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召喚 

よろしくおねがいします。

 深い眠りからまだ醒めきってないのであろうか。遠くで誰かの声がする。


「よくきた、魔王を継ぐ者。ユージ、新たな魔王よ」


 継ぐ、魔王……。映画かアニメか?

 というか自分、裕次郎なんですけど。ユージって、人違いしてない? 


 冷たい風が頬を撫でた。肌寒さを感じ、意識も鮮明になりつつある。

 目の前の影を凝視すると、しわがれた声が響いた。


「我は間もなく死ぬ。今日からおまえは魔人ユージとして、魔王を継ぐのだ。」


「人の名前まで勝手に変えるなよ。その上、魔王と継げとか、求めすぎだろ」

 

「求めすぎ? おまえのやり方で魔族を統べ、この世に魔族の国を司り、魔族を繁栄に導く。求めることは唯それだけ、簡単なことだ」。


 いきなり上から目線。

 人になにかして欲しいなら、頭を下げて頼むくらいの誠意を見せろ。

 いやいや、こういう押し売りまがいの(やから)にはきっぱりと言っておく必要がある。


「断る!」

「断るのか? まあ、それもよい。それならおまえはこの世界でこのまま生きてゆけ。ただし、魔族と人間は決して相容れぬ。人間が魔族を見つければ殺すか奴隷として使い潰す。また魔族の世界は弱肉強食」

「弱肉強食?」

「文字通りの意味でな。特に魔族の中でも魔獣は貪欲だからな、エサになりたくなければ自分より強い魔獣には出会わぬよう気をつけることだ」


 元の世界でボッチの半引き籠もりとはいえ、人間を避け、同族の魔族も避け、ネットもない異世界で一人で暮らしていく。そんなの無理ゲー過ぎる。

 ん、ネット!? もしかして……

 ユージはポケットを探る。

 スマフォはなかった。


「じゃあ、逆に訊くが、あんたの後を継ぐことで俺は何が得られる?」

「自らの王国に領民たち。それをもって贅を尽くすもよし、女を囲い性的快楽に()るのもよかろう」


 ハーレム!? おおっ、ちょっとやる気になってきた。


「で、その俺が継ぐ王国って言うのはどれくらいの規模なんだ?」

「ゼロだ」

「はっ?」

「王国は、今まさに滅び落ちようとしている。だからお前が再建するのだ」


 えー、なにその成功報酬的な感じ……。

 そんなハ-レムの夢だけで異世界を生き抜けるわけもない。夢だけなら日本と変わらない。

 とはいえ、ハーレムは捨てがたい。同じ夢でも日本じゃ実現できない。異世界ならではのご褒美だ。


「で、国を再建するためにどんな力がもらえるんだ? 例えば、巨大なパワーがもらえるとか攻撃魔法がMAXになるとか? それか一見役に立たなそうな能力でも、実はちゃーんと使えます的なヤツがあるんだろ?」

「攻撃魔法がMAX……? 美味いのか?」

「んんん。それなら、今の時代は魔法技術が劣化していて昔の知識でもって最強的な。そっちか?」

「……しつこいな。おまえはすでにこの世界に“いち魔人”として転移したのだ。その魔人としての最低限の能力はある。もしおまえが魔法を使いたければおまえが励み身につければよかろう」


 最低限の能力……? ふざけるな!

 最低限って、要するに一番下ってことじゃねーか。何がハーレムだ! 危うく騙されるところだった。

 能力最下位から王国再建なんて、どう転んでもあり得ん無理ゲー。これがマジなら公式掲示板は大炎上間違いない。 

 っーか、こんなクソゲーもう返品してやる。


「元の世界に戻してくれ! 召喚したんなら戻すこともできるだろ!」

「……もう我にそれだけの力は残っておらん」


 マジかよ……。

 ユージは膝から崩れ落ちた。



 そのときユージの背後で地響きが起こった。振動で天井から小石が落ちて頭に当たる。


「時間はさほど無いようだな。人間どもがすぐそこまで来ている。最後の扉が破られるのも遠くはないだろう」


 黒い人影は自らの左手の薬指から黒い指輪を外し、差し出すとユージに握らせた。


「これが魔王の暗黒のリングだ。これをおまえの左手の薬指にはめれば、魔王の後継の盟約が結ばれる」


 そう言いながら中指にはめていた赤く光る宝石の指輪を空いた左手の薬指にはめ替えた。


「何勝手に話を進めてんだ!? まだ魔王を継ぐなんて一言も言ってないぞ」


「そのリングはあまたの魔人との主従の誓いためのリングでもある。魔獣は群れを作り自然と魔王に従うが、魔人は孤高の存在。主従の絆を結ぶためには特別な盟約が必要だ」


「特別な盟約?」


「魔人は魔王にすべてを捧げ、魔王は魔人の願いを叶える――永遠の誓いの盟約だ。そのリングこそが盟約の鍵となる。一人で事を成せとは言わん。仲間とともに国を起こせばよいのだ」


「うーん。でも、仲間になる魔人ってどこにいる? どこをどう探せばいいのさ。どっちにしても無理ゲーだろ」


 少しの沈黙の後、魔王がつぶやく。


「案ずるな。供を付ける。ジーヴル、これへ」


 黒い人影が呼びかけると、影が二つに別れ、老いた魔人の男が現れた。

 柔らかい物腰でユージの前に進み出ると、丁寧にお辞儀をした。



プロローグを大幅修正しました。


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