俺は変わらない〈カイル〉
「ルキアのカッコじゃやりにくいよな。まるで女の子ボコるみたいで。今、元に戻って来るからさ、ちょっと待ってて。」
潤んだ瞳のままルキアが席を立った。
「そのままでいい。」
俺もテーブルから離れ、ルキアの前に立つ。
「カイル!流河だって悪気があっておまえを欺いたわけじゃんねーんだ。そこんとこ考慮してくれよ。」
奥側の俺たちの横の席で黙って座って聞いてた水籠が俺に酌量するようにたれてきやがった。
マジ邪魔。
水籠。
「俺、ルキアに言っときたいことあるんだけど。二人だけで。」
「沙入、出ててくれ。やっぱ誰かがいたら思い切りボコりにくいよな?」
「‥‥‥‥そうかもしんねーけど‥‥‥‥カイル、許してやってくれよ。頼む!」
水籠が俺に哀願してる。
ははん。ちょっと、気分いいな?
水籠の弱みはルキアで親友の流河。
「水籠は出ててくれないか?俺がいいというまで。そんなにはかからない。30分以内で済ます。」
「‥‥‥‥‥‥お手柔らかに頼むぜ?ケガさせんなよ。」
水籠はルキアの肩を、一回叩いてから出て行った。
視線を一瞬交わすルキアと水籠。
カラン、とドアが開き閉まった。
緊張の面持ちで立ってるルキア。
「ルキア。これが済んだら素顔を見せてくれ。」
「‥‥‥‥‥‥わかった。」
「‥‥‥‥‥‥心の準備はいいのか?」
俺は確認する。
「‥‥‥‥‥‥おう。どっからでもかかってこい。俺は抵抗しねーから。」
「‥‥‥‥今の言葉、もらったぜ?」
緊張の表情のルキア。
俺は思い切り‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥ルキアを抱き締めた。
俺はルキアの顔を見て言う。
「マジ、会いたかった。この二日間が一年に感じるほど。」
「‥‥‥‥‥‥はっ?」
ルキアはルキアだ。
今だって前に会った時よりももっと綺麗に見えるくらいだ。
男だったってのは確かに残念だった。
フィジカル的に。
この先、その事で不都合が出てくるだろうけど、その時はその時。
今は何も問題ないだろ?
ようやく見つけた美しい君を放すなんて今はあり得ない。
そんな涙不要だ、ルキア。
潤んだ瞳の君も素敵だけれど‥‥‥‥‥
「俺たちの誓いは変わらないって言っただろ?ルキアの隠し事を知ったとしても。」
「ばっ、ばか言うなよ!俺はほんとは女じゃねーんだ!今日でルキアは終わりなんだ!」
「‥‥‥‥わかった。じゃあ、流河。おまえ、言ったよな?あの日の俺とルキアの誓い。俺が本当のルキアを知って、それでもいいならそうするって。流河はさっきほんとのこと俺に言ったんだろ?俺はルキアが流河だったとしてもかまわない。」
「‥‥‥‥‥確かに言ったけど、それはカイルがルキアは男だって知ったらもち、取り消すだろうって思ったから‥‥‥‥‥」
「俺は知っても誓いは変わらないって言ったはずだ。それとも流河は誓いを破るのか?」
「‥‥‥‥‥そっ、そういうんじゃないけど‥‥‥‥でもさ‥‥‥」
「‥‥‥‥‥俺が嫌い?俺の秘密を知って嫌になった?」
「いっ、いや、そーゆー問題じゃないからさ。」
「‥‥‥‥‥さっき、抵抗しないって言ったよな?流河。」
「そっ、そっ、それはボコられについてのことであってさ、‥‥‥‥‥わかってんだろ?」
「‥‥‥‥‥‥流河、俺は誓いを守ってロメルにもちゃんと話した。もちろん流河も誓いを守ってくれるよな?」
俺は流河に再び誓いの再現を迫った。
「まっ、待ってくれよっ、カイル、俺‥‥‥‥‥‥」
うつむいて避ける流河。
だが俺は抱き締めた腕を緩めはしない。
カランカラン。
ドアが開く。
「わっり、俺ケータイ置きっぱなしで行っちまっ‥‥‥‥‥‥‥‥えっ?」
水籠だ。
なんで、これからって時に限ってこいつはまたもや。
「‥‥‥‥おまえ‥‥‥流河に何してやがる?」
流河を抱き締める俺にガンつけてきた。
「水籠には関係ない。」
「関係ねーことねーんだよ!」
水籠が声を荒げる。
「流河も、一体どういうつもりだっ?」
「ちっ、違うってば‥‥‥自分はどういうつもりも無かったんだけど‥‥‥‥‥」
これではまるで最初と同じ。
「カイル!流河を放せっ!それに、流河がいつまでもルキアのカッコしてっから余計カイルがこんなんなっちゃってんじゃんか。早く元に戻ってこい、流河!」
「う"っ!」
水籠が俺の足を思いっきりかかとで踏んずけてきた。
俺の腕が緩んだ隙に流河がさっと抜け出した。
俺は水籠のパーカの胸ぐらを掴む。
その俺の手首を掴みながら水籠はせせら笑う。
「おまえもルキアの元の姿を見れば気が変わんだろ?多分。」
水籠。
おまえに俺の気持ちは解りはしない。
俺にはロメルに代わる愛すべき存在が必要だ。
俺の心を引きつけた美少女ルキア。
ルキアが流河だというのなら
それは、今は流河以外には考えられないんだ。




