表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バズらない奴に名前はない。  作者: 清水雪灯
バズらない奴に名前はない。
23/49

第2話『マシロ視点』-5

『いやいやいや……生存本能(ほんのう)、強すぎっしょコイツ!』

 うっかり変異体(へんいたい)(なぐ)られただけでこっちはアウトだ。とにかく自分の()を守らないと死ぬ。

 攻撃がダメならまず防御か。

 じゃあ、どうやってあの攻撃を(ふせ)ぐ?

 私たちには(たて)(よろい)もない。

『ちょい、劇物(げきぶつ)? 感染者(かんせんしゃ)が変異体になって強化できるなら、私にだって強化クリエイトできるでしょ?』

 まず相手の攻撃を防ぐ盾が必要だ。

『ちょっと劇物!』

《さきほど(しゃべ)るなと言われたからね。おや、もっと喋っても良いのかな?》

許可(きょか)!』

《それは良かった。意思(いし)疎通(そつう)って大事だよね》

 この状況で(かた)いシールドを探す時間はない。

 だとしたら自分のカラダ、細胞(さいぼう)を利用するのが一番(いちばん)早い。

『で、生物の体内(たいない)で硬い物質ってなに?』

《色々あるけど》

『はよ答えろ!』

《当然、炭素(たんそ)だね》

 警備室を逃げ回りながら叫ぶ。

『じゃあ、炭素ってどこにあんの!』

(たい)組織(そしき)において筋肉、脂肪(しぼう)、骨、すべてに炭素は(ふく)まれている》

 自分の肉体をイメージ。

 そしてカラダから炭素を見つけだし手に集中。ありったけの炭素を全身から集める。

《その炭素と鉄を結合(けつごう)させ、さらに熱を加えることによって急激に鉄は強く硬くなる》

 利用できるものが目前にあった。

 とっさに拳銃が置かれたガラスケースからハンドガンをひとつ持ち出す。

 トリガーに指が届かないから弾は撃てない。

 でも素材(そざい)としてなら利用できる。

『どーやって熱を加えるの?』

《体温を上げるんだ》

『だから、どーやって』

《キミの白血球(はっけっきゅう)を利用しろ。白血球からサイトカインという物質が分泌(ぶんぴつ)され免疫(めんえき)活性化(かっせいか)される。 そのサイトカインがプロスタグランジンという物質を産生(さんせい)して中枢(ちゅうすう)神経を刺激、体温を急激に上昇させる》

 自分の神経を刺激して体温を(いち)部分(ぶぶん)だけ加熱(かねつ)する。

『オッケー、さあ発熱(はつねつ)しなさい、サイトカイーン!』

 バケモノが先に動いた。

 ヤツは手の装甲(そうこう)を変形させ(するど)(やり)のように形状を変えた。私たちを刺し殺すつもりらしい。

 変異体が()ぶ。槍を(かま)えて私に突っ込んでくる。

 私の小さな拳。握り締めた拳銃の鉄と私の炭素が融合(ゆうごう)して、自分の血液が沸騰(ふっとう)しそうなくらいの高温で加熱される。

 ハンドガンが形を変えた。

 劇物の能力でクリエイトされた盾が生まれる。

天然(てんねん)ものシールド出来(でき)あがりいいいーっ!』

 感染者の槍が私の盾に突き刺さった。

 大丈夫。貫通(かんつう)されない。それどころか盾に槍の先端(せんたん)が刺さって敵が一瞬(いっしゅん)、動けなくなった。

「今、()ける!」

 すかさずセイが警備室のパソコンを操作して留置場のロックを解除。

 (さく)()いた途端(とたん)アカネが(もう)ダッシュ。

 銃が置かれたガラスケースから銃身(じゅうしん)のやたら長い(もの)を引っ張り出した。

 ライフルだ。

 てっきりハンドガンを選ぶと思ったら、長くてバカでかいライフルを手にしたアカネ。

『こんな(せま)室内(しつない)でライフルって』

「これがあたしのスタイルなの」

 変異体が私の手の平から槍を引き抜き()んだ。

『逃げられた!』

 違った。ターゲットを変更したんだ。

 警備室に出てきたアカネに向けて突進(とっしん)するバケモノ。

 果たしてライフルの貫通力(かんつうりょく)でいけるのか。

 撃てるチャンスはあった。が、アカネは撃たない。

『ちょ、なにやってんの!』

「よぉく()えた、チビっ子!」

 でかいライフルを構えてアカネが叫んだ。

「あとはお姉さんに任せなさーい!」

 敵が突っ込んでくる。その(くち)を大きく(ひら)き感染させようと牙を向いた。

『なんで撃たないの!』

「分かってないねえ、アンタたち」

 変異体がアカネに(せま)る。

 その凶器、牙。バケモノの(くち)の中へライフルの銃口(じゅうこう)を突っ込んだ。

「ライフルってのは、ゼロ距離スナイプが一番(いちばん)たのしいに決まってんだろうがあああー!」

 ヘンタイです。変態がいました。

「知ってるかい今日の運勢(うんせい)?」

 まず一発(いっぱつ)。変異体の頭が衝撃でのけぞる。

「占いランキングトップは獅子座(ししざ)のビー(がた)。今日のあたしは最高に決まってんだろーがあああーっ!」

 さらに一発(いっぱつ)

 感染者の頭から大量の出血。頭部を(うしな)い、そのままバケモノが倒れた。

《ヤベェ人間だね》

 劇物が言うな。

『ええっと、アカネさんは……』

「いいよ、アカネで。アンタみたいな小さな子が()ぃ使うなっての」

 倒れた変異体の顔面を踏み(つぶ)しながら、バカでかいライフルを肩に(かつ)いでアカネが言った。

「た、助かりました」

「ん、お疲れーい。出してもらってコッチも助かったわ」

 つまり、こーゆー(ひと)らしい。

 無実でもヤバイ(ひと)だった。

 とりあえず自分の手にへばりついている盾をクリエイト能力で形状を変化させる。自分の細胞だから吸収できるかと思ってイメージしてみたら、あっさり手の平にズブズブと吸収されていった。

『あの、さっき言ってた話……アカネが連続殺人犯じゃないって』

「あー、商品部のキミドリさんね。タイミングは妹の時とほぼ同じ。キミドリさんが死体で発見されたわ。頭が半分くらい吹っ飛んでた。でもあっちの犯行は監視カメラに(うつ)ってなかった。死体を調べてもなーんも証拠がでなかったとか」

『じゃあ今もヤバイ殺人犯が研究所をウロついているって話……クレナイさんがさっき言ってて』

「ああ、それ本人よ」

『え、なに? なに? なに?』

「どういうことですか」

 セイも理解が追いついていないらしい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ