迷い〈沙入〉
店に一人残った俺はあの日のルキアのことを最初から思い返してみる。
俺はルキアを見かけて麻井から助けた。俺に抱きついて来たルキア。誤解して俺から去って行ったロメル。ルキアに惹かれていた俺。俺から逃げて行ったルキア。小道で再び出会った俺たち。ルキアを口説く俺。俺を受け入れたルキア。
俺のこと愛してるって去り際に叫んだルキア。それっきり‥‥‥‥‥‥。
流河とルキアの共通点は‥‥‥‥‥そう、帰る方向。あの時、帰り道って言ってた。電車使わず歩いて帰れる距離。
身長。ほぼ同じだ。
他には‥‥‥‥‥‥‥?
共通点を検証。
流河とルキア。
あれ?
Ruka = Ruka ?
流河とルキア。
全く同じスニーカー。
同じメーカー同じシリーズの同色スニーカーとカスタマイズされたシューレースと通し方。それだけでもほぼあり得ない。
意図していない限りは。
流河とルキア。
そういえば、一瞬流河の声かと錯覚した。
ルキアが何かで驚いて叫んだ時。あれ、何の時だっけ?
流河は物真似が得意だ。
小さいころから姉ちゃんと物真似遊びをしていて二人とも色んな声が出るって言ってた。
人前ではやらないって言って俺にもほんの少ししか聞かせてはくれてなかったけど、その中には女声もあった。
‥‥‥‥‥‥これって、もうほぼほぼそうだろ?
なぁ?ルキアは流河だったのか?
俺はスマホに流河の写真を表示する。
ちょっとエフェクトをかけてみる。
性転換エフェクトで女の子に変換。
メイクアップエフェクトで更に加工。
‥‥‥‥‥‥‥これって、ほぼルキア。
‥‥‥‥‥‥マジ?
いや、これだけでは‥‥‥‥‥言い切る事はできない。
ほんの少し、まだ残された否定できる可能性を俺は求めてる。
流河を問い詰める?
まだだ。
100%流河だって決まったわけじゃない。
実際にまたルキアに会って確かめる。
俺はルキアに会える可能性のあるあの場所へ、あの時間に。ルキアが俺の想いを受け取ってくれたあの想い出の場所に行ってみよう。
今日から冬休みの間は毎日。
それでも会えなかった時は‥‥‥‥‥‥流河に問うしかない。
でも、何で?流河が女の子に?何のため?
何で女の子になって俺の前に現れんの?
俺をからかうため?
いや、違う。
俺があの日あの場所でロメルと約束してること、流河が知るはずない。
あの約束だってロメルの都合によって待ち合わせ場所も時刻も二転三転していた。
それにルキアを助けたのは俺の方から。俺が勝手に助けた。
その後ルキアは俺から逃げてる。
でも、その後、帰り道で偶然再び出会った俺たち。
帰り道が同じ方向だったのは必然。ルキアが流河ならば。
そして、あの外灯に照らされながら俺たちは‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
俺、あの時ルキアになぜかシンパシーを感じて。
ルキアは俺と一緒にいる運命なんだって、俺たちこそ赤い糸で結ばれてんじゃないかって、柄にも無いこと思っちまって。
俺はマジでルキアに惚れてルキアにキスした。しつこいくらいに。
ルキアだって、拒んだりしなかった。
『沙入っ、マジ、愛してるっ!』
言ったよな。おまえ。
それが流河だったとしたら?
俺だって流河を愛してるさ。親友として。
でも、あのキスを交わしたのが流河だったのなら、俺は‥‥‥‥‥‥あの時は親友として愛してたわけじゃない。
俺はマジで流河を求めていたことになる。
どうなんだよ?この事実。
どう受け止めればいいんだっつーの。
俺のこの気持ちを確かめるためにもルキアに会いたい。
たとえそれが流河だったとしても。
そして、それが確定した時、俺は?
わからない。
俺はどうするか、どうなるかなんて。
自分で自分の気持ちがはっきりわからない。
その時を迎えなければ。
俺の心をこんなに引っ掻きまわしやがって!
流河‥‥‥‥‥‥‥‥‥




