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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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俺が流河を守る〈沙入〉

 ったく。流河はヤバいやつに引っ掛かっちまったもんだぜ。


 まあ、俺のためってとこが流河らしいけど。




 流河とカイルの誓い。


 一方が破棄しただけでは消えはしない、二人の愛の誓い。



 (こと)()に宿る言霊(ことだま)



 もし、一方的に誓いを破棄したまま知らんぷりを決め込んだなら、いずれそいつは"言の葉"からの返り討ちに必ず遇う。


 言霊(ことだま)の見えざる力はそいつの裏切りを赦しはしない。


 "誓い"ともなればその言霊(ことだま)の霊力は至極。


 放置すれば(わざわい)が流河に降りかかる。


 だから流河はこのまま逃げることはできない。


 



 これを失効させるにはカイルの同意が必須。


 さて、どうすれば?



水籠(みごもり)、いいかげん俺の邪魔すんのやめろよ?」


 カイルが困ったちゃんを見るように、駄々っ子に言い含めるように、余裕かまして俺にのたまう。


 ふーん。簡単に退く気はねーんだ?

 マジ、面倒な男だな、おまえって。



「‥‥‥‥‥カイル、流河の優しさや責任感につけ込んだその汚ったねー誓いはさ、一回リセットしろよ。」


「‥‥‥‥‥‥汚い?」


「ああ、醜悪で見苦しい。反吐がでるぜ。おえぇ~」


「はん?ジェラシー丸出しのおまえの方が恥ずかしいだろ。」


 俺とカイルは睨み合う。


 ああ、俺はついつい煽って事態を悪化させてしまうというヘマ。


 落ち着け、俺。



「何で流河が男だって判った今も流河に執着する?理由あんだろ?」


水籠(みごもり)には関係無いって今日は何回も言ってるぜ?」


「流河は俺の親友で俺が今認めてる唯一のバンドメンバーだ。関係ねーわけねーだろ!」


「‥‥‥‥‥‥それだけじゃないだろ?水籠(みごもり)にとっての流河。」


「‥‥‥‥‥‥‥」


「言えないのか?それじゃ話になんないな。せっかく二人だけで話してるのに。‥‥‥‥‥水籠(みごもり)が本心を語れないのなら俺も本心は語れない。だが、おまえが本心を語るのなら俺も本心を語る。神に誓って。」



 カイルが赤い石で飾られたロザリオのネックレスをポケットから出した。



「‥‥‥‥‥‥神に誓って?」


「ああ、このロザリオに誓う。」


「‥‥‥‥‥‥」


 この目。


 挑戦的な目。


 絡みつく俺とカイルの視線。


 こいつ、マジ。



「好きなんだろ?流河が。」



 既に見透してるかの如くの憎たらしいしたり顔ひっさげ、顎を上げた下目で俺を見る。


 はーん。上等じゃん。



「‥‥‥‥‥‥今俺が守るべき一番は流河だ。で、おまえが流河に執着する訳を言え。」


「俺は俺が愛すべき人を渇望してる。俺の気持ちを受けとめる誰か。それが流河だったってことさ。それは誰でもいいってわけじゃない。俺が認めたのは水籠(みごもり)と同じく流河だったってこと。」


「‥‥‥‥‥‥‥で、なんでそれを男ってわかった流河に向ける?煩悩野郎。」


「俺は流河にインスピレーション感じてる。水籠(みごもり)だってそうだろ?」


「俺は流河の嫌がること無理やりにする気ねーよ。それに、流河は今日限りもうルキアにはならない。だからおまえは他で相手見つけろよ。おまえだったらちょとニコッてすればホイホイ来んだろ?どーせ。」


「‥‥‥‥‥誰でもいいわけじゃないって言ったよな?俺。」


「だからって嫌がる流河におまえの煩悩注がれてもよ?困んだよ。おまえだって流河が嫌がってんのわかんだろ?解放してやれよ、いい加減。」


「‥‥‥‥‥‥流河だってその内俺のこと好きになるはずだ。」


「じゃ、流河は今、おまえのこと好きじゃねーってことわかってんじゃん。だったらそんな邪道な誓いは棄てろよ。そんな一方的な人の弱みと引き換えの誓いなんて虚し過ぎだろ。」


 はっきり言い過ぎた?俺。


 カイルの顔色、変わった。


 だからって俺は俺に楯突くおまえに容赦はしない。


 不本意なままの流河を汚いやり方で縛ったおまえにはな!



「愛の誓いってのは愛し合ってる同士でするもんだろーが。」



 流河は俺を守るために好きでも何でもないこいつと契った。


 今度は‥‥‥‥‥俺が流河を守る。


 こいつにはっきり言う。



「もしこの先流河がおまえを好きになったのならそん時こそ神にだろうが仏にだろうが夜空のお星様にだろうが二人で誓えばいい。それが純粋な美しい言霊じゃねーか!」



「‥‥‥‥‥ふーん。俺がこの流河と交わした誓いを白紙に戻したら水籠(みごもり)はどうする?速攻流河はいただきってか?学校でもここでもほとんど一緒に過ごしてんだろ?」


「だから‥‥‥‥‥‥流河はノーマルだぜ?俺は流河に無理やり何かしようだなんてこれっぽちも思ってねーよ。」


 もともと流河の心は俺にあるしな。



「‥‥‥‥‥‥そんなに俺にこの誓いを壊して欲しいんだ?」


「それが自然だろ?お前ら愛し合ってるわけじゃねーじゃん。」


「‥‥‥‥‥だったら条件がある。それを水籠(みごもり)が飲んだらこの誓いは俺も白紙に戻す。」



 条件?


 ああー、そうか!こいつは最初からこれ、用意してたってわけね。


 うだうだとまわりくどいことさせやがって!



「‥‥‥‥‥‥言え。」


「俺をおまえのバンドに入れること。それが条件だ。」


「‥‥‥‥‥‥え?」


「俺に誓いを破棄させたいんだろ?別にいいんだぜ?どっちでも。おまえがノーだと言えば俺はこのまま流河と付き合うだけだから。」



 くっそ!どっちにしろカイルは流河から離れる気ねーじゃん!


 最悪の二者択一。


 俺の選択は‥‥‥‥‥‥





「‥‥‥‥‥‥‥くっそ!おまえ楽器何か出来んのか?」


「今から始める。」


「‥‥‥‥‥‥俺がリーダーで俺の言うことは絶対だ。いいか?マジで練習しねーならすぐクビにするぜ?後、マジでセンス無かった場合もな。」


「OK。じゃ、よろ。水籠(みごもり)。これで俺たち契約成立。」



 くっ!カイルのしたり顔が憎々しい。



 油断ならない、こいつ。


 ロメルと双子なのにロメルとは全然違う。


 方や夢見るお姫様、方やトリッキーな王子様ってか?はん。 




「いいか?流河は相手を自分で選ぶ。二度と弱みにつけこむな。力ずくはもちろん禁止だ。まずは俺たちの信頼を勝ち取ってみせろ。それまで仮加入だ。それからだぜ?わかってんな?」



「‥‥‥‥‥ったく、いきなり厳しいぜ?水籠(みごもり)。」




 ‥‥‥‥どうなんの?これ。


 新しい‥‥‥‥仲間?とは言えねーけど。



「カイル手のひら見せろ。」


「?」


 カイルが両手のひらを俺の目の前にかざした。


 俺はそれにハイタッチ。


「手、でけーし、指も長い。お前ベースな。あとさ、おまえ爪長げーぞ。即刻切っとけよ。」



 カイルが微妙な顔してっけど、知るか!


 バンド内で俺の言うことは絶対だ。



 とりあえずそーゆーことで。





 バンド仮加入と引き換えに流河とカイルの誓いを消した。


 それにしてもよ、ずいぶんと高くついちまったじゃねーか。


 流河にも軽々しい誓いを二度としねーようにきつく言っておかねーとな!






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