第3節 その3 再発
城塞都市の西門から北に沿った市場通りは閑散としていた。
もう夜になってしまったが、職が見つかったお祝いに、お菓子とまではいかないが、手ごろな果物を買ってマテリアをびっくりさせよう。
そんなことを考えながら、市場を物色していた時、激しい胸の痛みが僕を襲った。
久しぶりに咳が少ない日が続いていたが、病気が治ったわけではないのだ。
「うぅうう。」
思わずうずくまって、座り込んでしまう。
道行く人は自分のことなど気にも留めず通り過ぎていく。
うずくまり、痛みに耐えながら、僕の胸には、大きな不安が影を落とす。
(もし僕がこのまま倒れてしまい、マテリアの元へ戻らなかったらどうなるのだ?)
(結局のところ、僕が病気で動けなくなったら、マテリアに余計負担が増えるのではないだろうか?働くこともできない自分のために、彼女を働かせるようなことはしたくない。
そんな思いをさせるなら僕は今のうちにここから立ち去った方がいいのではないか?でも今はそんな心配はさせられない。
僕がいなくても生計のめどが立つまでは何とか頑張り、しっかりとした理由をつくり立ち去るべきだ。)
とても悲しい想定をしながらも、僕はそんなことはしたくないと思っている。
とにかく、そんな暗いことを考えるのは、今はよそうと痛みをこらえ続ける。
5分ほど休んでいたら、発作ともいえる急激な痛みは治まってきた。
これならなんとか歩けるし、我慢できる。
まだ胸に違和感があるが、近くの食材屋で果物を買い、マテリアの元へ急いだ。