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「スターラスター」と冬の夕暮れ

作者: まつだ

 冬の夕暮れ時。うすぐらい彼の家でスターラスターを繰り返し遊んだ。私もテレビにうつる宇宙と彼のプレイをじっと見つめていた。不思議だがなにか話をしながらプレイした記憶がない。私は寝転がり、彼は正座でただただプレイし続けた。

 スターラスターといえば、レーダーのわかりにくさが話題になるが、私たち2人は説明書の内容と体験からその仕組みを理解していた。まず右に旋回、敵マークを正面に持ってくると前進して視界に入れて撃つ。エヴァンゲリオンのシミュレーション訓練のようにそれを繰り返していた。このレーダーから視界に敵を捕らえる発見の遊びが面白くて仕方がなく、繰り返し遊び続けていた。

 しかし私の理解はこの程度で彼ほど深くはなかった。

 ミスで自機爆発のアニメーション、そしてゲームオーバー画面となり、そこにプレイランキングが表示される。I君はその結果を説明書の最終ページの空欄に書き留めていた。説明書には元からいくつかは書かれているのだが、ほとんどが「?」で、それをただひたすら埋めていたのだ。英語表記を翻訳までしていた。

 横で見ていると爆発して、結果を確認し、ときおり説明書に書きこんでいるのを繰り返しているだけだった。

 気になるので説明書を見た。

 その時の衝撃はすごかった。

 偶然に埋められるものではない。プレイを繰り返し、表示される結果から空欄のスコア条件を推察し、自爆しなければ達成できない。またプレイ中にはこのスコアは表示されないためプレイ内容からスコアを推察するしかなかった。いまでこそスーパープレイに触れるのは動画サイトを使えば簡単なのだが、当時は仲間内でうまいといわれるプレイがせいぜいだった時代だ。

 I君はその領域で戦っていたのだ。なにも情報がないのに1人で戦っていたのだ。

 そこを見ているとI君が口を開いた。

「下から説明すると……」

 ランキングの名称について語りだした。今に思えば聞いてほしかったのだろう。宇宙で孤独な戦いを続けるのはむつかしい。

 

 しばらくしてからだったか。I君からカセットを借りた。たぶん彼は宇宙を救い、説明書も埋め尽くしたのだろう。

 私もしばらくプレイをし続けたがどうにもゲームオーバーのアニメーションがつらく、アドベンチャーモードを選ぶことはなくなっていった。

 結局、宇宙は救えず、数年後にX68000版でも救えなかった。今はPSPでときどき戦っているがまだ宇宙は救えていない。

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