美少女は誤解招致〈流河〉
「俺の連れだぜ?この子。あんた、残念。他行けよ。」
沙入がすかした嗤いで麻井くんに言った。
「っち!何だよ。彼氏待ちだったのかよ?早く言えっつーの!たらし女!行こうぜ、小白っ。」
俺は公園を去っていく麻井くんと小白くんを見送った。
「大丈夫?俺、あいつらちょっと知ってるんだ。前にも見かけたことあってさ。」
沙入が俺の顔、じっと見てる。
助かったー!俺、癇癪おこして黒歴史刻むとこだったじゃーん!
沙入サイコー!ナイスタイミング!
さすが沙入だな!
こんな姿になった俺がわかるなんてよぉ!さすが親友だぜ!
「サンキュー!沙入!愛してるぜっ!」
俺は沙入に抱きついた。
「えっ?」
沙入がびっくりしている。
「ちょっと、君‥‥‥‥離れて‥‥‥‥‥ロメル!」
え?ロメルって?
俺が沙入に抱きついたまま振り返るとそこにはロメルが立っている。
やばいっ!こんなカッコの俺をロメルに見られてしまっては!
「っこ、これはどういうこと?‥‥‥‥沙入?」
ロメルが立ちすくんでいる。
「ロメル!いや、これは何でもない。俺もわかんねーよ。」
おお、沙入。俺のこと、ロメルには黙っててくれようとしてる。
さすが親友。マジ愛してる!沙入。
「‥‥‥‥‥‥嘘。何でもなくないよ。わかんなくもないよ‥‥‥‥‥だってその子今、『沙入、愛してる』って‥‥‥‥‥‥」
ロメルがうるうるして俺と沙入を見ている。
やばい!ロメルは俺のこと、沙入とできてる女と勘違いしてんじゃん!
どうすんだよ?俺の正体、このまま隠してたら沙入がロメルに誤解されちまう!
沙入、ばらすのか?
「違うって!誤解すんなよ!ロメル。この子は‥‥‥‥‥えっと‥‥‥‥?君誰?一回離れてよ。困ったな。」
誰って?えっ?
沙入は俺だってわかってたんじゃなかったのか?だから助けてくれたんじゃなかったのか‥‥‥‥‥?
何だよ?そのマジな困惑顔‥‥‥‥‥‥って!
気づいてないっ!俺だってこと。
やべー!
だったらこんな姿、沙入にもロメルにもさらすわけにはいかないぜ!
‥‥‥‥‥‥‥逃げよう!
否、ダメだ!寝ている二葉さんをおいて逃げるわけにはいかない。
俺、絶体絶命!
俺はとにかく沙入を放した。
ロメルは、沙入の横で突っ立ってる俺のことを上から下まですっと見た。
「‥‥‥‥綺麗な人だね‥‥‥‥‥沙入。私なんかより、ずっと。」
ロメルは涙目で、俺を見ながらつぶやくように言った。
「ちっ、違うって!俺、こんな子知らねーし。」
「‥‥‥‥嘘、『沙入』って呼んだよ?その子。」
「‥‥‥‥‥‥何だよ?ロメル。俺は知らねーって言ってんじゃん。俺を信じねーってか?」
「‥‥‥‥‥‥‥ねぇ?これを見て何を信じればいいの?」
「俺の言葉をだろ?ロメル。」
「‥‥‥‥‥‥‥返す。」
ロメルは首からロザリオを外し、沙入に差し出した。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
沙入は右手を出し黙ってロザリオを受け取った。
沙入の冷たい目。
やばいっ!俺のせいでっ!何とかしたいけど。
だからって俺、ここで正体晒すなんて無理だっつーの!
「あ、あの‥‥‥ごめん‥‥‥‥これは誤解っていうか‥‥‥」
俺は何とかこいつらをとりなそうと思ったのだが‥‥‥‥
「君は、かんけーねーから。ロメルが俺を信じねーなら俺らもう終わりだから。ただ、それだけ。」
沙入はなんてドライなんだよっ!待ってくれよ!
「でっ、でも!ここは落ち着いて‥‥‥‥」
俺は必死でこの状態を何とかしなければ‥‥‥‥と何か言おうとしたら、
「‥‥‥‥‥いいのよ。誤魔化そうとしなくたって。もう、わかってしまったんだもん。それに私、あなたみたいな綺麗な人と比べられても‥‥‥‥」
「ええっ?」
何言ってんだよ?ロメル。誤解なんだっ!沙入は悪くないんだって!
俺の心の叫びなど、届くはずもなかった。
ロメルはクルリと向きを変え、走って帰ってしまった。
うっわー!俺、どうすりゃいいんだよ?
「ご、ごめん。こんなことになるなんて‥‥‥‥‥」
俺はとにもかくにも沙入に謝った。
「‥‥‥‥‥‥君のせいじゃないから。気にすんな。」
「‥‥‥‥‥でもこんなんなっちゃって‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥ねぇ、君。名前は?‥‥‥何で俺のこと知ってんの?」
「う‥‥‥‥、その‥‥‥あの‥‥‥‥ルキア。」
「もしかして俺の推し?フォロワーさん?ルキア、何歳なの?」
「え‥‥‥えー、まあ、そうとも言えるかも‥‥‥‥えっと、14才」
「‥‥‥‥‥ふーん、タメじゃん。いいね。じゃ、アカウント教えてよ。ダイレクトで送るからさ。」
「‥‥‥‥‥はっ?」
「スマホ出して、ほら。」
ええええっ!
俺、沙入にまでナンパされてんの?どうなちゃってんの?
わざとふざけてる訳じゃねーよな?
沙入のこの顔、マジだ!俺、狙われてるっ!
もう、ここから逃げるしかない!
「‥‥‥‥わりっ、ごめんっ!」
俺はさっと身を翻し、噴水池の縁で、器用にバッグ抱えつつ、うつ向いて座って寝ている二葉さんをお姫様だっこで抱えた。
うわっ!この子、軽っ!助かったー。
まあーなんて平和な顔してのんきに寝てやがるんだ!
俺はそのまま小走りで公園を来た方に戻った。
だって俺は二葉さんの家どこだか知らねーから。




