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第1節 その1 城塞都市

城塞都市クプラム。


大陸の南東部の半島にあるこの都市は、南と東を海に面し、北と西を城壁に守られた自然の要塞である。


人口は約5万。


辺境の小国アーゲンタムの都である。


警察機構と衛兵を兼ねた骸骨兵が、24時間365日街中をウロウロしているため、治安は良い。


かつては、商業都市として栄えていたが、現在は、すっかり外部からの往来は途絶え、資源が乏しい貧しい都市である。


とはいえ、治安の良さと多くのしっかりとした建築物が、ただ同然の住居として利用できるため、現在もある程度の人口は維持している。


街の領主は魔族であるが、人口の半数以上は人間である。


大陸全土を見渡しても魔族は人間の3分の1程度しかおらず、あまり多くはないということもある。


この国では魔族が主要都市の領主として、地域を治めており、少数派とはいえ魔族が支配権を持っている。


魔族自体は凶暴な種族ではなく、特に恐怖政治などとは無縁で、魔族と人間が争うようなことは建国以来起きていない。




このクプラムについては、特に骸骨兵たちのたゆまぬ努力により、表立ってお互いを排除しようとするようなことは起きていない。


しかし、その生活の厳しさと生来の運動能力(筋力・敏捷性など)の差から、魔族の中には、人間を襲ったり、人間の方もどこか差別的な対応をすることが時折みられる。


就職や就学、婚姻等である。






コースケとマテリア。


彼らが、この街に入るためには通行証が必要だった。


それがないと門にいる骸骨の衛兵が城塞都市の中へは通してはくれない。


試しに何食わぬ顔で門をくぐろうとした時、2本の槍が交わるように、二人の行く手を遮った。


当然入れない。


通行証を持っていると骸骨兵は反応しない。


通行証の中に何か通信用の石でも入っているのだろう。




困った2人は、姉の通行証が彼女の本と一緒に近くに埋めてあったのを思い出し、まずはその通行証を持ってマテリアが街に入った。


マテリアは以前、パンを交換してくれた老婆のところへ行き、通行証を買い戻したい旨を相談した。


どれくらいのパンが必要なのかと思っていたが、元のパンと同じだけの食糧もしくはお金を用意すれば返してくれるという。


単に通行証の価値が低いのだ。


理由はこの町へ出入りする価値が低いということである。


お金やパンを手に入れるためにはどうしたらいいかマテリアが老婆へ相談すると、お金は働いて給金をもらうか、何か交換できるものがあれば手に入れられる、この町にはそんな場所がいくつかあり、マテリアのような子供には、自分を頼るのが一番安全だと言う。


優しい祖母のように接してくれるこの老婆を信用して、マテリアはこれまで起きたことを簡単に説明した。


老婆は驚いたような顔を最初はしていたが、最後はふんふんと黙って話をきいていた。


そして、鉄の教卓を何某という店に売ってお金にし、一度ここにきて、通行証を引き取りなさい。


次に、残ったお金で何某という店で食糧を買い、家が落ち着いたら、再度仕事先を教えるからまた来なさいと、優しく教えてくれた。




マテリアは急いで、門の外へ向かった。


コースケになんとかなりそうだという話を早くしたくてたまらなかった。


自分の手柄だ。


コースケは喜んでくれるだろう。



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