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第2節 その3 光介の仕事探し

 僕がこの世界に来てから4日ほどがたっていた。


しばらくたって気付いたが、ここは年中暗い。


例の大きな月が太陽を邪魔して、晴れでもこのくらい(曇りぐらい?)らしい。


あの月は《偽りの月》と呼ばれているらしい。


マテリアは当たり前のようにそれがあるのだから、あれがなんであるか、特に不思議に思ったことは無いらしい。


あの月に何か不自然さを感じつつも、そのうちそれに慣れてきていた。




ここは城塞都市の西方の門のそばにある、マテリアの住居。


彼女の家は、姉のテレサを埋葬している間にチンピラのような魔族3人組みに荒らされていた。


もともと何もない小さな部屋のため、生活できる程度になら、マテリアと二人でそう時間もかからず片付いた。


基本的に銅がふんだんに使われた金属製の住居で構成されるこの街は、備え付けのベッドやテーブルも銅で作られている。


街自体が銅山のように銅にあふれたこの街では、銅を盗む者はいない。


破られたり、汚されたシーツやカバーなどを洗濯したり、縫製するぐらいで済んでいた。


僕らは1日目にドアをまず修理した後、寝床をつくり、2日目には、ひととおり、壊された家具や、汚された壁や床を綺麗にし、3日目にその他の残りを片付けた後は、ゆっくり休める家に変わっていた。


その間の食べ物は、先日買い込んだもので十分だった。




 その日の片づけが終わり、午後のお茶のあと、マテリアと今後の暮らしについて相談した。


教卓を売ったお金で暮らしているが、当然この世界でも食料はただではなく、当然何かしら働かなければいけないのだが、あいにく、マテリアはそのあたりについてはなんの知識もなく、姉のテレサにたよりっきりだったらしい。


とはいえ家事を中心に働きものだったマテリアは今もそそくさとお茶の片付けをしながら、話を聞いている。




「まずは、あの親切なお婆さんに相談してみるのがいいと思うんだ。


このあいだのチンピラたちを追い払うことができたことがまずとっかかりだったけど、この家の片付けをしている時に確信したんだ。


どうもこの世界のものは、僕のいた世界より《モノが軽い》ように思える。


だから、もしかしたら、何か力仕事みたいなことができるんじゃないかと思うんだ。


大人の魔族一人分ぐらいの力はありそうだし。」


僕は今日までに起こったとことを冷静に自分なりに分析した結果としてたてた仮説をマテリアに話した。




「うん。


そうだね。


普通人間は5人がかりで魔族1人に相手にできるかできないか?というところだよ?子供だったらその倍以上は必要だよ。


私も魔族だけど大人の方が倍以上の力がある。


鍛えている人なら、そのまた更に倍は力があるよ。」


やはりマテリアもそのことは不思議に思ったようで。


僕の力や俊敏性については認めている。




「じゃあ今日で片付けもひと段落したし、今から役場に行ってくるよ。」


「うん。


わかった。


私にもできることがあったら言ってね。


あと2人で働く方が私はいいと思う。」


寂しそうにするマテリア。


きっと姉が働いている時に、ひとり寂しくしていたのだろう。




「そうだね。


一緒に働けるといいね。


ゴホッゴホッ」


こんな小さな子を働かすのはかわいそうで、僕はできればマテリアには留守番をしていて欲しかったが、あまり今は無理を言わないでいた。


また、力があるといっても、病気が治ったわけではない。


この現実離れした生活の中で、ふと自分は自分なんだ、これは夢ではないんだ、と咳が僕に自分にそれを思いださせる。


咳をしているとマテリアが心配そうにするので、出来る限り気をつけているが、どうしようもない。




「お婆さんはマテリアのことは知っているから、そのことは話してみるよ。


それよりもまたあいつらが来たらやっかいだから、家の鍵をしっかり締めて、留守番していて欲しいんだ。


今日は僕だけで行ってくるから。」


僕は心配そうにするマテリアに笑いかけながら家を出た。


マテリアのためなら頑張れる気がする。







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