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21 辺境の町・新しい仲間 8

 フルメタルの甲冑の男が冒険者達の前に立ち、剣で盾を叩いて大きな金属音を響かせた。

 賑やかだった冒険者達の話し声がまるで潮が引くように消えていき、その場にいた皆が甲冑の男に注意を向けた。

 甲冑の男は満足そうに冒険者たちを見渡すと大きな声で演説を始めた。

 

「みんな、よく来てくれた。俺は今回の作戦の主催者、グリフだ」


 背も大きく肩も広い。ゴールデン級らしい貫禄である。

 両刃の幅広の長剣――クレイモアを背中に差している。甲冑も金がかかっていそうな立派なものであった。


「今回の作戦を簡単に説明する。北の地下迷宮攻略戦から逃げ延びたと思われる魔族の集団がここから一〇キロほど離れた森に逃げ込んでいるらしい。俺たちはそれを狩りに行く。詳細な作戦は現地で話す」


 狩りに行くーー まさに、落ち武者狩りである。魔王を討った以上、残党を狩ること自体に戦略的には何の意味も持たない、純粋に金儲けのための作戦である。


「捕まえたゴブリンやオークはそのまま西の鉱山へ輸送して売り払って金に換える。殺した魔族は魔核を取り出しやはり鉱山で金に換える。各自の報酬だが、鉱山に売った魔族と魔石の総額から経費を引いて、残りをゴールド級3,シルバー級2、その他1の割合で分配する」


 ゴールド級はブロンズ・アイアン級の三倍程度を取るようにみえるが、実際は儲けの半分をゴールド級が持っていく計算になる。しかも、その半分をゴールド級は三人で分けるのに対して、ブロンズ・アイアン級は総勢80人はくだらない。残りのわずか17%を80人で割ったら、取り分は全体の0.2%ほど。

 しかし、不満の声を上げる者がいないということは、これがこの世界の相場なであるこということを示していた。


「……以上だ、なにか質問はあるか?」


 グリフは、一通りの説明を終えると男たちを見回した。

 一人の男が声を上げた。


「魔族はどの程度いるんだ?」


 魔族の数は最も気になるところである。この遠征参加者にとっては自分の取り分に直結する。

 ユージとしても是非訊きたいと思っていた。もっとも、ユージの意図は金ではなく仲間をどれくらい獲得できるかという点にあるのだが。

 グリフは質問した男にうなずく。


「詳しくはわからん。おそらくゴブリンとオークが五〇〇頭は超えないだろう。それにトロールもいる可能性もある」

「上位魔人はいないのか?」


 別の冒険者の男が声を上げた。


「それについては詳しい情報はない。まあ、オークの集団をまとめる能力を持つ程度のヤツはいるだろう。もっとも俺たちゴールド級がいるんだ。何も怖れることはない」


 肝心の上位魔族についての情報は何も無しか……。

 ユージは落胆した。

 隣に控えるマルチナの顔色を探るが、無表情のままであった。

 上位魔人はいないのか? との問に、”はーい、ここにいまーす!”とか言って手を上げかねないから内心心配していたが、そこまでふざけるつもりはないようだった。


 本来、相手の情詳しい情報なしで討伐戦は無謀である。

 しかし、魔王を討ったことにより魔族全体が弱体化しているのだろうが、行き当たりばったりでも問題ないのかもしれない。



 質問が途絶えたところでグリフは説明を打ち切り、皆に出発を命じた。


 ゴールド級とシルバー級の冒険者は馬に乗り。ユージを含めた馬を持たないブロンズ級以下は徒歩で行軍であった。

 まだ体調が完全でないマルチナには厳しそうだが、馬を持たない身では如何ともし難かった。

 グリフを先頭に隊列は南門を抜けると程なく西へと進路を変え、魔族が立てこもる森を目指した。



 ユージはマグナスとセルリンに続いて森への道を進んだ。

 はじめての遠征参加にいろいろ不安が募る。


「余り情報がないようだけど、今回の遠征に本当に問題はないの?」

「オークを狩って鉱山に売りに行く。何度もやっているおなじみの仕事さ」

「売り先もいつも鉱山なの?」

「ああ、森を過ぎて二山越えた向こうにある。昔は人間の罪人を使っていたが、今じゃオークが中心だな」

「なぜ、オークを?」

「鉱石の採掘は重労働だ。人間ではこき使うにも限度がある。それより隷属魔導で服従状態の魔族をつかったほうが効率はいい。人間と違って衰弱死しても問題ないし、代わりはいくらでも供給されるからな」

「なるほど、なかなか賢いね。その領主は」


ユージはマグナスの説明に頷いた


「鉱山自体は西方のハビツバーグ伯が所有している飛び地領なんだ。ただ実際は分家だかなんだかのヤツが仕切っている。いけ好かない野郎らしい」


隣で聞いていたセルリンがツッコミを入れる。


「貴族にいいヤツなんているか?」

「たしかに」


マグナスは大笑いした。




 三時間ほどの行軍の末、眼前に深い森が広がった。

 正面には道が森の奥へと続いているが、暗く遠くまでは見通せない。

 森全体は不気味なほど静まりかえっている。立ち入るのを躊躇する気持ちの悪さを感じた。


 魔族狩りの一行は森のすこし手前でグリフの号令により行軍を停止した。


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