2.アッチェラードの店(2)
アッチェラードの父ははっとするような美形で名を知られていた。
オアシスの娘たちは一目アッチェラードを見ようと、隊商が到着するといそいそと表へ出て来たものだった。
その子のアッチェラードは、平凡な容姿だった母の要素もあって、少しぼやけた印象になっている。
だが、よく見ると整った顔立ちをしていて、すっきりと綺麗である。
横顔の、あごから首にかけての線はとても綺麗で、そこに黒髪の毛先がかかるともっと綺麗だ、と、従妹のレーカは言う。後ろで一つに結んだ黒髪がばらばらとこぼれた毛先だ。
アッチェラードの身長は170cm前後。
やせているので、実際よりもすらっと高く見える。はたきを手に持つと、天井に届きそうな品物のほこりも払える。
運動神経はといえば限りなくゼロに近いが、オアシスで幼少期を過ごしたため、らくだと馬には乗れる。
性格は温厚だが、欠点もたくさんある。少し疑い深くて、従妹のレーカが洗ってくれたレタスでも、じろじろと裏表を観察してから口に入れる。
それにライムの塩漬けをびんに入れて持ってきてくれたときも、受け取った後で半無意識的に手の中で回転させて、凝視してしまったこともある。
商売柄の欠点だろう。
それに、宝くじを買うのが好きなのに、はずれだと分かるといつもほっとしている。がっかりしながら、ほっとしている。
アッチェラードの長所とも短所ともいえるのは、野心のかけらもないことだ。
「このまま年を取って死んだら、レーカの子どもに店をあげるよ」と言う。
アッチェラードは一生独身のつもりだ。この生活を変えたくないのだ。でも、親しい友人もいないので、少し人嫌いの面もあるかもしれない。人より物を相手にしている方が好きそうだ。