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アンジェリ家の遺産  作者: 如月鶯
第1章 訃報
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親族

カイロリの訪問の数週間後、アンジェリ家の財産を一時的に管理している裁判所の財産管理人マテオッティの案内で、アンジェリ家が所有する建物や屋敷(ヴィラ)を相続人一同で見て回ることになった。しかしながら、その日は平日で、共に教師として働くオクタヴィアとロメオは参加出来ず、何となく蚊帳の外に置かれた感じだった。


オクタヴィアの代理でこの「物件巡り」に参加したカイロリは、アンジェリ家の財産にはボローニャ中心街の三軒の建物の他に、ボローニャ郊外にある十六世紀の古い屋敷(ヴィラ)や、同じく郊外にある三区画の土地と建物が含まれ、いずれも予想以上に傷んでいるものの素晴しい物件ばかりで、建物内のアパートや店舗の数を合わせると百二十軒になると、嬉々として報告してきた。更に親族会や遺産分割協議については全て彼が手配するので、くれぐれもメンギーニ一族と直接連絡を取らぬようにと釘を刺した。

しかしそんなカイロリの意向に反してメンギーニ一族が次々にオクタヴィアに連絡してきた。 


最初に連絡してきたのは、ジルダ・メンギーニの弟のクラウディオ・メンギーニだった。クラディオはオルガ・メンギーニの遺産を巡って、既に彼等の間でもめており、おそらく訴訟になるだろうと言った後で、オルガが亡くなったことで彼等が五親等に繰り上がったのだから遺産は五十パーセントがオクタヴィア、残りの五十パーセントをメンギーニ達六人で分割するのではなく、全財産を相続人全員で七等分出来ないか弁護士に見解を訊いている所だと話した。 


「ふざけていると思わないかい?」

ロメオは怒りを露わにした。

「母さんは五親等で奴等は六親等だよ。それに彼らはロレンツォと面識もなく、本来なら全く関係ないはずだったんだ」


実際、ロレンツォがあと二十日長く生きていれば、遺産は全てオクタヴィアが相続するはずだった。五親等のオルガ・メンギーニがロレンツォの二十日後に亡くなったためにオルガの親族達が法定相続人として滑り込んでしまったと言うわけだ。ロレンツォが七十九歳、オルガが百歳だったそうだから、なんとも皮肉な運命の悪戯である。


その数日後、今度はオルガの妹アンナ・マリアの孫にあたるミケーレ・オルシーニが連絡してきた。アンナ・マリアにはイザベラとアメーリアという二人の娘がいたが、アメーリアの方は既に死亡しているので、彼女の息子と娘、ミケーレとリディア兄妹が相続人に繰り上がったのだ。ミケーレは会計士で、電話の印象ではクラウディオ・メンギーニより遥かにまともだった。ミケーレはアンジェリ家所有の不動産はどれも荒廃が激しいので、全て売却して現金に換えてしまうか、あるいは少なくとも半分を売って修復費用に当てるべきであると言う彼の見解を述べ、遺産は総額一千万ユーロを下らないだろうと話した。


3月8日、カイロリが興奮して電話をかけてきた。遺言状が発見されたと言うのだ。

この日、カイロリと財産管理人のマテオッティはロレンツォの専属会計士アンジョーニの案内でロレンツォの住居に入り、彼が生前、重要書類を保管していた金庫の中から未開封の遺言状を発見した。いかにも信仰深かったロレンツォらしく、手書きで遺言状としたためられた封筒の中央に、十字架が描かれていたそうだ。カイロリは遺言状を開封し、内容を確認するまではまだ何も言えないと告げ、慌しく電話を切った。


翌日、再び電話をかけてきたカイロリは、遺言状にはオクタヴィアの名前だけが記されており、現在、公証人が検認手続きを行っていると報告した。


しかし次の週になると彼は全く違うことを言ってきた。遺言状には確かにオクタヴィアの名前があるが、肝心の財産についての正確な記述はなく、しかも書き方が不明確で解釈不可能なため、財産分割の考察対象にはならないと言うのだ。


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