日常から非日常へ
一見不良な親友といつも通りの日常。でも今日はいつも通りとは行かなくて・・・親友ともはぐれちまったし、どうしよう。まあ、取り敢えずは元の世界に戻る方法探すかな。その内あいつも見つかるだろう。
「っあ~、マジで鬱陶しいんだよあの教師!」
学校を出るなりそう叫んだのは林魁人俺の昔からの親友だ。中学生にもかかわらず180cmという長身と長めの茶髪―――これは地毛だが―――に鋭い眼差しと一見するとそこらの不良よりもよほど迫力があるが実はとても優しい性格の持ち主だ。過去に迷子になった子供にずっと付き添い母親探しを手伝っていたということもある。まあ、こんな奴なのでそれなり、というかかなりモテる。一日に三人から告白されたこともあるのだ。最も本人はあっさり、具体的には二秒くらいで振っていたが。
「大体、授業中にちょっと寝たからってわざわざ放課後に呼び出しとかするか?やることが大げさなんだよ。なあ、タクヤ」
そして、そんな魁人の引き立て役となっているのが俺、蓮杖拓哉身長は160cmとまあ普通位。見た目も悪くはないが良くもない。唯一自慢できるのは運動神経の良さだけ。そんな俺が近くにいるものだから魁人の人気はうなぎのぼりだ。
「それは魁人がいつも寝てるからだろ?いくら今日そんなに寝てなかったからってそれ以外の日が問題なんだよ」
「そもそもだなぁ、俺達は何でこんなところに来なくちゃいけない?」
「何でって・・・勉強のため?それか、自己の確立?」
あまりにも当然といえば当然なことを聞かれて拓哉は返事に詰まる。しかし魁人は聞いているのかいないのか憮然とした表情で続ける。
「俺達人間はなぁ、子供でもそうでなくてもこの昼の、具体的には九時辺りから三時から四時の間が最も生命活動が活発なんだよ。それなのにその重要な時間帯にあんな狭いところに閉じ込められてお勉強か?大人達は何を考えてんだ」
「・・・また出た。それもう何回も聞いたから」
この旧友は昔から学校という制度に疑問を抱いているらしくこんなことを言ってはよく学校をサボる。学校の教師はそのことで魁人を問題視しているのだが魁人の成績は上の中。面と向かって怒ることができないのだ。
「これこそ俺の、誰にも侵すことにできない自論だ!お前もそう思うだろ!お前もこっちに来るんだ!そして一緒に学校をサボろう!」
「何サボること公言してんだよ!そして俺を巻き込もうとするな!」
「何だよお、俺ら親友だろ?その親友の頼みが聞けないってのか!」
「それとこれとは別問題だ。何だその酒に酔った上司みたいな物言いは?」
「俺自身の自論のすばらしさに酔っている」
「それこそ知るかっ!」
俺と魁人はまるで漫才のように会話を続ける。そうしてしばらく歩いているといきなり地面が揺れた。まともに立っていられないほどに強い揺れだ。
「っとお、いきなりかよ。どうしたんだ」
「おおっ、俺の自論のすばらしさに大地が震えて感動している!」
「んなわけあるかぁ!」
俺達の住んでいる町では地震はそれほど珍しいものでもなくそれなりに慣れていたので俺達は漫才を続ける。だが、その地震はいつものそれとは違った。・・・いきなり俺達のいた地面がなくなったのだ。
「「・・・・え?」」
何が起きたのかまったく理解できない。地面が崩れる時ってもっとものすごい音がするものじゃないか?っていうか崩れた地面どこいったんだ?消えてるとかマジでありえないだろ。ああ、そういえば漫画とかで空中にいるのにすぐに落っこちないってあれ本当だったんだなあ・・・自動車事故とかの時一瞬時間が遅くなるって聞いたけどあれと同じ様なものなのかなあ?あれ?っていう事は俺たちもうすぐこの中に落っこちたりするのかな?
「「・・・って、うわああああああああああああああ」」