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第8節 その2 伯爵の新しい楽しみ

白銀の美しい塔のほぼ最上階に位置する、この広い部屋にいるのは、光介とマテリア、それに伯爵と骸骨兵隊長カルスの4人だった。


先日マテリアが来た時には無かった大きなテーブルの席に光介、マテリア、カルスがついていた。


伯爵がお茶を入れてくれているのだ。




一生懸命これまでのいきさつを説明しているマテリアを光介が肘でつつく。




「マテリア、伯爵ってこの国で一番偉いんじゃなかったのか?なんで僕たちにお茶のお代わりをいれてくれるんだ?」光介は、自分がお客様対応されているのが不思議だった。




「私にも分らない。


紳士とか貴族の嗜み?なのかな・・・・・・」


マテリアはあまり緊張などしていないようで、伯爵とカルスとの話に戻っている。




(とりあえず、失礼があったら謝るしかないな・・・・・・)光介は半ば、話に取り残され気味でいる自分の、この居心地の悪さをなんとか解消できないかと考えることをあきらめ、周りに合わせることにした。




「それでね。


泥棒に入った大人の魔族3人を突き飛ばして、助けてくれたんだよ。


とっくみあいになっても、負けないぐらい強いの。


だから、今鍛冶屋さんで仕事をさせてもらえているんだって。」


マテリアは自分のことのように得意げに光介の事を話している。




塔についてから、まず伯爵に光介がどこから来たのか?と聞かれ、そこからずっと、これまでのことを話している。


移動しながら、そして、席についてお茶をいただきながら。




「なるほど。


それは面白い話だ。


しかし、理解はできたし、不思議な話ではないな。


私にはだいたいの理屈がわかった。


一部を除いてな。


まずは、そのあたりから説明しよう。




その後、私が君たちを呼んだ理由を話そう。


その前に、お菓子はどうかな?、マテリア。


とてもおいしいぞ。」


伯爵はまじめな顔で、お菓子をマテリアの前に差し出す。


光介はそれほどお菓子が好きというわけではないし、命の恩人に対してあまりわがままなことを言うつもりはないが、なんとなく、不公平だな、と思った。




「マテリア、お砂糖は一つまでにしておいた方がいい。


虫歯になるぞ。」


自分も席につき、お茶を淹れながら、マテリアに注意している。


伯爵はマテリアの事が今一番の関心事らしい。




お菓子を食べさせてあげたり、お茶がなくなれば、すぐに淹れているのに、今さら虫歯がどうのというのもおかしな感じがしたが、いたって本人はまじめらしい。


マテリアもそんなことを注意されたことはないらしく、ふむふむ、と聞いている。




「さて、本題に入ろう。


その後、体調はどうかな?」


伯爵は話を切り出した。




「はい。


少しだけ熱や痛みがありますが、今まで一番楽なくらいです。


助けてくれて本当にありがとうございました。」


光介は立ちあがり、まず言いたかったお礼を言うことができた。




「ふむ。


実はそれについては、君に伝えなければならない事がある。


君の肺の腫瘍は別の場所から転移したものでな。


もう一つ取り除かねばならない腫瘍が残っている。


しかし、これは直ぐに悪化するような類ではないものである事と、取り除くのが私でも少し難しい場所にある事を覚えておいて欲しい。


後日準備ができたら、対応しよう。」


自分の病気が完治していない事は、ショックではあったが、伯爵ならなんとかしてくれると、光介は自分を励ました。



「僕はこの病気が治るなんて思いもしていませんでした。


こんな僕でできることがあれば何でもやりますので、お役に立てるように頑張りますので、なんでもお申し付けください。」


「ふむ、そうか・・・。


それでは、私から君に依頼がある。


ただその前に、まずは、私に君の元いた世界の話をしてくれたまえ。


話して欲しいことは、私の方から質問しよう。


その後、この世界について私が話そう。


いいかね?」


伯爵が光介に問う。




光介は、依頼が何なのか気にはなったが、自分がこの世界に存在する事について、なんの疑問も持たず話す伯爵がもっと気になった。


この人はこの世界の全てを知っているのかもしれない。


本当は学校の先生に質問する子供のように、いろいろなことを聞きたかったが、とてもそんな空気ではないし、そんな立場でもない。


伯爵の威厳のようなものが、光介に緊張感を与える。




「分りました。よろしくお願いします。」


光介はおじきをして、席についた。




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