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バズらない奴に名前はない。  作者: 清水雪灯
バズらない奴に名前はない。
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第3話『ムラサキ視点』-3

 セイがスマホを取り出し画面を見せてきた。

「では可能な限り簡潔(かんけつ)に説明します。俺がここに来るまでこのようなルートを通ってきました」

 研究所の簡易(かんい)マップを手書(てが)きでスマホの画面に書き込む。セイは普通に研究所の一階(いっかい)から来たようだ。

「そこでマシロという子と出会って、さらに途中で研究員のワサビ、警備部のクレナイ、留置場(りゅうちじょう)にいたアカネ、ほかにも色々な人たちと感染者に遭遇(そうぐう)しました」

「この短時間でかなり動き回ってんな……」

「ええ、そこで問題が発生したんです。繰り返しリピートしているとある現象が起きました。同じルート同じメンバーでも毎回行動が違う。その時の状況、個人の判断で、それぞれがまったく違う行動をする。結果、同じ道を通過したはずなのにまったく違う結果になるパターンが何回もあった。おかげでなかなかムラサキさんと合流できなかった」

「そんなにランダム要素が強いのか……」

「本当に苦戦しましたよ。同じ状況でも無意識のうちにみんなが違う選択肢を選ぶから毎回正解が分からない。ここに来るまで何度も死にかけましたよ」

「それじゃあセイはもう何周ぐらいしてるんだ、この世界」

「現在、二十五周目です」

「にじゅうご? 二十五周? マジか」

 もう世界とか救うのムリじゃねえか?

 とか思ったが、言葉を飲み込む。ここで諦めても時間は進まない。とにかく生き残るしかない。

「このあとオレはどう動けばいい? 分かる範囲でいい、教えてくれ」

「まずイチゴさんがすぐに帰ってきます。三人でこの通路を戻ってマシロと合流しましょう。人数がいればそれだけで生存率が上がります」

 その言葉の通りアサルトライフルを構えたままイチゴプリンが戻ってきた。

 先に声をかける。

「で、どうだった?」

「腕のデカイバケモノが死んでたっすね。全身を穴だらけにして」

 イチゴの視線が横に向く。

「あれ、その子は?」

「さっきの動画で言ってたセイって学生さんだ」

「セイです。はじめまして」

「あー、無事に合流できたんすね! ドモっす。警備部のイチゴです」

「このイチゴプリンがたぶんオレたちのなかでもっとも戦闘に慣れてる人材だ。だよな?」

「大丈夫っす、任せてください。私、簡単には死なないので」

 メッチャ死亡フラグに聞こえるから恐ろしい。



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