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2026年2月29日  作者: きたみ詩亜


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第4話:異変の拡大(2026年2月25日・水曜日)

 水曜日の朝、目覚めると昨日よりも違和感が強くなっていた。

 時計の針は正しいはずなのに、時間の感覚がずれている。テレビのニュースも、何度見ても微妙に映像が途切れるように感じる。


「……やっぱり、昨日よりおかしい」


 俺はため息をつきながら、制服に着替える。登校途中、街の空気が妙に静かで、通りを行き交う人々の動きがぎこちない。誰も異常に気づいていないように見えるが、俺には違和感がはっきり伝わってくる。


 学校に着くと、美月がすでに校門の前で待っていた。


「翔、昨日より酷くなってる気がする」


 彼女の表情は落ち着いているけど、目の奥には不安が隠せない。


 教室に入ると、時間の感覚のずれがさらに顕著に現れた。時計の秒針が微かに飛ぶ、教室の窓から差し込む光がほんの少しずれている――小さな異変が、確実に日常を侵食しているのが分かる。


 昼休み、俺たちはいつものベンチに座る。


「翔、このままだと29日までに何が起こるか分からないね」


 美月の声は小さく、しかし決意に満ちていた。俺は彼女の言葉に頷き、互いに情報を整理する。


「俺たちで、少しずつ記録して確認していこう。変なことがあればすぐ知らせる」


 俺の言葉に、美月も頷く。二人で異変を共有することで、少しだけ安心感が生まれた。


 午後の授業中も、俺は机の上のノートや窓の外を何度も確認した。何気ない光景も、昨日より微妙におかしい。針のずれ、影の長さ、鳥の動き――小さな違和感が、日常を覆いつつある。


 放課後、駅前で美月と落ち合ったとき、街の時計がまた微かにずれているのを確認する。平日の夕方の静けさの中で、異変は日常の影に潜み、確実に拡大している。


「翔、やっぱり29日が近づくと何か起こるんだ」


 美月の言葉に、俺は少し背筋が冷たくなる。だが、手を取り合うわけにはいかない――互いに距離を保ちながら、心の支えとして存在を感じる。


 俺たちは静かに、29日へと歩き続けた。日常の中に潜む異変の影を胸に、確実に迫るカウントダウンを意識しながら。

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