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12.旅のしたく(3)

 門衛が再び戻ってくるのを待つ間、大魔法使いと二人だ。

 お金を受け取るだけなら別に大魔法使いはもう城に戻っていいと思うのだが、去ろうとしない。

 何か話さなければと思う。


「ところで、私を名指しでいらっしゃったのはなぜですか? エスプリの推薦とか、最強だとか、何のことでしょうか」


 そう聞くと、


「お前、私が魔法で出した炎はどれくらいの大きさに見えた」


 と聞くので、このくらい、と親指と人差し指で5cmほどの長さを示してみせると、


「そう、やはりお前には具象化魔法の部分しか見えていないのだ」

 とのこと。


「具象化魔法?」


「実際に現実の炎を出すのが具象化魔法。それに幻惑魔法を組み合わせるのが、一般的な魔法の使い方だ。

 幻惑魔法と言っても、普通の人間には本物の炎と変わらないように見える。その炎に触れた場合、本物の炎に触れたと思う。するとその思い込みが自分で自分に対する魔法になって、本当に火傷してしまう。訓練を積めば幻惑魔法によるダメージはある程度抑えられるようになるが」


「はあ、そうなんですね」


「だが、お前には幻惑魔法が見えなかったということだ。見えないということは、かからない。幻惑魔法が効かないということだ」


「そうなんですね」


 アッチェラードがあまり感慨なさげに聞いているので、大魔法使いはいらっとする。


「これはすごいことなんだぞ。幻惑魔法が効かない人間には会ったことがない。お前は攻撃魔法に対して最強なんだ。その能力、私がほしいくらいだ。私の魔法が効かないなんて、なんてふてぶてしい奴だ。」


 そう、力を込めて、人差し指で指さされまでしたが、アッチェラードにはぴんと来ない。そもそも魔法を見る機会が無いし、攻撃魔法を受ける機会も今後なさそうなので、そんな特技が有用とも思えない。


「他の骨董商人にもあたってみたが、お前のように全く見えない、という奴はいなかった。後はそもそも態度が気に入らない奴ばかりだった。子供だと思って全く取り合わない奴もいたな。その点お前は態度が丁寧で気にいった。それも評価している」


「そんな、子供だと思ってと言われても、それを言ったら私なんて十七ですし、よっぽどこちらの方が子供と思われて仕方ないですし――」


 アッチェラードがそう言うと、大魔法使いは明らかに変な顔をした。


「お前、私がいったい何歳に見えるというのだ」


「え?」


 そう言われるので、ここは若く答えた方がいいのか迷ったが、正直に答えた。


「二十代後半に見えますが……」

 そう言うと絶句していた。

 そうなのである。アッチェラードの目には大魔法使いダルセニオンは二十代後半のいい大人に見えるのだ。


「……そうか、これも一種の幻惑魔法だからお前には効かないんだな。いいか、お前が変人に思われないように言っておくが、お前以外の目には私は十三歳くらいの少年に見えているのだ」


「え!?」


 そう言われて思い出す。隣の奥さんが、この魔法使いを「あの子」呼ばわりをしていたのは、何も奥さんの息子くらいの年だから「あの子」だった訳ではなくて、本当に子供に見えていたのだ。


 アッチェラードの目にはどう見ても子供には見えない。信じられない。魔法が効かない、という逆の立場から、魔法の威力を思い知る。


「でも、どうして子供の姿になるように魔法をかけているんですか?」


「……それは、敵が油断するからだ。人は見かけに頼る物だしな。敵でない場合でも、子供相手だと思って油断した態度から本性を見抜くこともできる」


「なるほど」


「と言っておけば納得するらしいな。よし、これからもこの理由でいこう」


「へ?」


「ん? 何か?」


 ……心の声が漏れていたらしいが、面と向かって聞いても答えてくれなさそうだったので、アッチェラードはあえて聞かないことにした。



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