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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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カイルの願い ロメルの涙〈カイル〉

 どうなっている?



「俺の連れだぜ?この子。あんた、残念。他行けよ。」



 水籠(みごもり)は麻井を嘲笑っている。


 ルキアさんは水籠(みごもり)と付き合ってんのか?


 ロメルのことはどうなってんだ?


 まさか‥‥‥‥こいつ、二股?ロメルとルキアさんと。 



「っち!何だよ。彼氏待ちだったのかよ?早く言えっつーの!たらし女!行こうぜ、小白っ。」


 麻井が捨て台詞を吐き、小白と立ち去って行く。



「大丈夫?俺、あいつらちょっと知ってるんだ。前にも見かけたことあってさ。」


 水籠(みごもり)がルキアに声をかけると、


「サンキュー!沙入!愛してるぜっ!」


 ルキアさんが水籠(みごもり)に抱きついた。


 やっぱり、この男!二股してやがった!



「えっ?」



 ルキアさんに抱きつかれた水籠(みごもり)がびくっとした。 



 いつの間にか水籠(みごもり)に抱きついているルキアさんの後方に、俺の目の前にロメルが横向きで立っていた。

 俺は被ったフードで視界が狭められていて今までロメルが来ていたことに気づいていなかった。



 こんな所をロメルが見たらだめだ!

 どんなに傷つくことか!



「ちょっと、君‥‥‥‥離れて‥‥‥‥‥ロメル!」


 ルキアさんに抱きつかれたままの水籠(みごもり)があわてている。



「っこ、これはどういうこと?‥‥‥‥沙入?」


 ロメルが立ちすくんでいる。


「ロメル!いや、これは何でもない。俺もわかんねーよ。」



 この、チャラ男はこんなシチュエーションになってんのにまだしらばっくれる気なのか?


 とんでもないタラシだな!


 今すぐ、俺がフルボッコにしてやりたい!



 でも、こんな所を俺に見られたと知ったらロメルはどんなに傷つくだろう?


 俺は耐えた。 



「‥‥‥‥‥‥嘘。何でもなくないよ。わかんなくもないよ‥‥‥‥‥だってその子今、『沙入、愛してる』って‥‥‥‥‥‥」


「違うって!誤解すんなよ!ロメル。この子は‥‥‥‥‥えっと‥‥‥‥?君誰?一回離れてよ。困ったな。」



 ああ、なんて最悪の男!水籠(みごもり)沙入。おまえというやつは。


 かわいそうなロメル。


 だから俺、何度も言ったじゃねーか。あんな男と付き合うなって!




 結局、ロメルは水籠(みごもり)にあのロザリオを返した。



 ロメル、それでいい。




 俺の願いは今、叶えられた。



 神よ。感謝します。



 神は俺に神を裏切らせないために願いを叶えてくれたのか‥‥‥‥‥‥?


 それともロメルを俺から護るため?




 ま、とにかく俺の本気、わかってたんだな。カ.ミ.サ.マ。






 もう、すっかり日は完全に沈んでる。昼間の余韻さえない。




 自転車でちょっと走るとすぐにロメルの後ろ姿が見えた。

 通りの向こうを歩くロメルとすれ違って追い越した。


 うつ向いて歩くロメルは、俺が通ったことなど気づくことはない。



 俺は急いで家に戻り、自分の部屋で着替えると、もうずっと前にコンビニから帰ってたふうを装った。



 それから5分たたずにロメルは戻ってきた。

 インターカムが鳴った。



 ギリだったな、俺。



 俺は急いでロメルのために玄関のカギを開けた。



「おかえり。ずいぶん早かったな。まだ5時半くらいだぞ。」


 俺は驚いたように言った。


「‥‥‥‥‥‥‥うん。」


「‥‥‥‥どうかしたのか?ロメル。」


「‥‥‥‥‥ううっ‥‥‥‥ひっく‥‥‥‥」


 ロメルは急に泣き出した。


「‥‥‥‥‥‥ロメル?」


 俺はロメルの肩に手をおいて、うつむいた顔を覗きこんだ。



「うわーん、カイルのばかー、うわーん!」



 家までよく我慢したな。ロメル。


 俺はロメルの背中を抱きしめ、さすった。


 ロメルは俺の胸で涙を拭きながら泣いてる。





 これでいい。


 俺はロメルにこれ以上のことをする気はない。

 必要もない。

 もし、ここで俺がロメルに何かしたならば俺たちの関係が壊れてしまう。

 出来ればずっとこのままでいさせてくれよ。ロメル。

 俺から離れるな。




 だが、再度ロメルに男ができた時は別だ。


 奪われる前に俺がロメルを奪う。


 その時は仕方がないだろ?


 ロメル以上の女の子なんて他にはいないんだ‥‥‥‥‥




 ロメル以上の‥‥‥



 俺の頭の中に、ふと、ルキアさんの顔が浮かんだ。



 最初に見た、風に髪をなびかせながら歩くルキアさんの姿。


 フードに視線を隠しながら見た彼女の横顔。


 長いまつげにキュートなくちびる。


 虚ろに遠くを見つめるアンニュイな瞳。



 イルミネーションの瞬きに照らしだされたルキアさんのシルエット。


 まるでスクリーンからそのまま抜け出て来たような‥‥‥‥






 何なんだ?なんで急にルキアさんが出てくる?


 ちょっと見かけただけの女の子なのに。


 ああ、そうだったな。あの子も水籠(みごもり)に遊ばれて。ロメルと二股されて。


 かわいそうに‥‥‥‥‥‥


 あの後、あの子どうなったんだろう?


 ロメルが帰るのを見て俺もあわてて帰ったからわからないけど‥‥‥ルキアさんも今頃泣いているのかも。ロメルみたいに。



 俺だったらルキアさんを泣かせたりしないのに‥‥‥‥‥





 ‥‥‥‥‥‥‥俺、ロメルを慰めながら何考えてんだ!おかしいだろ!





 俺はロメルのほほを両手で包みながら言った。


「ロメル、風呂に入ってすっきりしてこい。その間にクリスマスディナーの仕上げは俺がやっとくからさ。今日はたくさん食べて元気だせ。なっ?」


 俺はもちろん、すべてを見て知っているわけだけど、何も言わず、聞かず、ロメルの様子から察して気を使ってるふうに振る舞った。

 

 それがお互いのため。




「‥‥‥‥うん。ありがとう‥‥カイル。そうする。」


 ロメルの顔は目の周りも鼻の頭も染まっている。


 水籠(みごもり)のやつ、ロメルを弄びやがって!


 絶対に許せない!


 呼び出してこの落とし前つけさせてもらうぜ!必ずな!








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