文化祭翌日 沙入
俺と流河は昨日あの落花生高校の文化祭に行って来た。
そこで発覚した、"大好きなおねーちゃんに彼氏いたショック" で流河はあれから不機嫌が続いている。まあ、昨日よりは全然落ち着いてはきてるけど。
朝の教室。俺たちは二人、ベランダに出てちょい冷たい風の中、グラウンドを眺めながら話をしている。
校門から急ぎ足で向かってくる生徒がちらほら見える。
もしかして、今日は流河はねーちゃんの話しないかもしんねーって思った‥‥‥が。
いやいや、だからといって流河のねーちゃん話はエンドレス、ますますヒートアップしている。何でもマナカは家でも彼氏が出来ました宣言したそうだ。初めて彼氏が出来て浮かれているらしい。超ラブラブ状態だとー。
流河の愚痴は止まらない。
俺は流河をこんなことでうだうだ悩ませ続けさせたくはない。
こんなことさっさと決着つけてついでに早いとこ流河をシスコンから卒業させたい所だ。これっていい機会じゃん?そんでもってバンド結成について熱く語ろうぜ、流河。
「いいじゃん、そんなに家族にもオープンにしてるなら健全な付き合いって感じじゃん。」
「あたりまえだっつーの!マナカにおかしなことなんてさせっか!マナカを穢させはしねぇ。」
流河は一体どういうスタンスでねーちゃんのこと見てんだ?
「おまえ、マナカのとーちゃんみてーじゃん、それ。」
「そんなんじゃねーよ。」
「じゃあ、どんなんだよ?まさかおまえがねーちゃんの彼氏にでもなるつもりかよ?」
「ばっ、ばかヤロ!ちっ、ちげーよ!そんなんじゃねーから!俺は弟としてマナカにふさわしい奴と思えるやつじゃねーと認めないってこと。」
「ふーん。おまえ、その彼氏についてよく知らないくせに。ちらっと見ただけだろ?認めるも認めねーもないじゃん。そう思わねーのか?」
「‥‥‥‥‥詳しくは知らねーけどさ、普段のマナカの話によく出てきてたんだ。そいつの話。俺、思いだしたんだけどそいつ、同じ部の美少年にべたべたしてるってマナカ言ってた。」
「マジ?両方いけちゃってんのか。じゃあ、俺がさ、あのねーちゃんの彼氏のこと知ってる人からどんなやつなのか聞き込みしとく。他の目線からも見た方がよくわかんだろ?」
ああ、これで何となればいいが。
これで、流河があの彼氏のことわかって、んでもって納得すればシスコン脱却できるだろ。いつまでもねーちゃんにすがってんじゃねーよ!ねーちゃんがそいつで良ければそれでいいんだっての。
俺、急いでセーラー女子(スラリ)と段取りつけねーとな。
あの子、蛇ノ目ロメル。
キレイな俺好みの女の子。人目で気に入った。
薄茶色のウェービーの長い髪を地味に二つ結びにしたあの子。もしかしてハーフなのか?ぱっちりとした瞳にふっくらしたくちびる。スタイルよし。彼氏、いんのか?いや、そんなの関係ねえ。会ってみて性格も良ければ速攻で攻め落とす。
「誰だよ?あの男を知ってるやつって。」
「ちょい待ってろ。俺、昨日あの彼氏の妹の友達と伝作っといたから。そこが入口だ。」
「沙入いつの間に‥‥‥‥?」
「いいから。任せとけ!」
俺は話を終わらせた。
流河は昨日、きっと言い争いでカッカしてて蛇ノ目ロメルのことはほとんど目に入っていなかったはず。
もし、あのガチきれいな子に気づいて流河まで目を付けちまったらやばかったな。
まあ、こいつはねーちゃん命だから関係ねえかもしんないけど。
俺は早速セーラー女子(スラリ)にメッセージを送った。
今度の土曜日に会おうって。
放課後、その子から返事が来た。
よっしゃ!OKもらった!
俺がスマホを見ながら密かなるガッツポーズをしていたら流河が来た。
「おい、沙入、悪いけど俺、当分おまえと放課後は練習出来ないかも知んない。」
「!」
「週末の二人の合わせも出来ねーかも。」
「な、何突然言ってんの?」
「俺、決めたから。どう見たってあんな男見かけからしてマナカには似合わねーじゃん。俺、あいつら壊す!」
「何めちゃくちゃなこと言ってんの?人は見かけだけじゃねーぞ。」
こいつのトッププライオリティはやっぱねーちゃんだった!
俺だけじゃ、流河の歌が無きゃ話になんねーだろーが!
俺の‥‥‥バンド計画が‥‥‥‥‥遠ざかる‥‥‥‥‥‥
「俺、一人で考えたいことあっからさ、先に帰るぜ!悪りー、沙入。また、明日!」
俺は呆然と流河の後ろ姿を見送った。




