終わりの始まり
「ん…」
誰かの声が聴こえる。
薄らと瞼を開いた先に見えたのは、自分を心配そうに見下ろす浩介の顔だった。
「良かった…やっと起きてくれた。」
浩介は心底ほっとした様に息を吐き出すと、話を続けた。
「他の皆も未だ起きてないんだ。」
「そうか…。てか、ここは何処だ?」
「いや、俺にもわからない。起きたらここに転がされてたからな。」
困った様に八の字に眉を下げながら浩介が述べる。
悠斗はまだ重たい体をゆっくりと起き上がらせ、周囲を見渡した。周りには知った顔の皆が眠っている。今のところ起きる様子は無い。一応ひよりの事も確認したが、眠っているだけで外傷は無いようだ。
「誰かの家って訳でも無さそうだな。」
浩介が苦笑する。
悠斗達の周りを囲むのは無機質な灰色の壁で、頑丈そうなドアが5つ付いている。
そしてこの部屋にあるのは真ん中に置かれたテーブルと、何故かその上に乗るタブレット端末。後は所々革の剥がれた大きなソファーだけだ。
そうこうしている内に、ぽつりぽつりと皆が起き出した。
しかし、ここが何処なのか、何故ここに連れて来られたのか。誰一人としてそれを知っている者は居なかった。
全員を重たい沈黙が包む。
「ねえ、お兄ちゃん…」
ひよりが不安げな表情で見上げてくるが、悠斗は黙って背中を摩る事しかしない。“大丈夫だ”などと安易に言う事はできなかった。
「…本当に先生たちは何も知らないんすね?」
榊原が顧問の2人を探る様な目付きで見詰める。
「ええ、幾ら私達でもこんなに悪質な事なんてするわけないじゃない…」
「俺らも何が何だかさっぱりだよ…」
富田と坂ノ下もほとほと困り果て、頭を抱えている様だった。
その時、某SNSの通知音に良く似た音が室内に響き渡った。皆が一斉に同じ方向を見る。
それはテーブルの上の端末だった。
だが、長時間ここへ閉じ込められている疲労からなのか、誰もその場から動こうとする者は居なかった。
悠斗と浩介だけが立ち上がり、端末へと静かに近付く。
そして画面に映っている文字に、二人は思わず顔を見合わせた。
「人狼ゲーム?」
更新が遅くなってしまって申し訳ありませんでした!
今日からまたバンバン更新させていただきます(´・ω・`)