共感者
「小間ってどこから来たんだ?」
「駅前のカフェ行った?意外とカレーが激うまでさー」
「次の数学の先生面白いんだよ」
まあ、転校生あるあるだよな。
みんな気さくに話しかけてくれて本当にありがたい。
これからいい学生生活を送れるといいな…。
ーそれより俺は気になる。
そう、後ろの女子が。
「零、何してんの?」
「えっ?!空気の入れ替えだよ?!」
窓に向かって手で風を仰いでいるように友人には見えるようだが、実際は浮遊霊を窓へ追いやっている。
「わ!!!!!」
「わっっっ!!えっ?!零?!びっくりしたよ!!?」
「あはは、大成功〜」
背後から驚かせて遊んでいるように見えるが、実際は友人に取り憑こうとしていた中年男性の霊を驚かせて退散させていた。
「悪霊退散させているんだよ〜」
「えっ岩塩?新しい発想〜」
ほのぼのと冗談を言って笑っているが、本当に除霊している。
俺はもう気になって気になって仕方がない。
1日様子を見ても、どうやら俺以外に気づいている人はいない。
もうすぐホームルームが始まる…後ろの女子、香月さんはまだ友達と喋ってる。
お礼もちゃんと言えてない。
それに初めて同じものが視えている人に出会えた…話したいな。
けど急に不安が過ぎる。
偶然そうしているだけだったら…
突然「幽霊視えてるんだよね」なんて話をされて困らせたり…
…気味悪がられたら……
何度か話したことはあったけど、誰も本気にしなかったし
寧ろそれで気味悪がられて避けられたりもした。
胸がギュッと苦しくなった。
やっぱり言えない…かな。
そうこう考えていると、朝見た落下していた女子生徒の霊が机から突然出てきた。
『視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる視えてる』
まずい
ガッツリ目が合った
体…重すぎて上手く動かせないかも……
信じられないくらい重いものが乗っかってる感覚
情けないけど、心の中で叫んだ
ーーーー香月さん、助けて!!!
「小間くん、大丈夫?」
肩をポンと叩いてくれた
その声はやっぱり
「香月さん…」
香月さんはニコッと笑っている。
そしてやっぱり彼女に叩いてもらうと体が軽くなった。
叩いた右手を見ると、数珠のようなブレスレットが見えた。
そこからとても清らかな気を感じた。
「…転校初日でつかれたよね?
私後ろの席なのに全然今日話せなかったから、
一緒に帰ろうよ!」
「つかれた………はは、うん帰ろう」
もうさっきの不安は吹き飛んだ。
やっと長年の悩みが解決するんだ。
これだけで正直今、泣きそう。
「もうすぐ先生来るよ!時計見てみ」
香月さんがニカッと笑う
え?と思いつつ振り返り時計を見ると、さっき取り憑こうとしていた霊が
小さい侍の霊に斬られていた
「え?」
思わず声が出た。
すると侍は俺が視えていることに気づいてしまった。
『………これ以上喋ると変な奴に思われるぞ』
侍は呆れたように言い放って刀を鞘に収めた。
『積もる話は学校帰りだ』
そう言って香月さんの上に浮かびながら鎮座した。
「いろいろ話そうね☆」
ニコッと笑って手を振る香月さん。
釣られて俺も笑ったけど、多分戸惑いが溢れ出てたと思う。
小さい侍は長い髪を高めに束ねてるイメージ
見た目は小学生くらいで“幼い侍”