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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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夢はいつか醒めるの〈ロメル〉

 

「あの‥‥‥俺、沙入にあの事聞いたんだけど。」


 流河くんが突然言ったから私は物思いから戻った。


「‥‥‥‥‥‥そう。」


「それで‥‥‥‥‥‥聞いてくれ!あの事は誤解だったんだ。沙入は悪くないんだ!沙入は本当にあの女の子の事は知らなかったんだ。」


「‥‥‥‥‥もしかして、沙入くんに頼まれて言い訳に来たの?」



 そうだよね。流河くんは沙入くんの味方だよね。親友だもん。

 私のことなんて。


 私の頭の中に出来た空想彼氏流河くんの像ががらがらと崩れて行く。


「そうじゃない。聞いてくれよ。沙入は偶然居合わせて麻井ってやつに絡まれてたあの子を助けただけで、あの子とはほんとに知り合いじゃなかったんだ。」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


「沙入はかっけーし、人気あるからさ、ああいう風に知らない子が寄ってくることがあるんだ。だから‥‥‥‥」



 そうかもしれないね。

 でも、そんなことがこれからも起きるのなら私は嫌。


 沙入くんの周りに寄ってくる綺麗なかわいい女の子たちと比べられて過ごすなんて。


 そんな子たちと競いあって沙入くんをつなぎとめるだなんて。無理。


 それに‥‥‥‥‥‥‥


「‥‥‥‥沙入くんは私が差し出したロザリオをためらいなく受け取ったの。」


 あんなにあっさりと。



「ご、ごめん。俺ロメルを責めるつもりじゃないんだ。ただ、ロメルに誤解されたままだと沙入だってつらいだろ?」


 今更そんなこと。私の認識を正した所で何がかわるっていうの?

 私に、沙入くんに『誤解して御免なさい』ってして欲しいの?


「‥‥‥‥‥‥それ、本当かどうかなんてもういいの。流河くん。沙入くんは私を引き留める一言さえ言わなかったの。」


 どうせ私はその程度にしか思われてはいなかったの。 


 私は沙入くんの持つカリスマ的なカッコいい雰囲気に包まれて夢を見ていただけなのかもしれないの。流河くん。


 流河くんにはどんな風に見えてたのかな?私が。





「おーいっ!入るぜっ!流河くん、いんだろ?」


 二葉ちゃんのお兄さん!ヒトミさんの声。


「はいっ。お邪魔してます。」


 流河くんが返事をした。


「よお!流河くん、ロメルちゃんはひさしぶりっ!」


 ヒトミさんに会えた!

 まるでポジティブの塊みたい。このくったくのない笑顔。


 まぶしい。


「おおっ!うまそうじゃん!俺ももーらいっ!」


 あっ、私の作ったクッキー食べてくれた!

 うれしい‥‥‥‥!ヒトミさんに食べてもらえるなんて。


「うーん、うめぇ。もう一個くれ。」


 本当ですか?

 うふふ。ヒトミさんを見てるだけでなぜか鬱気分が消えてしまいそう。


 私の初恋のお兄さん。やっぱり、素敵な人。




「そうだっ!流河くん、またあれ、見せてくれよ!もう、俺一目惚れだぜ!」


 ヒトミさんは流河くんに話しかけた。

 すごく親しそう。この二人。


 ヒトミさんの視線の先は、興味は、私じゃなくて流河くんに向いてるの。

 流河くんの対象も、私のことなどもうどうでもよくて、完全にヒトミさんに移ってしまった。


 なぜだかヒトミさんを流河くんに取られたような、

 流河くんをヒトミさんに取られたような気分。



 ‥‥‥‥‥‥‥私だけ、私の回りだけ、モノトーンで切り取られてる。




 二葉ちゃんが流河くんのお茶を入れて戻って来た。


「お兄ちゃん!何で勝手に私の部屋入ってんのっ?」


 二葉ちゃんがおこ。

 両手で持っているトレーに乗っかった紅茶がびしゃんとトレーにこぼれてる。


「おお、二葉。いいじゃん。俺も入れてくれよ。」


「お兄ちゃんはダメっ!」


 二葉ちゃん。あんなにお兄ちゃん子だったのに‥‥‥‥‥いつの間にか嘘みたいに変わっていたんだね。


 いつの間にか、全然ブラコンじゃなくなってる。


 冬休みのほんの一週間会っていない間に髪型も変わっていたし、雰囲気もちょっと変わってる。かわいさマシマシしてるね。


 みんなどんどん変わっていくんだ‥‥‥‥‥‥‥


 私の知らない内に。私の知らないところで。



「ヒトミさん、マナカに頼まれたコミックス俺、持って帰らないと。」


「そうだったなー。じゃ、俺の部屋に来いよ。」



 流河くんとヒトミさんは親密そうに腕を組んで仲良くこの部屋から出ていく。


 そうだよね。流河くんのあのかわいらしいお姉さんがヒトミさんの彼女だもの。


 弟の流河くんも親しくなって当然ですね。ヒトミさん‥‥‥‥

 流河くんもさっきまで私とお話していたのに。



 二人とも私のことなど忘れてしまったように部屋から出て行く。



 二葉ちゃん。私、どうかしちゃったみたい。


 二葉ちゃんと同じ空間にいるのに、私だけ白黒になっているような。


 みんなから置いてけぼりにされちゃったような。


 お願い。今から私のお話、聞いてくれる?



「二葉ちゃん、私‥‥‥‥私ね、秘密で、聞いて欲しいことがあるんだけどいいかな?」



 恐る恐る二葉ちゃんの大きな瞳を見た。



「いいに決まってるじゃん‥‥‥‥‥‥どうしたの?」



 私の顔を見て二葉ちゃんの顔が曇った。


 ごめんね、二葉ちゃん。でも、私、二葉ちゃんにしか話せる人がいないの。



「クリスマスイブの日にね、‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」






 私と二葉ちゃんは小さな暖かいこたつに包まれながら二人並んでくっついて座っている。


 私の話を聞き終わった二葉ちゃんは、私の肩に頭をもたれさせながら、なぜか一言だけ、こう言った。





「‥‥‥‥‥‥‥ごめんね、ロメルちゃん。でもね、夢はいつか醒めるんだよ。」









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