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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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My top secret matter〈流河〉

 俺は猛ダッシュで飛び出した。



 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ‥‥‥‥‥


 辺りには俺の走る足音だけが響いている。


 

 道なりにゆるいカーブを曲がると前方に誰か立っている姿が見えた。



 まさか、こいつも変態じゃねーだろうなっ?

 もう、勘弁してくれよ。さっきから散々だぜ。



 俺はスピードを緩めた。



 そいつはこっちを見ている。


 ちょうど、外灯の下、照らし出されたそいつは‥‥‥‥‥‥



 げっ!沙入じゃん。



 もしかして、沙入も歩いて帰ろうとしてたのか?



 俺は沙入の前で止まった。



「あれ?‥‥‥‥ルキアじゃん。どうした?もしかして‥‥‥‥‥俺を追いかけて来たとか?」


 沙入はすかした顔をしてるけど、目の奥が嗤ってる。



 やばい。このシチュエーション、まるで俺が沙入に気があるみたいじゃん。



「ち、違うから。」


 俺は息切れしながら言った。


「大丈夫?ルキア。じゃ、何でこんなとこ来たんだ?」


「だってこっちが帰りに近道だったから。でも‥‥‥‥途中で、変態が‥‥‥変態が‥‥‥出て‥‥‥コートをバッて開いて、で、逃げて‥‥‥‥でも目と脳と心に多大なダメージ受けてっ‥‥‥‥ここまで来て‥‥‥‥」



 俺は息切れを整えながらさっきの災難のことを話した。


 俺はチラッと後ろを見たけど、あのおやじはついてきてはいない。



 はー。よかった!




 沙入が咎めるように俺を見た。


「‥‥‥‥‥こんなとこ、女の子が一人で通るとこじゃないでしょ。」


「それな!」


「‥‥‥‥ルキア。それなじゃねーよ。ったく。俺が送ってやるよ。明るいとこまで。」


「ありがとう。」



 沙入って女の子にやさしいんだな。ふふっ。



「ほら!ったく。すぐ知らねーやつ信じんな。」


「だって知ってるし。」


「それ、一方的にしかもほんの一部分だろ?俺だってルキアを知らない。」


 沙入はあー、と 大きくため息をついた。


「俺のアカウント、身元特定して俺のこと知ったの?ルキアにだったら歓迎だけど、どこでわかった?俺だって。」


「別にSNSは関係ないし‥‥‥‥‥‥」


「じゃ、何で俺のこと知ってんの?」



 俺の目をじっと見つめる沙入。



「‥‥‥‥‥‥‥‥‥えーと‥‥‥‥」


 俺は目をそらしてきょときょとしてる。


「‥‥‥‥何にしろ、俺のこと陰から見てたんだ?さっき、俺のこと愛してるって言ったよな?」


 沙入を見ると、まだ俺の目を見つめてる。


「‥‥‥‥‥‥えー、そうだったっけ?」



 そんなに見つめてくるなんて、もしや俺だって怪しんでる?



「っち!俺、ルキアのせいで振られちゃったんだぜ?」



 そんなこと言ってもさ、沙入、さっきは何でもっとロメルを引き留めなかったんだよ?ロメルがかわいそうじゃんか。あっさりし過ぎだせ?


 ‥‥‥‥って、俺が一番悪いんだけど。何とかなんねーのかな?沙入とロメルを仲直りさせてやりたいけど‥‥‥‥どうしたら?



「‥‥‥‥‥まあ、原因はそうだな‥‥‥うん。でも、修復すれば?」



 こんなんじゃ俺だってつらいじゃん。頼むよ、沙入!



「‥‥‥‥‥俺、あの子はもういい。だからルキア、おまえ、償えよ。」


「償うって‥‥‥‥?」


「今からルキアは俺の彼女だ。いいな?」


「はっ?」


「だから、俺が今日あの子とするはずだったこと‥‥‥‥‥してもらうぜ。」


「へっ?」


「ルキア、俺が好きなんだろ?」



 沙入が俺に一歩近づく。俺は一歩さがる。



「‥‥‥‥‥だ、だ、だめだって‥‥‥‥‥お、おいっ!」



 後退る俺は外灯のポールに、コンっとぶつかった。



「俺、ルキアを一目見た時から‥‥‥‥ずっと前から知っていたような‥‥‥そんな気がしてて‥‥‥‥‥‥」



「‥‥‥‥‥‥‥」


 だよな。めっちゃ知ってるから、実際!



「俺の大切な人になるって‥‥‥‥‥‥直感でわかった。」


 だろうな。沙入のバンドの第1号メンバー俺だし!



「だから‥‥‥‥‥‥これは遊びじゃない。わかるよな?」


 沙入は両手で俺の両耳のへんを押さえた。



 や、ヤバい!俺、動いたら帽子が脱げて地頭が出るっ!

 ロン毛と帽子が取れたらバレる!


 このシチュエーションでバレるわけにはいかない!そんなことになったら俺と沙入の友情が壊れちまう!



 俺、沙入のこと尊敬してるし、憧れてるし、マジ惚れてる。友達として。


 沙入との友情を()くしたら俺は‥‥‥‥‥?


 俺の今までの日々には沙入がいたからこそ価値があった。


 これからの日々から沙入を失ったら‥‥‥‥‥‥?


 嫌だ!そんなこと絶対考えられない‥‥‥‥‥‥!




            動けない、俺。




「ルキア‥‥‥‥‥」


 沙入の顔が近づく。



 俺は目を瞑った。






 沙入は俺のほほをそっと撫でるようにしながら放した。


「‥‥‥‥ルキア、連絡とれるようにしようぜ。」


「‥‥‥‥‥ごめん、スマホ電池切れで‥‥‥‥」


 俺は沙入の顔を見ることができない。


「じゃ、俺の教えとくから、帰ったらすぐ登録しろよ。」


「‥‥‥‥あ、うん。」



 沙入がガムの包み紙にささっとメモって渡してきた。


 俺は受け取ってポッケに入れた。



 うつ向く俺を沙入が覗き込む。



「‥‥‥‥‥怒ってる?いきなりで。」





 その時、声がした。




「おおー!お嬢さん、まだここにいたのか。おやっ、この男、なんだい?」


 遊歩道のカーブの陰から不意にアイツが出てきた!



「うわーっ!出たーっ!変態オヤジっ!」


 俺は思わず叫んだ。



「いいぞ!ほら、もっと見てくれよ!あっはっはっ。」



 変態が俺目指して走って来る。



「うっ‥‥‥きもっ!何だこいつっ!逃げろ、ルキアっ!」


 沙入は俺を振り向いて叫んだあと、道に立ち塞がった。


「おいっ!やめろっ!くそじじいっ!」



 沙入が変態野郎の行く手を阻んでいる隙に俺は駆け出した。



「沙入っ、マジ、愛してるっ!」



 俺は、駆け出した足を数歩で止め、振り向いて叫んでから再びダッシュする。


 


 これは本心。


 親友としてだけど。


 この先ずっと。たぶん一生。死ぬまで。俺、マジだぜ?


 俺から見て沙入ほどかっけーやつ、他には絶対いねーから。




 ルキアは消える。


 沙入の前に、もう二度と現れない。


 ごめん、沙入。


 だけどさ、俺のファーストキス奪ったの、おまえだぜ?


 これは俺の一生の秘密事項‥‥‥‥‥‥‥



 14才、クリスマスイブの。






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