奇跡は起こすもの
少女の母親は日に日に弱っていった。
ある日、少女が家に帰ると、父親がいた。父親は、母親の担当の医師と話があったらしい。
その内容は、母親に新薬を使ってみるてはどうだろう?というものだった。
「ただ、その新薬を使えば治るものではないらしい。治らないかもしれない。それに、副作用もひどくなるらしい。お母さんは、もう体も弱っているから、その薬を使うことによって、命が縮まるかもしれない。お父さんは、もう、家に引き取って、ここで面倒を見て最後を迎えて欲しいと思うのだけど。」
少女は、父親の話に納得できなかった。
「その新薬、使ってみようよ。やってみないとわからないじゃない。何もやらないで見ているだけだと奇跡は起こらないよ。奇跡を起こすために使ってみようよ。」
少女は、何もやらないで死ぬのを待っているだけというのがとても嫌だった。どんなものでもいい。可能性があれば、やってみればいい。そうしないと、奇跡は起こせなし、起こらない。
「わかった。先生にお願いしてみるよ。」
数日後、新薬の投薬が始まった。
副作用がひどく、少女の母親は、物が食べれなくなった。しかし、食べないと体力が落ちるから、少女は必死に家で母親が食べれそうなのを作り、病院にもっていって食べさせた。
副作用で、全身がしびれて苦しい時も、少女は必死に看病した。
そして春が近づいてきたある日。担当の医師に呼ばれた。
「頑張ったね。もう大丈夫だよ。」
医師は笑顔で言った。
新薬が効いたらしく、ガンはどんどん小さくなっていった。そして、手術で切り取れるぐらいまで小さくなったから、手術で取れば長い闘病生活は終わる。
治れば奇跡と思っていたのに、その奇跡が起きた。少女は嬉しかった。
そうだ、お礼をしにいこう。
喫茶店の場所へ行くと、空き地になっていた。近所の人に転居先を聞こうと思い、隣の店に入って聞いたら、そこはずうっと空き地になっていたらしい。
少女が入った喫茶店は?あのマスターは?なにものだったのだろう…。
空き地を見ると、雪の間からタンポポが顔出していた。