悩める少女 その2
でもね、今朝はホッとしたわ。二葉ちゃんの "お兄さん話" は無くなることはなかったの。
二葉ちゃんは今日もいつものように朝から私の席に来て先生が来るまでおしゃべりしていった。
でもお話の内容はお兄さん称賛からお兄さんへの愚痴と邪な企みへと変わったけど。
二葉ちゃんは言った。
「お兄ちゃんはぜーったい二葉だけのお兄ちゃんなんだもん!誰かに取られちゃうなんてやだもん!お兄ちゃんに彼女なんて要らないんだから!」
「どうして?お兄さんに彼女がいたってきっと二葉ちゃんのことだって大切に思ってくれてると思うよ。」
「でも、お兄ちゃんはそのうちきっとどんどん彼女の方が大切になって二葉のことをかまってくれなくなるに決まってる!」
「お兄さん優しそうな人だったもんね。きっと彼女にも優しいんだろうな。二葉ちゃんに優しいみたいに。いいなー、そういうの。憧れるなー。」
私はついつい余計な事を言ってしまった。
「う〰️〰️〰️〰️!私への優しさが半分に、いやいや、そのうち3分の1に‥‥‥‥‥どんどん反比例して減っていくんだ!うえーん!」
「そっ、そんなこと‥‥‥‥」
「そんなの嫌だ!私はお兄ちゃんを取り戻す!」
そう言った二葉ちゃんの目がキランと光った。
「えっ?どういうこと?」
「破局させる!」
「はっ?」
「お兄ちゃんが彼女から嫌われればいいの。ふふん!」
二葉ちゃんの顔が悪代官様。
「あの‥‥‥‥‥?」
「振られちゃえばいいんだ!お兄ちゃんなんて!」
二葉ちゃんの顔がニヤリ。私‥‥‥ちょっと怖い。
そこで先生が来て朝のHRが始められた。
そして今、6時間目、学級会。
教卓の前にて司会、雪村くん、白玉さん。私は自分の席で書記。
さっきから何回も雪村くんと視線が合う。その度届く微笑。白玉さんとも何回か視線が合う。その度届く敵意。
もう、お願い!私を見ないで!ああ、もう嫌っ!
私は関係ないの!
チャイムが鳴った。
はぁ、やっと終わる。
私は学級会記録ノートを閉じた。
放課後、朝、当番さんに集められたスマホが戻ってきた。
私は席に戻るとすぐに確認してみた。
あれ?このメッセージ‥‥‥‥この人は?
ああ、昨日の二葉ちゃんのお兄さんの彼女の弟さんのお友達だわ。
えっと‥えっと、難しい名前‥‥‥水籠沙入くん。
ひょろっとしたお洒落な色白の男の子。イヤーカフとか幾つもつけてて。
ストリート系?ダンスとかしてそうな子。
昨日のことで早速相談なのね?えっと‥‥‥‥‥
『俺、昨日の文化祭ん時の水籠。』
『今度の土曜日午後空いてる?直で会って相談しようぜ。』
『新黒豆駅前の公園の噴水の前で2時、どう?』
私も‥‥‥二葉ちゃん何かの陰謀があるみたいだし、いけないことが起こる前になんとかしてあげたいけど‥‥‥‥私と水籠くんで何とか出来る問題なのかしら‥‥‥‥‥私、午後なら行けそうだけど。
直接二人で会うって‥‥‥‥。でも全く知らない人って訳でもないし、会ったことあるし、同じ中2の子だもの。行っても大丈夫よね。場所も駅前公園だもの。
よし、返事を‥‥‥‥‥‥
『連絡、ありがとうございます。私、行きます。』
これでよし、送信っと。
「ねぇ、蛇ノ目。部活行かないの?」
あうっ‥‥‥‥後ろから雪村くんが。いつの間に?
「うん、今日は行かない。」
私の入っている天文部は部員はたくさんいるのだけれど、来るのはいつも同じメンバーの数人だけ。
年に数回の屋上での天体観察の時だけは2、30人来るけど。
「じゃあ、僕も止めよっと‥‥‥‥ねぇ、途中まで一緒に帰らない?」
「え‥‥‥と。」
二葉ちゃんは急いで帰ってやることがあるから先に帰るって言ってもういない。
きゃーっ‥‥‥‥またあのあんこ3人組が見てる。
「あの‥‥‥‥でも‥‥‥」
「中村はもう帰っただろ?ならいいじゃん。」
「そうなんだけど‥‥‥でも‥‥‥」
どうしよう!何て言って断ればいいの?今さら部活にやっぱり行くとか言ってもいい?
「僕、蛇ノ目に聞きたいこともあるし。」
「聞きたいこと?」
「ここではちょと‥‥‥‥‥だから一緒に帰ろうよ。さあ、行こっ。」
雪村くんはそう言うとさっさと教室を出た。そして廊下に出ると振り向いて私を見た。
私は仕方なく席を立った。ちらっとあんこ3人組を見た。
あー、白玉さんが頬を紅潮させて私を見ている。その両隣で善財さんと亜月さんが私を睨んでいる。
私、好きで一緒に帰るわけではないのよ。それなのにどうして私が恨まれなきゃいけないの?
「早く来いよ、蛇ノ目。」
雪村くん、もしかしてあの人たちのことわざと煽ってない?
「‥‥‥‥‥」
私は無言で教室を出た。




