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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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全然近くて全然遠い〈流河〉

 やばい!ヒトミさんが余計なことをっ!ロメルにバレるっ!


 俺が超焦っていた時、二葉さんが駆けつけた。


 開いたままのドアの前で眉をつり上げている。


「お兄ちゃん!何で勝手に私の部屋入ってんのっ?」


 二葉さんが立腹し、両手で持っているトレーに乗っかった紅茶がこぼれる。


「おお、二葉。いいじゃん。俺も入れてくれよ。」


「お兄ちゃんはダメっ!」



 あー、やばやば。ナイスフォロー!二葉さん。

 俺、マジ危ないとこだった。



 すかさず話題転換。



「ヒトミさん、マナカに頼まれたコミックス俺、持って帰らないと。」


「そうだったなー。じゃ、俺の部屋に来いよ。」


 なぜか俺と腕を組んで来た。



 なんか、ヒトミさんの俺を見る目が気になるなぁ。その目の奥にひそめた鈍い光。


 ぞわぞわすんだろーが。止めてくれよ。



 俺はそのまま二葉さんの部屋から連れ出される。


 ちらっとロメルを振り返ると、なぜかすがるような表情でヒトミさんを見ている?なんだろ。ロメルの醸し出してるこの雰囲気。捨てネコみたい。





「‥‥‥‥ったく、マナカも今日来ればよかったのに。」


 今日俺はマナカも誘ったのに断られた。やることがあるからって言って。

 


「どうせ、魚の解剖でもしてんだろ?」


 ヒトミさんが拗ねた顔をして見せる。


 ふーん。さすが彼氏知ってんじゃん。


 マナカは最近魚の耳石(じせき)集めに凝っていて破損させずに取り出すことに凝っていている。


 母さんにはやたらと魚料理をするように勧めるので家の夕食はもう3日連続魚ざんまいでうんざりだ。


 昨日はいいスケトウダラの頭部が手に入ったと言ってマナカは朝からウキウキ、やる気満々で鍋に湯を沸かしていた。


 でもさ、それってヒトミさん。


 ヒトミさん、スケトウダラの頭の魅力に負けてたってことだぜ。大丈夫か?


 もう倦怠期かよ?ラブラブなのは最初の1ヶ月だけ?




 俺が焼きもち焼いてたあの頃が嘘みてーじゃん。

 今思うと俺も相当なシスコンだったよな。マジ俺、『困ったちゃん』だった。

 マナカも困ってただろうな、きっと。

 それでもマナカは俺にはやさしかったけどな。


 そういう時期って抜け出してやっとわかるっていうか、沼に浸かってる間は自分では気づいてなかったっていうか。


 兄弟姉妹ってさ、本当に特別な存在だよな。


 ちっちゃい頃からずっと衣食住共にしてるんだぜ?


 好きなもの嫌いなもの、好きなこと嫌いなこと、得意なこと苦手なこと、音楽や洋服の好み、癖、今はまってること、機嫌の良し悪し、今日いいことあった、今落ち込んでる、たいていのことがリアルタイムでわかっちまうんだから。


 学校の友達なら、数人を除けばどんどん数年で変わっていくけれど。


 でもマナカは違う。どちらかがこの家を巣立つまでずっと一緒に生活して行くんだ。まだ数年は一緒にいるだろうな。


 そしてその時が来たら俺は‥‥‥‥‥‥?


 マナカにだってきっと後、数年でその時が来る。



 今はこんなに全然近くにいるのが当然で毎日顔見てんのが当然で、たまにマナカが友達ん家に1日お泊まりに行っていなくなっただけで違和感半端ない。ポッカリ空いたダイニングのテーブルの空間に寂しさを感じてしまう。


 それくらいなのに、今のこの生活が終わる時がくるなんて実感では捉えらきれないっていうか‥‥‥‥‥


 いつかは遠くに行っちまうんだよな‥‥‥‥‥兄姉弟妹(きょうだい)って。


 今は誰より近くこんな側にいるのに、いつかは遠くに行っちまうんだ。マナカ。


 どっかの男と手ぇつないでさ。


 それはヒトミさんとは限らないぜ?




 俺はヒトミさんが用意しておいてくれた、ペーパーバッグにきれいに詰められたコミックスを預かって早々に二葉さん家を後にした。


 もちろん、俺の美少女については誰にも言わないように口止めして。

 誰かに一言でも漏らしたら、二度と見せないって脅した。


 もちろん、もう二度とヒトミさんに見せる気なんてないけどな。






 はー‥‥‥‥


 何にもなんなかったな。ここまで来たけど。


 二葉さんに世話をかけて、ロメルに嫌なこと思い出させただけだった。

 ロメルももう沙入と仲直りする気は無さそうだったな‥‥‥‥


 はー‥‥‥‥


 ため息しか出ないよ、俺。




 俺はますます落ち込みながら家に帰った。



 自室のベッドにばたんと突っ伏した俺。



 ーーーまだだ!


 明日は夕方、ロメルの双子の兄貴カイルに会って沙入の代わりに弁明しなければならない。


 ロメルの兄貴は沙入が二股してロメルを傷つけたと思い違いしてる。


 きっと沙入は責められたところで弁解なんてしないに決まってる。


 あの様子じゃ開き直って、もう自分はルキアとつきあってるとか言い出してさらに煽りかねない。


 沙入に行かせる訳には絶対にいかない。


 それにもし、フィジカル的な争いになったらまずい。


 俺が心配してんのは沙入の指。


 沙入はすっげー才能持ってるって俺にだって分かる。誰だって沙入を知ったらわかるさ。


 そんな沙入を危ない目さらすなんて俺が許さない。



 沙入は絶対俺が護る!



 俺の身に代えても!



 だが、あっちだって当然相当怒ってるだろう。


 そのためには‥‥‥‥‥相当な説得力が必要だ。


 あれは誤解だったって言える確たる証拠になるのは‥‥‥‥‥‥



 ‥‥‥‥‥アレしかないだろ?












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