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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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二葉の部屋にて〈流河〉

 結局マナカは忙しいと言って来なかった。


 だが、自分の分のだらだら正月用にマンガを借りて来るように題名を指定されていた。ヒトミさんには連絡済みだと言って。



 駅から徒歩15分。


 二葉さん家のマンションの前。スマホを見ながら何とかたどり着いた。



『エクセレントピープル イン スペクタキュラタワー』



 なんか笑える。誰がつけるんだろ?こういうの。住んでるとこ言う時、恥ずくね?


 マンションのエントランスの前で部屋番を押す。今、時間は11時5分。


 すぐに二葉さんが出た。


「おう!流河くん。ようこそ。今開けるね。」



 自動的に大きなガラスの開き戸が左右に割れて俺を迎え入れる。


 俺はエントランスを抜けた。


 えっと、エレベーターはどっち‥‥‥いや、俺は階段で行こう。筋トレになるし。


 俺は10階まで駆け登る。



 そして今、1001号室ドアの前で二葉さんが出て来るのを待っている俺。


 俺は今、ちょっと緊張している。


 ロメル、来てるんだろ?


 この中にロメルが。


 ロメルに会うのがちょっと怖い。気が重い。


 沙入の親友の俺を見て嫌な顔するかも。ロメルの顔色に傷心が見えたら俺はどんな言葉をかけたらいいんだ?


 でも、俺は話しておかないといけないんだ。沙入はロメルを裏切ってたわけじゃないから。




「流河くん、ようこそ。」


「よお!わりーな!お邪魔します。」


 4日ぶりの二葉さん、相変わらずお元気そうだ。


 俺は手洗いを済ませた後、二葉さんに案内されて玄関入ってすぐ右脇のドアの前に立った。ここが二葉さんの部屋だという。


 二葉さん、ロメルから別れた時の事、聞いたのかな?ルキアのせいで沙入と別れたこと。


 いつもと変わらない態度、俺になんも言ってこないって事はまだ聞いてないのか?


 うん。たぶん、そうだろう。




 このドアの向こうにロメルがいる。


 俺、ロメルの顔、まともに見れんのか?自分の鼓動が気になり出す。


 二葉さんが俺を大きな瞳で『行くよ、いい?』って聞いて来た。



 俺は黙って頷いた。




 二葉さんがドアを開けた。


 思いの外、狭い部屋。部屋の奥にベッド、左側には机とチェストと本棚。

 全然女の子っぽくない部屋。マナカと一緒だ。


 よくわからない分解された配線むき出しのがらくたや本がごちゃごちゃと隅の段ボールに積み上がっている。


 もう入って数歩のとこに小さなこたつがあって奥のベッド側にロメルがこっちを向きで座っていた。


「ロメルちゃん、ちょっと流河くんがお兄ちゃんのコミックス借りに来たんだ。せっかくだからちょっと食べてくといいよ。ねっ?」


「ごめん、ちょっとだけお邪魔。久しぶりだな、ロメル。」


 さすがに、最後に『元気?』なんてつけられない。



 こたつに入って座っているロメルが俺を見た。



「あっ、流河くん‥‥‥‥‥久しぶりだね。」



 ロメルは相変わらずついつい見とれてしまうくらいかわいいくて。


 だけど、その表情は、戸惑いとやむなくを漂わせている。



 俺とロメルが手をつないで走ったあの日はもう1ヶ月以上前の出来事だ。

 もう、遠い昔。


 ああーっ。あの日に帰って、ロメルがほんとは沙入の彼女になってなかった頃に戻ってやり直せたらいいのに。




 二葉さん、わざとロメルの横に俺用に座布団を置いた。


 俺はそのままそこに座る。



「流河くんも好きなもの食べてってよ!ロメルちゃんの手作りクッキーだってあるんだよ、ほらこれ。」


 二葉さんは俺に人形(ひとがた)のクッキーを一つ握らせた。


「私、流河くんの飲み物用意してくる。流河くんも紅茶でいい?」


「ああ、サンキュー。俺、すぐ帰るし気を使わなくていいぜ。」


「まあまあ、」



 二葉さんは俺とロメルを残して部屋を出た。



 二葉さんの立てた計画通り進んでる。サンキュー、二葉さん。俺の頼みを聞いてくれて。


 後は俺がしっかりしねーと。



「クッキー、旨いな。」


 俺は一口かじりロメルに言った。


「‥‥‥‥‥ありがとう。」


 ロメルは突然現れた俺に仕方なく対応してる。


「ごめん、突然邪魔しちゃって‥‥‥‥‥」


「‥‥‥‥‥‥別に。」



 微妙な空気が流れている‥‥‥‥‥‥



 うー‥‥‥。だめだ!切り出さなきゃ!そのために俺はわざわざ来たんだ。



「あの‥‥‥俺、沙入にあの事聞いたんだけど。」


 俺は思いきって言った。


「‥‥‥‥‥‥そう。」


 ロメルは俺の方を見ようとせずこたつの上のみかんを見つめている。


「それで‥‥‥‥‥‥聞いてくれ!あの事は誤解だったんだ。沙入は悪くないんだ!沙入は本当にあの女の子の事は知らなかったんだ。」


「‥‥‥‥‥もしかして、沙入くんに頼まれて言い訳に来たの?」


 ロメルが冷ややかに俺を見た。


「そうじゃない。聞いてくれよ。沙入は偶然居合わせて麻井ってやつに絡まれてたあの子を助けただけで、あの子とはほんとに知り合いじゃなかったんだ。」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


「沙入はかっけーし、人気あるからさ、ああいう風に知らない子が寄ってくることがあるんだ。だから‥‥‥‥」


「‥‥‥‥沙入くんは私が差し出したロザリオをためらいなく受け取ったの。」


 ロメルの目が潤んだ。


 ヤバい!俺のせいで悲しいことを思い出させちゃったぜ。


「ご、ごめん。俺ロメルを責めるつもりじゃないんだ。ただ、ロメルに誤解されたままだと沙入だってつらいだろ?」


「‥‥‥‥‥‥それ、本当かどうかなんてもういいの。流河くん。沙入くんは私を引き留める一言さえ言わなかったの。」


 涙をこらえた無理に作った笑みを俺にむけた。



 ううううっ!美少女のこんな顔向けられて俺は‥‥‥俺の罪悪感は‥‥‥もうMAXになっちまうじゃん!



「‥‥‥‥ごめん、俺が‥‥‥俺のせいで‥‥‥あれは俺のせい‥‥‥」



 俺の口が勝手にぶつぶついい始めた時にドアがノックされた。



「おーいっ!入るぜっ!流河くん、いんだろ?」


 ヒトミさんだ。


「はいっ。お邪魔してます。」


 ドアが開いてヒトミさんが入って来た。


「よお!流河くん、ロメルちゃんはひさしぶりっ!」


 相変わらず陽気な兄貴だ。


「おおっ!うまそうじゃん!俺ももーらいっ!」


 ロメルの作ったっていうクッキーを一口で食った。


「うーん、うめぇ。もう一個くれ。」



 えっ?


 ロメルを見るとさっきまでとうってかわり妙にうれしそうに微笑んでいる。



 女の子の気分って‥‥‥‥‥こんな一瞬でかわんの?




「そうだっ!流河くん、またあれ、見せてくれよ!もう、俺一目惚れだぜ!」


 ヒトミさんが超笑顔で俺を見てる。



 ぶっっ!


 うわーーーっ!やめろっ!STOP!ヒトミさん。


 何言い出してんの!こんなとこでっ!ロメルの前でっ!


 この兄貴はよぉ!ったく。








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