自省〈沙入〉
えっ?
今、なんて言った?
カイルがルキアと交わした誓い。
ルキアがカイルとくちびるを重ねてした誓い。
それが‥‥‥‥‥‥
『水籠に報復しない。』
「‥‥‥‥‥‥何だって‥‥‥‥‥‥それ‥‥‥‥‥‥」
流河。
おまえって。
何なんだよ?
どうして‥‥‥‥‥‥‥?
「‥‥‥‥‥‥流河、おまえ‥‥‥‥何やってんの?‥‥‥‥‥マジおまえバカだろ‥‥‥‥‥‥‥それって‥‥‥‥‥俺のため?」
俺は一気に脱力した。
ああ、まただよ。俺。
流河のすること、一部分だけ見て誤解して、でもほんとはそんなんじゃなくて‥‥‥‥‥
一人で疑心暗鬼に陥って流河を疑って、でもほんとはそんなんじゃなくて。
流河はいつだって空気読めねー鈍感なやつで、裏で何か上手く出来るやつじゃなくて。
単純でぶっきらぼうで、不器用で、そのくせけっこー人に気ぃ使ってたりする。気がよくて、優しくて、マジいいやつで。こんな俺のこと慕ってくれてんのに。
知ってる。
流河はいつだって俺のことリスペクトしてくれるって。
俺ときたら‥‥‥‥‥‥サイテー。
自分中心にしか考えられねー思考回路。
俺は両膝に手を置いて下を向いた。
だってそうしなきゃ、立ってらんない。
それに‥‥‥‥‥‥
今の顔、誰にも見られたくねーしな。
「水籠、おまえ、ルキアが俺の彼女になってたことが悔しいんだろ?」
カイルが俺を煽る。
バーカ。ちげーよ。
ルキアの心は、流河の心はこっちにあんだ。カイル。
俺のもとに。
俺は顔だけやっと上げてカイルを見る。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥おい、カイル。」
「何だよ?」
「カイル‥‥‥‥‥‥今日はもうこのまま帰れ。」
「帰れって‥‥‥‥?ルキアを泣かせたおまえをこのままにして帰れるわけないだろっ!おまえルキアに何した?なんで泣いてる?」
カイルもある意味ルキアの被害者とも言える。俺もだけど。
流河に説明責任がある。
でも、今は心を落ち着かせるための時間が必要だ。
カイルに、今いきなり本当のことを教えたら余計に事態が混乱するだろう。
それに、俺は肝心なことをまだ流河に聞いていないんだ。カイルが急に現れたせいで。
「‥‥‥‥‥‥訳は‥‥‥近い内に直接お前に話すと約束する。それでいいだろ?」
俺はようやく体を起こした。
「ルキア、水籠に何か言われたのか?その涙は何でだ?」
カイルはルキアになってる流河を俺から守ろうとしてる。
ああ、こいつまだ彼氏のつもりでいるんだもんな。
「‥‥‥‥‥‥ごめん。でも騙そうとしたわけじゃ‥‥‥‥」
流河はカイルに言って目をそらした。
流河の冷たい態度にカイルが傷ついた顔になった。
「俺とルキアの誓いはここにあるんだぜ?今さら取り消すなんて許されない!」
カイルはルキアにガチで恋してる。
「‥‥‥‥‥分かってる。もし、カイルが本当のルキアを知って、それでもいいってんならそうする。確かに誓ったし。でも、たぶん‥‥‥‥‥そっちから取り消すだろうな。」
‥‥‥‥‥流河?
おまえ、今、それ何言ったか分かってんの?
約束を守ろうとする気持ちはわかるけど、その言い方だと。
「何言ってんだ。そんなことあるわけないだろ!」
カイルはルキアの姿の流河に腕を伸ばす。
させるかっ!
俺はすかさず間に入り込む。
これ以上流河におかしなことはさせない。
俺のために。
もう二度とそんなことは。
「流河に触んな。それに流河、そんな誓いで俺を護ってくれなんて、俺一言も頼んでねーし。‥‥‥‥さあ、帰るぞ。」
俺と流河はバディだ。対等だ。流河の犠牲で護られるなんてごめんだ。
「‥‥‥‥カイル。後で‥‥‥‥‥‥今日か明日、必ず連絡する。だから今は黙って帰ってくれ。」
俺は頭を下げた。
この場は何とか収めなければ。
このおかしなつながりで絡まってしまった俺たち3人のために。
今はプライドなど関係ない。
「だったら条件がある。」
カイルが流河と帰ろうとしてる俺を牽制した。




