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はじめに
フォークナーの「アブサロム、アブサロム!」を読みました。感想を書こうと思います。
まず、作品全体を通読して感じたのは『オーソドックスな文学だな』という事です。話そのものは、トマス・サトペンという自らの野心に取り憑かれた人間が破滅していく物語で、主体の欲望に勝てなかった人間が社会的に破滅していくというのは、私の知っている範囲内で、『オーソドックスな文学作品』だと思います。
なので、全体を通読して、(良かったな)と素直に思いました。作品そのものも良かったし、自分の観点が間違っていなかった証明になっているとも感じ、その点でも(良かった)と思いました。
もっとも、この作品には明白な欠点があると思われますので、欠点の方を先に片付けてから、作品の本質について考えていきたいと思います。欠点は二つあります。