君の事が好きだから
私は、ドギマギしていた。産まれて初めて好きだと
それも面と向かって告白されたのだから。
相手の男の子は、同じクラスの高木。地味でも派手でも
無い本当に普通の男の子だ。普通な私にはピッタリ
だったかも知れない。奇遇にも私も実は少しだけ高木が
気になっていたから。彼の書く小説がとても好きだった。
同じ文芸部に所属しお互いの作品を読み合い批評しあう
仲だ。他の部員の作品も勿論良いのだけど、意識してる
せいか高木の作品ばかり気になった。以前読ませてもらった
作品「君の事が好きだから」は未だに忘れられない。登場
人物、背景、ストーリーが私の環境に酷似していたせいだ。
作中主人公の男の子が意中の女の子に告白するシーンがある。
物語は返事を待つシーンで終わる何ともジレったい作品なの
だけど、それがまた私を夢中にさせる要因でもあった。
思えば今この瞬間にソックリではないか。あーだこーだ
想いを巡らせる私を高木はガン見していた。いや、返事を
待っていただけど。顔から火が出る程に恥ずかしかったけども
同じ位に嬉しかった。
「え、あの、少し考えさせて」咄嗟に出た言葉は、気持ちとは
裏表逆な返事だった。本当はオーケーしたかったのに、素直に
頷くだけで済んだ筈なのに本当に恥ずかしくて出た言葉だった。
そそくさとその場を立ち去る。ごめんね高木、折角勇気振り
絞って告白してくれたのに、優柔不断な私でごめんね。帰る道程
私は、同じ言葉を心の中で繰り返していた。
夕食を済ませ、バスタイムも済ませベッドに入るまで心臓は
高鳴っていた。明日高木に合ったら何て言おう、どんな顔して
会おう・・・返事を聞かれたらどうしよう。ずるいよ高木。
あんたの作中では未返事で終わらせたくせに。いや、これは
責任転嫁か。結局眠りに付き損ね朝を迎えてしまった。登校時間
までにはまだ余裕がある。そうだ、私が彼のあの作品の続きを
書こう、それを返事の変わりにしよう。我ながら良いアイデアだ
と張り切って筆を走らせた。家を出る時間ギリギリまで掛けて
一気に書き上げた。朝食を抜き、通行人をも追い抜き高木に
会いに行く。こんな両思いが初恋だなんて、恋の神様本当に
ありがとう。不意に高木の後ろ姿が目に入った!さあ渡すぞ!
私の気持ち伝えるぞ!私は、元気いっぱい声をあげていた
「高木くーん、おはよー!」