第1節 その3 壊された平穏
この家のドアはそれほど頑丈にはできていないので、荒っぽいノックをされると、そのままドアが壊れそうに感じる。
誰だろう?ビクッとしながらコースケは、音に気付いて目を覚ました。
この家に誰か来るということに漠然とした不安を感じた。
自分で確認する勇気がでない。
僕の家ではないし・・・・・・。
そんな言い訳をしながら、となりのベッドでムニャムニャしているマテリアに、声をかける。
「誰か来たみたい。
ノックの音がしたんだ。」
と今起きたことをそのまま話した。
マテリアは何も不安など無いようなお気楽な感じで、
「うん、分かった」とコースケに返事をすると、寝ぼけ眼で玄関へ向かって、
「はぁーい」と返事をしながら、歩いて行った。
もちろんこんな小さい家、数歩で玄関までつき、ノックからそれほどの時間もかからずマテリアはドアを開けた。
なんとなく不安な状態だったコースケは、ちょっと身構えていた。
なぜなら、(僕らに用事がある人なんているか?)そう思うと、ドアを開けるのを止めようとも思ったのだが、当たり前のようにマテリアが出ていくことから何か特別なことは無いような気もしてきて、結局そのまま流れにまかせた。
ドアを開けると、3人組みの中年の魔族らしき人たちが、立っていた。
(魔族の見た目は、ほぼ人と変わらないのだが、ひとまわり体が大きく、もっとも特徴的な違いは、髪の毛だった。
彼ら魔族の髪の毛は、マテリアもそうだが、金属のような質感がある。
色は人それぞれだが、黒っぽい髪が多いようだ。)
彼らはニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながらマテリアを見ている。
いやな予感かやはり正しかったと確信に変わったが、あんな大人たち相手、しかも自分なんか何もできない。
という思いが、コースケをその場から動かせなくしていた。