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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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運命の人〈カイル〉

 ルキアは自分は男だと言った。


 さっきまでと声が違う。


 そういえば、話し方が女の子にしては乱暴だと思っていたけど、服装もボーイッシュだったし、そういうスタイルをとっている子かと思っていた。


「俺は池中流河。男。青豆中2年。沙入の親友で沙入とバンド結成目指してる。ボーカリストとして。ここが空いてる時、使わせてもらって練習してんだ。」


 おずおずと話し始めたルキア。


 俺はテーブルの向かい側に座ってるルキアの顔をまじまじと見る。


 この美少女が男?‥‥‥‥‥‥確かに声も、手袋のないその指も‥‥‥‥‥‥そうなのか‥‥‥‥‥?



「‥‥‥‥‥‥‥‥」



 俺は黙ってルキアの話を聞いている。



 クリスマスイブに起こった出来事の真相を語るルキアの綺麗な顔を見つめながら。


 俺はあの日に偶然ルキアを見かけて自分でも自覚がないまま恋に落ちていた。

 無自覚の内にルキアに目と心を奪われていた。



 お互いの兄姉同士が付き合っている縁によりルキアと二葉はつながっていたとルキアが言った。



 なんだよ?二葉はルキアが流河で男って知ってたんじゃんか。っていうか、二葉がこの騒動の元凶だろ。俺は2日前の二葉とのメッセージのやり取りを素早く確認してみる。



『ルキアちゃんは私のお兄ちゃんの知り合いのきょうだい。ルキアちゃんは沙入くんを知ってるけど、沙入くんはルキアちゃんを知らないんじゃないかな。知らんけど。じゃ、バーイ。』



 確かにその通りだったようだけど、何か微妙に引っ掛かる。

 ルキアがほんとは男だってわざわざ俺に教える必要はなかったのかもしれないけど。


 二葉はあの時は寝てしまっていたようだからこの件に関しては直接的にはほぼ関係はないんだろう‥‥‥‥‥‥




 ルキアの話は続いてる。



「俺、沙入がケガさせられんじゃないかって心配だったんだ。ギターが弾けなくなったらって。それに、俺が迂闊に沙入に抱きついたことで誤解させしちまって、そんでロメルが傷ついたって思ったらさ‥‥‥‥何とかしたかったんだ。」



 ルキアは俺との待ち合わせに現れた理由を言った。


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


 ルキアが水籠(みごもり)とロメルに罪悪感を抱いてたことはわかってる。


 俺はそれを利用してルキアと‥‥‥‥‥‥‥‥‥ルキアと誓いをした。


 ルキアは俺のこと好きになってはいないってわかってる。


 それでも俺は構わない。

 とりあえずルキアを俺に縛っておくことができてれば。


 だって俺はそれほどにルキアに惹かれてしまっているんだから。

 少しづつ俺を知って好きになってくれればいい。

 そう思った。



「カイルにとって見も知らない俺が会うより、誤解を作り出したルキアが直接説明した方がわかってもらえると思ったんだ。」



 黙ってルキアを見つめてる俺の目を、見たりそらしたりしながらルキアは一生懸命話してる。



 いいんだ。


 水籠(みごもり)じゃなくてルキアが来てくれたことは俺にとって、運命的なことだった。





 俺の運命の人はロメル。そう思ってた。


 というか、そういうことにしておきたかった俺がいた。



 俺は偶然に同じ時に生まれた男と女の俺たちは、お互いが神よってすでに結ばれるべく運命づけられた相手だと、出会うべくして生まれたんだって、ある時から思い込もうとし始めた。


 あの時から。あの夏の日から。


 そうすればもし禁忌に触れたとしても罪悪感を感じなくてすむから。



 小さなころは俺とほぼ同じだと思ってた。ロメルのこと。


 だって双子だったから。俺たち。


 なのに‥‥‥あの夏の日、ロメルから流れ出てた赤い液体。俺にも起こる体の変化。


 ロメルと俺。


 次第に男女の差違を見せ始めたことに俺は戸惑いと共に好奇心も抱いていた。


 異性への興味。


 俺のそんな気持ちは身近にいた、誰よりも綺麗なロメルにだけ向いていた。


 だって仕方ないだろ?ロメル以上の女の子なんて他に見たことなかったんだから。


 一緒に住んでるんだぜ?


 誰よりも俺を理解してくれてる仲良しの優しくて可愛い同級生の女の子がさ。


 だから俺はいつかは禁忌を破ることになるのはやむを得ないかも知れないって思ってた。


 "それは運命だから起こってしまっても仕方が無い"っていう言い訳も理論上出来てたし。


 でも、そんなことになったら以降、俺はロメルから忌み嫌われ、結局はロメルを失うことになるのは知っていた。


 ロメルは俺を運命の相手だなんて思ってないし俺のこと一人の男として見てないから。今までだって、多分これからだって。



 運命の相手だって思ってるのは俺だけ。


 わかってた。ほんとはずっと前から。頭の隅っこの方で。 


 俺が勝手にロメルを神が決めた運命の相手だと思い込もうとしてるだけだって。本当はそうじゃないってことも。


 ロメルを一人の女の子として想う対象にするなんて、ずいぶん不毛なことだって。




 そんな中で、俺はルキアを見つけた。


 彼女こそ俺の運命の人。


 俺がはばかることなく愛することが出来る女の子。


 ロメルとはまた違う美しさを持つルキア。


 清純な可愛いロメルとは正反対の子。


 魅惑的フェイス。整った輪郭に切れ長の麗しい瞳。そのくちびるは(つや)やかな果実。どうもにも誘われてしまう。なのに全体のスタイルはキリリとしていて決して媚びてるわけじゃない。


 ルキアと二人きりになったらさすがの俺だってついイケないこと‥‥‥‥‥



 それが、実は男だったって。




「ほんとにごめん。カイル。悪気はなかったんだ。カイルを騙そうなんて思ってたわけじゃないんだ。」



 テーブルの向こうでルキアが苦悶の表情を見せている。



 俺は俺の目の前で身の置き所が無さそうに座ってるルキアをじっと見つめる。


 俺の強い視線を感じてルキアは顔を上げるがまたすぐにうつ向く、を繰り返す。



「‥‥‥‥カイル、マジごめん。俺、カイルが俺に迫ってくるなんて思わなかったんだ。俺、カイルと付き合って誓いをすれば沙入とロメルへの多少のフォローになるんじゃないかって、そのことばっか考えちゃって、安易な方に行っちゃって‥‥‥‥‥‥それが今度はカイルを傷つけることになんのに気づかなくって‥‥‥‥‥俺、マジ、サイテーだよな‥‥‥‥‥‥」



 ルキアの目から涙が流れ出した。


 雫がテーブルに落ちてポトリと音がした。


「‥‥‥‥いいんだぜ?俺のこと好きにしてくれよ。ボコられても仕方ねーってわかってる。」



 ルキアが覚悟を決めたように真っ直ぐ俺を見た。











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