A love triangle 〈流河〉
今日は大晦日。
俺は朝、6時に起きて軽くジョグ。
まだ暗い中走りだした。冷たい風が心地いい。
次第に夜が明けてくる。
今日はちょっとばかし、緊張してる。
俺の女子姿、ルキアのせいで起きたっていうか起こした一連の事故について沙入とカイルに説明しなきゃなんない。
まずは午前中は沙入に。午後にはカイルが来る。そんで俺たちの誓いのこともけりつけないとまずい。
カイル、俺が男だったって知ったらどうなんの?
激おこ?俺ボコられる?
自分がまいた種だからしゃーないか。甘んじて受けるしかない‥‥‥‥‥‥よな。
俺は朝飯を食い終わった後、早速準備を始める。
友だちのコスプレに使うと言って借りておいたマナカのメイク道具。さらにクレンジングオイルとタオル、偽物のロングヘアとヘアピンと帽子を一つの紙袋に入詰め込む。
俺の変身アイテム一式。
9時半になって俺はいつものボディバッグをひっさげ、変身アイテムを詰め込んだバッグを持ち沙入が待つアウトサイダーに向かった。
俺は沙入に、俺がルキアだってバレちゃったけど、ある意味ほっとしてる。
沙入はルキアからの連絡をずっと待ってたの知ってる。
でも、俺にはそんなこと出来はしない。
沙入を苦しめてるとわかってんだから俺だって苦しかった。
あの日以来二日間沙入に会っていない。
今日の日時の打ち合わせ以外のメッセージの交換もしてない。
あの日、カイルと別れた後、沙入と二人になった。
沙入はあの時俺が正体を明かさず沙入とアレしたこと責めてきたけど、俺だって好きで沙入としたわけじゃない。
沙入だって好きな女の子にしか見せることない隠された一面を俺に見せちまって傷ついんだろう。
俺だってその点ではすっごく悪かったと思ってる。
俺を責める沙入の顔は見たこと無いくらいシリアスで‥‥‥‥‥‥‥
俺は必死で謝った。
そしたら‥‥‥‥‥‥なんだよ?あれ!
いきなり俺を抱き締めて、そんでまたもやしてくるなんて!
ったく、何考えてんだよ。ふざけやがって。
「‥‥‥ふんっ、俺を騙してた仕返し。」
そうひとこと言ってさっさと先に歩いてく沙入。
結局、方向が別れるとこまで来ると俺をちらりと振り返って
「じゃあな。」
あっさりと行ってしまった。
俺はめっちゃびっくりして焦って、ドッキンドッキン心臓の音がなかなかおさまんでいたっていうのに。
何だったんだよ?アレ。
何の意味あんの?
俺はその時の事を思い出しながら沙入のいるアウトサイダーまで向かった。
ドアの手前まで行くと沙入のギターの音が聞こえて来た。
沙入がいる。
俺の心臓が存在を主張し始める。
落ち着け、俺。
「おはよ。」
俺は自然に振る舞うよう心がける。いつものように。
「よお。」
沙入はいつも通りだ。
俺はちょっと緊張がほぐれる。
沙入はギターをおいた。
「カウンターん中で話そうぜ。飲み物も菓子もすぐ取れるし。」
沙入は調理台に飲みかけの自分のグラスを置いて、俺の分もグラスを出して氷とスパークリングウォーターを注いだ。客に出すと一盛り800円のポテチを間に置く。
俺たちは手狭なカウンター内で足の長い折り畳み椅子を二つ並べた。
「‥‥‥‥で、詳しく言ってみて。女の子になって俺の前に現れるまでのこと。」
俺は二葉さん兄妹との自宅でのクリスマスパーティーで、二葉さんと俺がマナカのヘアメイクにより変身したこと。二葉さんを家に送るのにメイクしたまま家を出たことから話し始めた。
「ったく。くだらねぇ‥‥‥‥‥‥」
「はぁ?あれ、二葉って子だったのかよ?」
沙入はたまに眉間をしかめ、舌打ちしたりしながら聞いていた。
「で、変態オヤジから逃げて偶然俺とまた会ったわけ?」
「まあな。」
「で、俺に口説かれた感想は‥‥‥‥?」
沙入が俺に向かってにこりとした。
‥‥‥‥‥これって沙入が怒ってる時。
「‥‥‥‥‥‥そっ、それは‥‥‥」
「それは?」
「‥‥‥‥‥‥俺にはそーゆーの出来ねーなーって‥‥‥‥沙入、ませガキじゃん?」
「‥‥‥‥‥‥‥ったく。余計なお世話だぜ?で、俺とのキスはどうだった?」
沙入はますます微笑む。
「ぶっ!‥‥‥‥‥それ、改めて聞くのかよ?」
俺は飲みかけてたグラスを慌てて置いた。
「是非とも聞きたいぜ?おれの全力注いだやつだから。」
「お、俺っ、全力注がれてたの?!」
沙入の笑みがふっと消えた。
「‥‥‥‥‥そういうこと。覚えとけよ、流河。」
「‥‥‥‥‥お?‥‥‥おう。」
なんだ?沙入の顔‥‥‥‥‥?
「で、次何した?」
「それは‥‥‥‥‥‥‥ロメルに会いに行ってさ‥‥‥‥‥?」
俺はロメルと沙入を仲直りさせたくて、たとえそれが無理だったとしても、ロメルの心が傷つくのを最小限におさめるため、沙入の無罪をわかってもらいたいがため、二葉さんの手引きにより、二葉さんとロメルのスイーツパーティーに偶然を装って5分ほど加わった時の話をした。
「‥‥‥‥‥‥流河って、ほんと‥‥‥‥‥哀れをさそう苦労性だな。」
「なっ、なんだよ!俺は必死でさ、責任感じて‥‥‥‥‥」
「そんなこと、流河のせいじゃねーって、バカだな、おまえって。相変わらず。」
犬のクソをうっかり踏んじまったマジ情けないやつを見るような目で沙入が俺を見てる。くっそ。
「で、次な。何でカイルと会ってた?」
「それは、カイルが沙入に会いたいって伝たどって二葉さんに聞いて来たらしくて、二葉さんから俺にそれ来てさ、そんで俺‥‥‥‥‥」
俺は沙入がカイルにボコられるのは必至だと思ったからカイルには沙入が行くということにしておき、代わりに俺が行ったこと。誤解を解こうとルキアになってカイルに会ったことを話した。
「ふーん。だからあん時カイルが俺にビビって逃げたの潜んでただのぬかしてきたのか。」
「わりぃ。まさかあそこで沙入と鉢合わせするなんて思わねーじゃん。」
「‥‥‥‥‥‥‥で、カイルとの誓いって、アレ何?」
沙入から嫌悪がにじみでている。
だよな。勝手に俺にかばわれてカイルにはチキン呼ばわりされて。
俺は結局いつも沙入に負担かけてる。そんなつもりねーのに‥‥‥‥ごめん、沙入。




