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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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確定〈沙入〉

 俺はルキアをここでで待つこと三日めだ。


 流河の疑惑に心を掻き乱されたあの日から俺は毎日夕方5時半ごろにここに立っている。


 俺がルキアと恋をした場所に。



 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ‥‥‥‥‥



 誰かの足音。 


 小道のカーブの向こう側から。


 突然足音が止まる。



 俺は外灯に寄りかかったまま首だけそちらに向けた。



 ‥‥‥‥‥‥‥ルキア。



 本当はもう現れないって思ってた。だけど、俺はここにこうして来ずにはいられなかった。


 流河に直接問いただす前のセレモニーとして。



「‥‥‥‥‥‥ルキア、待ってた。ずっと。」



 外灯のポールに寄りかかったまま俺はルキアに言う。



「あの日と同じ時間にここに来ればもしかして会えるかもって。あれから毎日来てた、俺。ここ、俺たちの想い出の場所。」



 俺はあの時の流河の気持ちが知りたい。


 どういうつもりだったのか。



「ルキア、話がある。」



 俺はすごく緊張してる。確定させるの怖れてる。


 でも。



「‥‥‥‥‥なあ、そのスニーカー。」



 俺はかなり努めて切り出す。


 ルキアの表情の変化をじっと見ながら。



「俺の知ってる男と全く一緒。お揃いだぜ?」



 ルキアは黙ったまま相当狼狽してる。


 俺はは寄りかかったポールから背を起こしてルキアに向き合う。



「考えられることは3つ。1つ‥‥‥‥‥超偶然に流河とルキアはナイキの同じシリーズ同じ色のスニーカーを買って、超偶然に同じシューレースを選んで、超偶然に独特の同じ紐の通し方をした。」



 俺はルキアに近づきながら言う。



「2つ‥‥‥‥‥ルキアと流河は前から付き合ってて、おそろで揃えてた。」



 ‥‥‥‥‥‥俺はルキアの目を捕らえる。



 そして、今、確定の時。


 俺の胃の辺にズンっと落ち込んだような痛みが来たが、俺は構わずルキアの左手を不意に掴んだ。



「そんで、3つ目、‥‥‥‥‥‥‥‥」



 俺はルキアの手袋を引き剥がす。



「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」



 ルキアは指先を隠すように手を握って下を向いた。



 俺はルキアの手首をひねり上げてひらかせる。



 ‥‥‥‥‥‥ああ、これでもう。



 わずかに残された否定する要素さえ消えてしまった。


 ルキアは流河じゃないって言えるわずかな可能性が。




 これは流河の手。


 ギター初心者の手。


 俺の知ってる流河の手。



 遂に俺は確定させてしまった。



「‥‥‥‥‥‥‥どういうことだよ?流河。」



 俺に左手首を掴まれたまま、ルキアの姿の流河の目から涙がこぼれた。



「‥‥‥‥‥‥‥‥ごめん、沙入。」


 何泣いてんの?


 愛しのルキアにやっと会えたってのに、俺、どうすりゃいいっての?



「‥‥‥‥‥‥‥‥なんで女の子になってた?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


「‥‥‥‥‥‥‥‥こういう女装趣味があったのかよ?」


「ちっ、ちげーよ!それはぜってー違うからっ!」


 むきになって流河が否定した。


「じゃあ、何で?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥これは‥‥‥クリスマスパーティーの時の余興だったんだ。そのままつい外に出ちまって‥‥‥‥‥二葉さんを家に送るついでにこの公園に寄った。そしたらナンパされて‥‥‥‥困ってたとこに沙入に助けられて。」



 なんだよそれ?くっだらねーことしてんなよ!

 お陰で俺は‥‥‥‥‥ 



「俺‥‥‥‥‥あの時、沙入が俺だって気づいてると思ったんだ!こんなカッコしてても沙入なら判ったんじゃないかって。だから助けてくれたんだって‥‥‥‥‥‥そう思ったんだ。でも、違ってて‥‥‥‥‥‥‥」



 俺はあの時流河だって気づいていなかった。


 でも、無意識に流河を感じていたのかもしれねーな。あの、シンパシー。



「‥‥‥‥‥‥‥‥で、今度は俺が流河をナンパしたってか?」


 俺は相変わらず綺麗なルキアを見ながら自分をせせら笑う。


 俺、本当は今だって『ずっと会いたかった‥‥‥』、そう言って抱き締めたいくらいだぜ?



「何でそん時、黙ってた?ほんとは流河だって。」


「言えるわけねーだろっ!あのシチュエーションで!俺だって、あれが俺だなんて誰にも知られたくなかったし、あの時はもう二度とこんなカッコする気さえなかったんだから!」



 じゃあ、今日はルキアの格好で何してたの?まさか男とデートでもってか?



「じゃあ、今日はなんでまた?」



 俺のことたらしこんで夢中にさせといて騙したまま後はシカトか?


 なんのフォローも無しで。


 そんで、今日はまたまた女の子の姿になって?


 あきれるぜ!


 お陰で俺は、俺は! 



 俺はルキアの顔をした流河の、掴んだままだった左手首を引っ張って俺に引き寄せた。

 キス寸前まで俺に引き寄せる。


 ずっと知りたかったことを今こそ流河に問う。


 なんで、俺にキスを許した?


 俺は無理やり女の子にキスしたことなんてない。


 俺とあんなキスをしておいて、よく平気な顔してまた俺とギターなんか弾けたもんだよな?流河に戻ってさ。


 俺、あれがルキアが俺の想いを受け取ってくれたものだと、俺とルキアの恋の始まりだと思ってたんだぜ?


 今だって、愛しいルキアが目の前にいるから‥‥‥‥俺は‥‥‥‥俺の心は流河に、ルキアに踏み荒らされてる。



「それに‥‥‥‥流河、何で俺の‥‥‥‥‥‥アレ、拒まなかったんだ?されるがままに受けやがって‥‥‥‥‥‥だか‥‥」



 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ‥‥‥‥




 誰かが走って来る。



「ルキアっ!俺、探して‥‥‥‥‥‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥‥、あっ!おまえっ!水籠(みごもり)じゃないかっ!何でっ?」



 何でこんな時にこんなとこにロメルのあんちゃんが? 

 ルキアを探してって‥‥‥‥‥?



 そうか!



 流河は今日はルキアの姿でこいつに会ってたんだ!


 何で?


 何つながりで?







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