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バズらない奴に名前はない。  作者: 清水雪灯
バズらない奴に名前はない。
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第7話『マシロ視点』-2

 ふと気がついた。

 なにか大きな物が動いている。きわめて近くから微細(びさい)な振動を感じた。

 視界の(すみ)、奥の部屋になぜか巨大なプールがあった。

 無意識(むいしき)のうちにその場所へ近づく。内部を(のぞ)き込んだ。

 誰もいない。

 何かプヨプヨした物がそのプール全体に()き詰められている。

『まさか……』

 液体。いや違う。固体でもない。ゼリー状に近い。

『これが……』

《そうだよ、マシロ。これが本体だ》

 この劇物の言葉はセイにも聞こえている。

『ごめんね、セイ。あとは任せる。私がこいつを処理しないと』

 彼は無言でうなずいてくれた。

 サクラたちの部屋を離れプール部屋に入る。すでに部屋のロックは解除されていたのか簡単に侵入できた。

「いよう、遅かったじゃねえか」

 巨大プールがしゃべった。

 聞き覚えのあるガサガサの声。ケシズミだ。

 プールの中から泡が立ち、何かが浮かび上がってきた。

 それはもはや人間ではなかった。

 すでに全身あちこち劇物に喰われて人間としての原形(げんけい)をほとんど失っていた。

「すげえなあコイツは……なんでもできる。すべて、すべてすべてオレさまのモンだ。これじゃあ神さまになっちまうなあ、おい」

《神さま気取(きど)ってもねぇ……。劇物は奇跡でも神でもないよ》

『珍しく全力であんたに同意するわ、劇物』

 今、同化(どうか)しているからこそ自分の能力の限界が見えている。もっとチカラを求めるならさらに劇物から可能性の設計図を引っ張り出さなくてはいけない。

 それは同時に私の脳を破壊することにも(つな)がる。こいつが持っている情報量が多すぎるんだ。どこまで私の脳が耐えられるか分からない。

 結局、劇物は神さまになんてなれない。

「これで全部オレさまのモンだ。だ、だ……だぴ……」

『もうすぐ意識が消えるわね。完全に自我(じが)が死んでるわ』

《そうだね。時間の問題だね。こうなってしまったらもうアウトだ。適応できなかった劇物は宿主(やどぬし)(とも)死滅(しめつ)する。さあマシロ、破壊しよう。あの劇物はもうダメだ》

 あっさり結論が出た。

 あれだけ生きることに固執(こしつ)していた劇物だが、死亡が確定した途端(とたん)ゴミあつかいらしい。

 宿主が死んだら同化した劇物も(ほろ)びる。

 つまりこの巨大な劇物もケシズミと共に死滅する。

《つくづく、とんでもないことをしてくれたね……あのおじさんは》

『同感だわ』

 突然ケシズミの形状(けいじょう)が変化した。

 残っていた腕や足が急激に溶けて液状()し劇物と同化していく。適応できなかった人間の末路(まつろ)はいつも同じ。最後は劇物に乗っ取られ暴走する。

「は、は、はぴ……」

 最期(さいご)

 笑いながらケシズミの顔が溶けていった。

 巨大な劇物。そのゼリー状の中へ完全に消えていく。



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