物思い〈沙入〉その2
ルキアに出会ったあの日から、もう二日目になったってのに。
連絡、無し。
‥‥‥‥‥‥‥俺、振られた?ルキアに。
「沙入、それさ、仲直りできねーのか?ロメルとさ。」
今まで黙ってた流河がぽそっと言った。
「‥‥‥‥‥‥無理。」
俺にはそんな気持ち1ミリだってねーからな。
たとえ誤解が解けてロメルが謝って来たとしても俺の心は変わらない。
「何でだよ?やってみないとわかんねーじゃん。」
流河がなぜか俺を責め口調だ。何で?
おまえ、ロメルに気があるんだろ?何で俺とロメルをくっつけようとすんの?
あー、そうか。流河ももう、先行ってんのね。ロメルのことはもうあきらめて他いっちゃってんだ?
人の心なんてそんなもんさ。
「‥‥‥‥‥‥流河にはかんけーねーだろ!もうこの話はお仕舞いだ。」
俺は不機嫌を見せて流河を牽制した。
俺の心は‥‥‥‥‥‥今、ルキアでいっぱいだ。
初めて見かけた時から彼女は特別な感じがしていた。
俺がロメルとの待ち合わせで、噴水池に行った時、彼女はそこにいた。
俺の見覚えのある男にしつこくされているところだった。
俺、絡まれてる彼女を見た時‥‥‥‥‥‥あれっ?って思った。
ーーーーーあいつら、ロメルにしつこく付きまとっていたっていう二人組だ。
今度はまた、他の子に。
あの女の子‥‥‥‥‥前から知っているような?いや、知らない。初めて見る子だし。
なんでだろう?自分でもよくわからない。全く知らない子なのに。
これって前世でつながってたとか言うやつ?
まさか。
俺、そんなもの信じちゃいないし。
それともこれって運命の赤い糸ってやつ?
んなもんあるかよ!ったく‥‥‥‥‥気のせいだっつーの。
俺、思考がおかしくなってる。この子見てると。
でも、俺はとにかく彼女を助けなきゃなんない。彼女が困っているのを放置してちゃいけないような、なぜかそんな気がする。
ーーーーーそんで、俺は彼女に助け船を出してやった。
そしたらなぜか、その子は俺のこと知っててさ。
俺ってこの辺で密かにごく一部で有名なの?
たまーにだけど全然知らない子からギターの投稿動画の事で声をかけられることある。
きっとこの子も偶然そんな一人だったに違いない。
そういう場合、そっちは俺に親近感持ってんのかもしれないけど、俺にとっては全く知らない他人だ。
そういう場合は俺は適当にあしらっている。
関わる事などありえない。
でも‥‥‥‥‥‥この子は特別に思えた。
助けられてハイになってるあの子がいきなり俺に抱きついて来たってのに俺は怒りもしないで。
俺だってなんでそうだったかなんてわかんねーよ。
今、思い返したって。
ロメルが怒って帰った後、俺はあの子の名前を聞いた。
彼女の名はルキア、14才だって言ってた。
俺はルキアとこのまま別れるべきじゃない。
俺は俺の直感を確めたいと思った。
今までにない初めて来たこの感覚が何を意味しているのかを。
それなのにルキアは逃げ出した。
ルキアがきっかけで俺は目の前でロメルと別れちまったわけだし、ばつが悪いし、冷静を取り戻して恥ずかしくなったんだろ。
側に座って眠ってしまった妹らしき子を抱えてあわてて行ってしまった。
まあ、行っちまったやつ追いかけてもな?
かなり気になった子だったけど、俺はしつこくする気はなかった。
その時の俺はもうルキアに会うことはもう無いって思ってた。
でも、その後で‥‥‥‥‥。
あんなことが起きるなんて、俺のファーストインプレッションは正しかったかもって思い直してた。今では俺、前世説と赤い糸説、無いことも無いかもくらいには思えてきてる。
ーーーーーはぁ。
ルキア、逃げちまったぜ。かなり気になる子だったけど‥‥‥‥‥
あの子を見た時のあの感覚は‥‥‥‥なんだったんだろうな?
俺は噴水の縁に座った。
こんな次々と心が乱されてしまうことが起きた時に浮かぶ言葉は貴重だ。
それってリリックスになりうるから。
スマホにメモっておく。
さてと、男一人こんなとこにいたって虚しいじゃん?
今日はロメルと久々に雰囲気出して楽しもうと思ってたのに。
ったく。期待はずれになっちまったぜ。
このまま冷たい風に吹かれながら帰ろう。
楽しそうに笑い会う人々を横目にしながら俺は一人帰途に着いた。
俺は公園内を斜めに突っ切って歩いて帰ることにした。
今日はここまで来るのに電車を使っていた。
メインの噴水広場から離れると、もうイルミネーションはないし、離れるほど薄暗く人気も無くなって来た。
途中、会社帰りに近道しようとして通るビジネススーツのおやじ二人とすれ違ったきりだった。
ああ、こんな日に暗くなってからこんなとこ、男一人で通るんじゃなかった。
失敗したな、俺。
確かに薄暗いながらも外灯で照らされている遊歩道はほとんど人はいないけど、歩道から外れた更に暗いところからは所々で人の気配が感じられた。
きっといちゃついてる恋人たちかもしれないな。
俺はさっさと公園を抜けてしまおうと思って足を早めた。
あれっ?今、誰かの怒ったような声が聞こえたような?
今度は走っている靴の音が段々大きく聞こえて来る。
いきなりおかしなイカれたやつが来んじゃねーだろうな?
ナイフを振りかざす無差別通り魔だとか。オノを振り回す仮面の怪人とか?
『クリスマスイブの惨劇』なんてさ、明日のニュースに男子中学生一名死亡とか出ちゃったりして?
そんなことになったらなんだかんだして俺の名前や住んでるとこ、顔写真がネットでさらされるだろ?
俺の場合、誰かが提供した小学校の卒アルの写真ってか?
やめてくれよな。あのダサい写真、俺に無断で使うの。
俺はWの悲劇回避のために警戒した。
側にあった外灯の下に行き、こちらに向かって走って来る正体不明の野郎に備えた。




