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青春とメイド服と特攻服 後編

そんなこんなで学園祭の日がやってきた。ホール狭しに全生徒と観客でびっしり埋まっている。最早メイド喫茶うんぬんよりもこの決闘が学校祭一番の目玉になってすらいた。

「レディース!エンードジェントルメーン!!」

学園長の挨拶が終わり、いよいよ決闘が開始されようとしている。司会を引き受けたネイトがノリノリの実況で場を盛り上げる。ネイトの隣には生徒会長も兼ねているアルナが座っている。

「それでは本日のメインイベントと言っても過言ではない、次世代を担う戦煌刀士の卵達による決闘の始まりだ!早速入場してもらおうかねぇ。まずは星ノ河桜花、愛上扇月花コンビ!」

「へっへーん!星ノ河桜花…15歳!好きな食べ物はスイーツ全ッ般!みんなー集まってくれてどうもありがとうー!」

「愛上扇月花です…よろしくお願いします。あ、どうも」

ホールに堂々と現れ名乗りを上げる桜花。もともと目立つ事は大好きだったし、悪のチンピラを大勢の目の前で倒すといったシチュエーションを想像すると胸が熱くなる。桜花は案外ノリノリだった。その後ろでは月花緊張した様子でへこへこと頭を下げている。

「あー、あれ月花ちゃんじゃない?」

「ペンギンみたいな歩き方も可愛いー。頑張れ月花ちゃん!」

珍しく表舞台に顔を出す月花に対して場外から黄色い歓声が上がっている。ファンの下級生いわく月花が見せる腰の低さがキュートなのだそうだ。

「続いてシラリィ、ロウリィコンビ!」

「おうおう、ここか…?祭りの場所はァ!」

格闘技のヒール役のように悪ぶってギャラリーにガンを飛ばすロウリィとシラリィ。

「四人とも集まったな、それじゃあ派手におっ始めて貰いましょうかねぇ!決闘(デュエル)!」

戦いを告げるゴングが、ホールいっぱいに鳴り響く。

「月花…この戦い、負けられないよ!メイド喫茶を勝ち取る為にもね!」

「はぁ…」

月花はため息を付く。しかし、自分を応援してくれる下級生にカッコ悪い姿を見せて軽蔑されたくはないし、特攻服を着るくらいならメイド服の方がましだ。本気でやるしかなかった。

「そいじゃ派手に暴れるとするか、シラリィ!」

「あいあい、ロウやんのサポートはお任せっ」

決闘に本物の戦煌刀を使うわけにもいかず互いに木刀を武器として使用する。この木刀も式神と同質の素材、ディロウルの木により造られており、ディロウルで作られた木刀は非常に弾力性が高いのが特徴。ちょっとやそっとの事では折れたりしない。また普段着ている学生服も戦煌装束の一種であるが、現役の刀士が着ているものの半分程の効力しか発揮出来ない。

「こんな棒切れ、アタイにゃ必要ねぇ!」

ロウリィは木刀を床に叩き捨て、桜花へと猛進する。

驚きを隠せない観客達。木刀とはいえ武装した桜花に素手で立ち向かうというのか…違う。彼女のは右手に何かが握られていた…式神用の球体。ボタンを押すと、アルマジロの姿に形を変え、ロウリィの右手に装着された。

「…式神!?」

式神を装備して放たれる強烈なボディブローを木刀で受け止めるとミシミシと音を立て、折れた。

「うっそ!折れちゃった。ちょっとやそっとじゃ折れない、が売り文句のディロウル製の木刀が…」

「武装式神…センザンコウ・ガントレット。私にゃ木刀なんかよりこいつが一番馴染む」

武装式神、それは式神の姿から武器へと形を変える戦煌刀士のサブウェポン。武装式神は完全に戦闘用に造られている為、本来であれば煌鋼で造られた球体から起動されるのだが、ロウリィが持っているのは木製の訓練用、威力もだいぶ抑えられている。

「なにそれ、反則じゃん!」

「反則…?そいつァ違う。この決闘、戦煌刀を使うのは駄目ってだけで、式神を使っちゃいけないってルールはなかったぜ?な!ネイトセンセ?」

「あ、ああ。観客も盛り上がっていることだし…面白いからそれでもいいぞ!」

ネイトは軽い調子で式神の使用を認める。ロウリィが式神を使うとは予想していなかったが、場は盛り上がっているようだし結果オーライ。格闘技の試合でもヒール側が思いもよらない事をしでかすのはよくあることだ。

「ふん、ちょろいぜ…センセ」

ロウリィはネイトの扱いをよく分かっていた。彼女は面白い事を第一に優先する。その場で一番権力を持った者を丸め混み味方につける…これも社会をうまく渡っていく為の術の一つ。

「刀より武装式神の方が馴染むって…これから戦煌刀士になる奴が何を言っているんだ。それになんだ、センザンコウ・ガントレットって。あれは煌犰甲手(きらきゅうこうて)だろう」

アルナも実況席で何気にノリ良くツッコミを入れている。

「あぁーもう頭きた。私だって少しばかり体術には自信があるもんね!!」

負けじと桜花はロウリィに密着しその足を払う。跪き片膝立ち状態になった彼女の右足を踏み台にして、膝上に乗りかかり、顔面に蹴りを放つ。どこぞの格闘家によって開発され、閃光魔術や閃光妖術と呼ばれている技。

「おおっ、あれはシャイニング・ウィザード!こんな所でプロレス技が見られるなんてな!あの嬢ちゃん、やるじゃねえか!」

観客席からだらしない体型をした中年男が声を荒げる。女の子から歓声を浴びたい桜花の意思とは裏腹に中年男性達の野太い声援ばかりが熱く響く。

蹴りにより吹っ飛ばされたロウリィは頬を抑えている。

「っ…てえ!やりやがったな星ノ河!」

「ここはウチに任せて、ロウやん!ちょい離れてて」

シラリィの右手にも式神用の球体が握られていた。ボタンを押すと、今度はタツノオトシゴの姿に形を変え、腹部に設置されたトリガーを引くと光弾が桜花目掛けて発射される。煌龍砲(きらりゅうほう)、遠距離用の武装式神。シラリィが持っているのは訓練用のものだが、それでも込める煌力によっては充分すぎる威力を発揮する。

「ととっ!今度は飛び道具!?なんでもアリじゃんアンタら!」

「フフ、格闘技に自信あってもこの距離じゃ意味ないでしょ?」

「それも算段済みか、このひきょー者!」

「お誉めの言葉どうも。卑怯もラッキョウも大好物なのよ、私は!」

「なるほど…な、近距離での戦闘を得意とするロウリィに遠距離戦型のシラリィ…コンビで力を発揮するというのはこういう事か。刀を使用しないという刀士の枠に捕らわれない戦闘スタイル…あいつららしいといえばらしい…か」

桜花を狙って光弾を乱射するシラリィだったが、ゾクッと背後に気配を感じ左手に持っていた木刀で背後から迫る刃を受け止める。

気配の主は月花、夢中で煌龍砲を撃ち続けるシラリィの背後に忍び寄っていた。

「愛上扇!?アンタ影が薄すぎんのよ!このっ!」

桜花はロウリィと月花はシラリィと、戦いは二組に分段される。

月花を近付かせまいとシラリィは煌龍砲を乱射する。距離を詰めたいが…これでは近付く事が出来ない。こっちにも何か飛び道具でもあれば…

月花は木刀をくの字に折り曲げるとシラリィ目掛け投擲する。

勢いよく回転し、シラリィ目掛けて飛んでいくそれは、木刀というよりもブーメラン。

「そんなウスノロな攻撃、当たらないっての!」

シラリィはそれをいとも簡単に避ける。

「んでもって戻ってくるんでしょ?アンタの浅知恵なんてお見通しよ!」

と後ろを向いて再びシラリィへと向かってくるブーメランを煌龍砲で撃ち落とした。

「バーカ、わざわざ大事な武器をぶん投げちゃって。アタイらみたいに式神でも用意してりゃ…ッ!?」

シラリィが後ろを向いたスキに月花は彼女と距離を詰める。その左手には何故か木刀が握られていた。

「スキさえ作れればそれで良かったんで…貴女の相手はこれで充分」

「アンタ…なんで木刀持ってんの!?まさか…ッ!それ、ロウリィの!」

シラリィの銃撃をかわしている時に、最初にロウリィが捨てた木刀を月花は回収し、隠し持っていた。

「ちょ、タンマ!こうさ…!」

シラリィは何か言おうとしていたが、それより先に月花のひと振りが頭部に炸裂し、そのまま彼女はよろけて気を失った。



「シラリィ!…マジかよ…アタイのシラリィがあんなネクラ女にやられたってのかァ!?」

シラリィの敗北に動揺するも、ロウリィが気を休める事はない。

「ったくそんないかつい武器振り回して…こっちは素手だってのに」

桜花は持ち前のスピードでロウリィの攻撃をかわしてゆく。一撃一撃は大味だが隙がない。力比べでは圧倒的に不利。一撃食らえばスタミナがもっていかれ動きも鈍る。そうなればロウリィにペースを握られる事になる。

対するロウリィも集中力を研ぎ澄まし桜花狙って拳を振り回すがいっこうに当たらない。一つの判断ミスが勝敗を決めかねないギリギリの攻防を繰り広げる二人。

「クソ!捉えられねぇ、星ノ河やっぱオメェ強ぇよ!悔しいが武装式神使ってもまだ実力差を感じるぜ」

「そりゃどうも…」

「なぁら、こんなのはどうよ!?」

ロウリィの口元が歪んだ。右手の式神武装を解除すると、分離したアルマジロが今度は桜花の顔に張り付いた。

「ちょっ!前が見えな…!」

両手で式神を取ろうとガラ空きになった桜花の脚に蹴りを入れる。

「あいたっ…!」

桜花は武装式神の攻撃力に気をとられ過ぎていた。ロウリィはあえてそれを手離す事で、桜花の隙をつく。式神を使わなくても腕っぷしには自信がある。厄介な足を、スピードさえ潰せば後は得意の力比べに持ち込むまでだ。

「桜花!?」

桜花のピンチに気付いた月花は再び木刀をくの字に折り曲げ投擲する。風を切り、桜花の元へと飛んでいくブーメランは頭に張り付くアルマジロの式神を弾き飛ばした。そのままそれを桜花はキャッチし、追撃に入ろうと近づいていたロウリィ目掛けて全力を込めて突きを放つ。予想外の反撃にロウリィは反応が間に合わず、もろに腹部に受けてしまう。

「グ…ガッ!!」

「月花!ナイスアシスト!アンタらがタッグで100%の力を発揮してもね…私らは120%の力が出せるんだよ!」

「ッ…!アタイが最初に捨てた木刀で形勢逆転するたぁな。ホントに食えねぇ奴らだ…ぜ…」

ロウリィは悔しそうにその場に膝をつく。しかし、彼女はどこか満足げな表情を浮かべているようにも見えた。

「決着…!勝者!星ノ河、愛上扇コンビ!」

観客の歓声が最高潮を迎える、全く興奮が覚めやむ様子はない。

汗水垂らし戦いに没頭した二人を見て、アルナは震える。自分の中の熱い部分が煮えたぎって仕方ない。

「あいつら、楽しそうだな…!これが青春という奴か…うう、混ざりたい…!」

「それ採用。アルナ、お前混ざって来ていいぞ?その方がもっとギャラリーが沸き立つ。既にこの戦いは決闘なんてもんじゃない…なんでもありの見世物ショーだ」

「…!感謝します、先生」

実況席からアルナの姿が瞬間移動したように消える。

「…ったく。戦闘狂め…これから煌姫の従者になろうとしている奴があんな野蛮人じゃあ先が思いやられる…まあ、面白いからよしとするか」

乱戦中、ホール中央に隕石が落ちたかのような衝撃が轟く。そこにはアカデミア最強の戦士、アルナ・エイティスが堂々と仁王立ちを決め、圧倒的存在感を放っていた。

「アルナまで…あーあ、どいつもこいつもバカばっかりね戦煌刀士って。やっぱり私には…理解できないわ」

シーラは観客席で後輩達に囲まれ、かったるそうに眺めている。

「まだ戦いは終わりじゃないぞ…!これからエキシビションマッチの始まりだ!ロウリィ、シラリィコンビを破った二人の前に現れたのは、アカデミア最強の戦士…アルナ・エイティス!」

「はぁ…!?そんなの聞いてない!!なんでアンタが出てくんのさ、アルナ!」

「決まっているだろ!お前らと戯れ…青春したい。それに…私だってメイド服より特攻服が着たいのだッ!先生の許可は貰っている。覚悟はいいな、桜花、月花!」

その後、二人はアルナ相手に善戦するが、戦いが長引くと他のプログラムにも影響が出るとネイトは他の教師から指摘され、時間切れという形で結果は引き分けに終わった。ロウリィ、シラリィペアの式神使用にアルナの乱入と特攻服サイドがあまりにやりたい放題した為、結局クラスの出し物がメイド喫茶になったのだけは幸いだった。

学校祭の後、アルナは念願の特攻服を着せてもらえたようで満足そうな表情を浮かべていた。アルナも普段の優等生ぶりにうっぷんが溜まていたようで、解放的になりたかったらしい。



「と、まあこんな感じかな?私達は決闘でクタクタだったから実際メイド喫茶には殆ど参加出来なかったんだけどね。この写真も…学校祭が終わった後の打ち上げで撮ったものだし」

「へぇ。凄くいろいろな事があるんだね学校生活って。なんだか楽しそう…私も二人と一緒に通ってみたかったな」

双花は自分もそんな風に学校へ通う未来もあったのかもしれないと学生服姿の自分を妄想した。

羨ましそうに話を聞いている双花を見ると考えてしまう。本来なら自分達と旅などさせず年相応の学校生活をさせてあげた方がいいのではないか…と。

「んー。もし双花が今からでも通いたいってんならゲイゼンに駆け寄ってみるよ…?アカデミアには同年代の娘が沢山いるだろうし、ホントは私達と一緒にいるよりもその方がいいのかもしれない…」

もしアカデミアに通いたいと言えばそれもいいのかなと思った。本心では双花と離れたくはないが、この旅だってトントン拍子で決まったものだ。彼女にはもっと自分で選ぶ選択肢を与えて広い世界を経験して欲しかった。

「それは絶対いや!今の私は学校より、二人と過ごす時間がいいの…だから、そんな事言っちゃ嫌だよ」

双花は二人の申し出に断固として反対した。それに内心ホッとする二人。

「そっか、ならまた今度思い出話してあげるね。それと…双花に渡したいものがあるんだけど…」

桜花はポーチからキューブを取り出した。収納キューブ。大きさは式神起動前の球体と変わらないが、照準を合わせてボタンを押すと、中に大きな荷物をいくらでも詰め込む事が出来るという特殊な道具だ。ただし、生き物に関しては使用できない。

キューブ中央のボタンを押すと、中から木箱が現れる。木箱を開けると、そこには戦煌刀があった。数十年前、今は亡き伝説の名工によって造られたとされる、世にも珍しい、全体が白く光輝く神秘的な刀…

「これ…刀!?もしかして…」

「そう、これが双花の戦煌刀。最高レベルの煌人形に勝てたら渡してもいいかなぁって桜花と一緒に決めてたの。それをたったの十日で倒しちゃうんだもん。私達だって勝つのに結構かかったんだよ?」

「実はこれ、アルナのお下がりなんだけどね…私の虎王丸みたいに絶対折れる事がないような、頑丈なやつを探してたんだ」

「ねぇ、私…自分の戦煌刀の名前…考えてたんだけど…」

「勿論。前の持ち主はアルナだったけど、新しい持ち主は双花だもん。双花が名前決めていいに決まってるじゃん?」

この戦煌刀はアルナが戦煌刀士になった時に受け取った物。彼女が持ち主だった時は、ホワイトローズと呼ばれていた。

「それで…なんて名前にするの…?」

「えぇ、と……シロガ…ネ…」

双花は少し迷った挙げ句、恥ずかしそうにその名を口にした。シロガネ…それは自分の髪色と同じ、そして二人の異名にも使われている名前。

「シロガネ…か。いいじゃん!」

「なんか私達まで嬉しくなっちゃう名前!」

二人はその名前に感激している。気に入ってもらえて良かった…と、双花は肩をなで下ろす。

「ありがとう…二人共。私、シロガネ…大事にするね!」



中央都市オプロアス。その大聖堂で煌姫、リリィ・エクレイアはお役目を行っている最中だった。リリィは目を瞑り、透き通った声で大地へ祈りの歌を捧げている。オペラ調の彼女の歌に反応し、大聖堂の装飾が光輝き、大地が喜んでいるかのように沸き立つ。

そんなリリィの様子を、従者であるアルナが心配そうに見つめていた。

お役目を終えたリリィの元にゲイゼンとクゥルンが近付いてきた。

「どうです…?新しい聖煌装束の着心地は?」

ゲイゼンが自信ありげにリリィへと尋ねる。彼女が実に纏うあちこちに宝石が散りばめられた神聖な白いドレス、これこそが聖煌装束。

「別に。ただ以前よりも消耗しなくなった気がするわ…」

「それもそのハズ、この聖煌装束はクゥルンが貴女の為に作った特注品。価値にしてこの一着で大聖堂を買い占める事もできる程」

「へぇ。ありがたいことね…私みたいな小娘にそれだけのお金がかかっているなんて」

「貴女が思っている以上に周囲は期待を寄せている、ということですよ。前の煌姫のおさがりはあまり貴女には合わなかったみたいでしたしね…そもそも貴女の煌力は歴代の煌姫の中でも相当上位に入る程」

「ところで…どうしてこの衣装…胸のあたりが開いているのかしら?気になって仕方ないのだけど…何か意味でもあるの?」

「それは私の趣味だ、いいだろう?姫様」

自慢げにクゥルンが割に入ってくる。

「ちっとも良くないわ!次のお役目の時には直して頂戴!」

「そんなー。姫様には絶対お似合いなのにぃ!」

リリィはぎこちないながらも少しづつ他人ともコミュニケーションを取るようになっていた。以前では考えられなかったことだ。こうして他人に心を開いてくれるようになったのも白金髪の少女、双花のおかげか…と思うとアルナは少し悔しかったがそれ以上に嬉しさが勝った。

「今日のお役目はおしまいだ…城へ戻ろう、リリィ」

「えぇ」



その夜、リリィとアルナは煌姫の間でくつろいでいた。煌姫の間にはボディーガードを兼ねたアルナのスペースも用意されており、そこで寝泊まりをしている。アルナは自分のスペースの整理整頓を行っている。リリィはアルナにも徐々に心を開き始めており、アルナも以前より彼女に気を使わなくなった。姫と従者、お互い良い関係を築けていけそうだな…とアルナは最近よく思う。

そんな彼女の上機嫌な様子を察知し、気になったリリィはアルナのスペースに近付くとアルバムを発見する。

「えぇと、なにこれ」

「ああ、これは私の学生時代の写真だよ…この前双花達が訪ねて来ただろう?思い出話がてらアルバムを引っ張っていたんだ」

「へぇ…見てみたいものね。…貴女が私くらいの年齢の頃、どんな女の子だったのか」

「構わないよ。まぁ…あまり今と変わらない感じだけどね」

「ふっ、容易に想像できるわ…」

リリィがアルバムを開くとそこには思いもよらない写真の数々が綴られていた。

「えっ…?なに、これは…」

リリィがアルバムを開くとそこにはシラリィ、ロウリィと一緒に腕組みをして癌を飛ばすアルナの姿が写し出されていた。あまりにも普段のアルナとかけ離れている姿にショックを受けたリリィは勢い良くアルバムを閉じ、ベッドへと戻ろうとする。

「アルナ…少しでも貴女と仲良くしようと思った私がバカだったわ。まさかこんな野蛮人だったなんて…」

「あっ、いやこれはだな…!違うんだ!若気のいたりというか…!軽蔑しないでくれ!リリィ!リリィー!!」

アルナ必死の弁解は夜遅くまで続いた。

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