにいうのだ。
おそらく城塞都市から途中に出てくる魔物か何かが原因で仕事の依頼も商人も来ていないのだろう。
詳細は不明だが、あそこの住民が城塞都市へ交易に来ないのは少しおかしいからな。
このあたりに、それほど強い魔物はいないが、あのあたりの住民はみな人間で、しかも穏やかな性分だ。
きっと閉じこもっているのだろう。
次に、二つ目のクエストは、皆を守る力を身につけることだ。
そのために、強い宝石を手に入れろ。
この都市の南方の島にアクアマリンのオリジナルがある。
それを手に入れ、魔法の力を手にするのだ。
良いな?そして、島の長に会い、やはり同様に城塞都市と交易をさせろ。
港の封鎖は解除させておく。
最後に三つ目のクエストだ。
現在この国で一番大きな問題が西にある地下ダンジョンの最下層にある《悪魔ゲート》と呼ばれるものだ。
《悪魔ゲート》は地下世界である《奈落》に繋がっている。
その《悪魔ゲート》を通り、《奈落》から出てくる魔物が西の広大の農地や住民に被害を与えている。
地下ダンジョンの最下層を目指し、《悪魔ゲート》を閉じるのだ。
また、そのダンジョンの最下層には以前私が使っていた長い槍がある。
強力な武器であるそれを手に入れるのだ。
ゲートが閉じて魔物さえ出なくなれば、西の住民はすぐにでも城塞都市に交易に来るだろう。
この修行の目的は総合的な訓練も兼ねている。
戦闘力・持久力・生き抜く力を身につけることだ。
その頃には、お前の体に残る腫瘍を取り除く体力もついているだろう。
私もそれまでに準備をしておく。」
伯爵はだいたいの段取りを3つのクエストとして僕に指示した。
どれも簡単とは思えないし、想像もつかない。
ただ、今は、なんでもできる気がする。
この指輪の力や、肺の病気が治ったからかもしれない。
「わかりました。がんばります!」
不安はある。
ただ、それ以上に僕は自分のこれからの冒険に心躍るのだった。




