イケメン兄貴〈流河〉
いっけねー、俺は約束の公園の噴水前に時間よりちょっと前に着いたんだけど‥‥‥‥。
本当はもっと早く来ようと思ってたんだけど、身支度にちょっといつもより時間かかっちゃって。
俺、そういえばロメルの兄貴のカイルってやつの顔知らなかったんだ。
会ったことねーじゃん。
あっちは沙入が来ると思ってるから俺の方から声をかけなきゃいけねーってのに、なんてお間抜けなんだよ、俺って。
ロメルの双子の兄貴て言うならロメルに似てんだろ?たぶん見ればわかんだろ?ロメルが男になったような男子って、どんなだろう?
優しげなソフトな雰囲気を漂わせたアイドルタレントみたいなイケメン?
俺はきょろきょろ辺りを見回した。
だが、ロメルに似た男はいない。
ふと、噴水池の縁に座っている男に目が行った。俺とタメくらい?いやもっと上かな?
なにやら遠い空を見上げて黄昏れているようだ。
空はもう真っ暗で星が出ているけど、ここは外灯と噴水を照らすライトで明るいから、人の顔は良く見える。
ハーフだな。この人。テレビで見かける人気俳優みたいにカッコいい。
うらやましいぜ。
こんなルックスのやつがバンドのメンバーに入ってくれたら人気出そうだよな‥‥‥‥‥
そんなことより‥‥‥‥‥困ったな。ロメルの兄貴って‥‥‥‥‥もしかしてまだ来てねーのか?
俺は辺りを見回したが、ロメルに似ている男なんてやっぱりいない。
あ、ロメルはハーフだったな。そういえば。あんまり意識はしてなかったけど。
ん?
ってことは‥‥‥‥‥この噴水池の縁に座ってるハーフイケメンにーちゃんはもしや、ロメルの双子の兄貴って可能性が。
でも、似てはいないよなぁ‥‥‥‥‥うーん?
いっけね。目が合っちまったぜ!
じろじろ見すぎた!
あれ?この人、髪の色、質感ロメルと同じだ。
目が合っちまったんだ。ついでに聞いてみよう。
「あの‥‥‥‥‥失礼ですが、もしかして蛇ノ目さんですか?」
俺は今、ルキアの姿になっている。
本当はこんなカッコは二度としないつもりだったけど、今回はどうしても必要だった。
沙入の親友を名乗る俺より、騒ぎを引き起こした当事者のルキアが話せばわかってもらえるだろうと思って。
全然面識のない俺がロメルの兄貴に話すよりもルキアが話した方がはるかに説得力あるだろ。
「えっ?どうして俺のこと‥‥‥‥‥?」
イケメンにーちゃんはビクッとして俺の顔を見た。
「あの‥‥‥‥ロメルさんのお兄さんのカイルさんですか?」
俺はもう一度確認した。
「ああ。君は?」
カイルは立ち上がって俺に向き合った。
わーお!俺、クラスでは背が高い方なんだけど、こいつは俺よりもっと高い。
175くらいありそう。
「えっと、自分、池中ルキアです。二葉さんにお願いしたんです。カイルさんと話したくて。」
「‥‥‥‥‥‥‥どういうことだ?何で俺のこと知ってるんだ?まさか‥‥‥‥?」
うわっ。怒ったかな?沙入の代わりにルキアが来るなんて。
「えっと‥‥‥‥‥‥その‥‥‥‥‥」
ここは慎重に‥‥‥‥‥言葉を選んで‥‥‥‥
「俺、知ってるぜ。ルキアさん。君も水籠沙入に二股されてたんだろ?」
「えっ?」
「かわいそうにな。もてあそばれて。ロメルだってずいぶん泣いてたんだ。君もだろ?」
「はっ?いえ、自分は‥‥‥‥そんなんじゃないから‥‥‥‥‥」
え?‥‥‥‥一体カイルはロメルからルキアのことどんな風に聞いてるんだ?
ルキアはロメルの憎っくき恋敵じゃなくって、二股被害者として同情されてんの?
「いいんだぜ?強がらなくたって。あんなクソ、俺が今日ロメルの代わりにボコってやろうと思ってたんだけど、どうやらびびってばっくれたらしいな。来ねーし。あいつらしいぜ!はんっ。」
「いっ、いや、違うから。ルキアは、その‥‥‥‥‥イブの不幸な出来事の事を話したくて‥‥‥‥‥説明というか‥‥‥‥‥‥聞いて欲しくて‥‥はい。」
「‥‥‥‥‥ああ、辛いことは人に話すとすっきりするんだろ?女の子って。いいぜ、俺が聞いてあげる。ここじゃ人に聞かれちまうだろ?あっちへ行こうぜ。ルキアさん。どうせ水籠は来ねーだろうから。」
カイルは俺の背中をさりげなく押して、人気の少ない方へ誘導して行く。
「あ‥‥‥‥‥‥はい。」
何か違うんだけど。
俺は沙入の代わりにきたんだぜ?
俺は沙入の無罪を証明しに来たんだぜ?
ま、いいか。話を聞いてもらえるなら。同じことだし。
俺はカイルに導かれ小道の方に。
おい、待てよ!こっちは変態が出たあの道じゃねーか。
「こっちは‥‥‥‥」
俺が言いかけた時にカイルが言った。
「実はこの奥にね、小さな東屋が点在してるんだ。目立たないから、よく来る人じゃないと知らないんだろうけど。そこなら話しやすいだろ?」
カイルがソフトな微笑みを見せた。
「へぇ。知らなかった‥‥‥‥‥」
うっ!こいつっ!なんつーイケメンぶり!俺、女の子だったらメロメロになってたりして。
カイルはモテモテだろうなぁ。沙入と互角?正統派イケメンvsちょい悪イケメン。
「ルキアさん、こっち。」
カイルが手袋をしている俺の右手を握った。手をつないで引っ張っていく。
俺は自分の鼓動をちょっとうるさく感じてる。
ああ、本当だ。茂みを越えるとこんなスペースがあったんだ。
小道からは良く見えなくてイブに通った時は気づかなかったな。
きっと、植え込みの木が育ちすぎて遊歩道からはここが分かりづらくなってしまったのかもしれない。
俺はカイルに導かれ薄暗い東屋の中の狭いベンチ部分に座った。隣にはカイルが。
おいおい、ちょっと近くね?俺ら。




