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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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門外不出美少女〈二葉〉

「すっげー!マナカの超スキル!」


 お兄ちゃんが驚いて私を見ている。



 今、マナカさんによる私のヘアメイクが終わった。

 ほんの20分余りで。



「ふふん、元がいいからよ。ねっ、二葉ちゃん!」


 微笑むマナカさんと鏡の中で目が合った。


「‥‥‥‥‥ありがとう、マナカさん。」


 私はテレテレしながらお礼を言った。


 だって制服以外では普段、小学生に間違われてしまう私が‥‥‥‥



 違う女の子になっちゃたみたいだよ。こんなちょっとマナカさんが触っただけで別人みたい。



 いつものツインテールはほどかれて肩にかかる髪は下ろされた。両サイドは三つ編みで後ろで一つにまとめられ、透き通った銀色のリボンが結ばれている。


 メイクはリップとアイラインとマスカラちょぴっとだけだったど、マナカさんがゲジゲジしてた私の眉毛を綺麗に整えてくれたら自分でもさっきまでと印象が全然違って見えるのがわかる。


 えへへ、これならちゃんと中学生くらいには見えるよ。多分。


 今までおしゃれなんてほぼ興味なかったけど、急に変身するのって面白いね。



「どうよ?私?惚れるなよ。ふふんっ。」



 流河くんの方を向いて威張ってみた。


 見るがいい!私のこの驚嘆動地のビフォーアフターを!



 むむうー!そしたら流河くんははしたり顔で私に対抗してきた。



「ふふん、まだまだっつーの。俺の方が美少女になれるぜ。」



 何なのさ?流河くんが女の子に?


 マジですかー?


 うそうそ、きっと、この前ラインで流河くんの不幸をネタにしてちゃかしてやったことを根に持ってそんなこと言ってるにに違いないよ。



「ふーん。そこまでいうのなら見せてくれるよねぇ?流河くん。」



「はっ?嫌なこった。何で俺が二葉さんに極秘の門外不出の俺の美少女を披露しなきゃなんねーんだよ。」


「あ、さっきのは嘘だったんだ?はーい、流河くんの負けー!」


 私はあざけた笑みを浮かべて斜めに見てやった。


「勝手に言ってろ!」


 そっぽをむいた。


 その、横顔。



 あれ?‥‥‥‥そういえば。


 私は流河くんの顔をまじまじ見つめた。


 この、きれいな輪郭。涼しい目元、すっきりした鼻筋。


 確かに‥‥‥‥なるかも。ホントだ!この顔なら。



「マナカさーん。私、美少女流河くん見たいよー。」



 私はマナカさんに甘えてみた。


「うふふー。流河はね、メイクするとホント美人になっちゃうのよ。二葉ちゃんのキュートなかわいさとは違うタイプのね。私のメイク研究の練習台になってもらってたのよね。最近は嫌がってなってくれなかったけど、ご要望に答えて久々に‥‥‥‥‥」



 マナカさんの目が流河くんを見てキランと輝いた。



「や、やめろよ。俺はもう練習台にはなんねーからな!」


 流河くんがうろたえ始めた。


「わー、俺も見たいなー。流河くんの美少女!ミチルも超イケてたし。」


 ミチルって誰だか知らんけど、お兄ちゃんも目をキランとさせて流河くんを見てる。


 きっと、ミチルって男子がよっぽど好みの女の子にミラクルチェンジしたんだろうね。


 3:1で壁際に追い詰められた流河くん。




「ふっ、ふっ、ふっ‥‥‥‥頼むよ流河くん。」


「さあ、さっき私に挑んだことが本当なのか証明してよね。」


「ほらほら、今日だけ特別にさー、いいじゃん。流河。」




「くっそ!これで最後だからなっ!」






「お前ら、出来上がるまで見んじゃねぇ。恥ずいじゃんか。」


 ターバンで髪を上げられた流河くんが椅子をくるりとターンさせ私とお兄ちゃんを睨んだ。



 私とお兄ちゃんはニヤニヤしながら後ろを向いた。仕方ないので二人でゲームでバトって時間を潰した。




「お待たせー!」


 ほんの、30分余りでマナカさんが言った。


「じゃーん!どう?美少女流河ちゃんよ!」





 そして、振り向いた流河くん。


「ほら、どうだよ?俺の美少女ぶりはよぉ?」




 そう言って椅子に座ったまま振り向いた流河くんは‥‥‥‥‥‥にこりと微笑んで見せた。



 美しい‥‥‥‥‥!


 マジ美少女じゃん。ウソでしょ!


 ニットキャップをキュートにかぶり、両サイドからはエクステで伸ばしたストレートの長い髪が出てる。


 男っぽい眉毛は前髪でほどよく隠されていてさほど気にならない。


 もともと切れ長の目にアイライン効果で小悪魔的魅力が出てる。

 くちびるはグロスでぷるるんとしていて、いかにも女の子っぽい。


 これ、まさかロメルちゃん越えだったりして。ううん、ロメルちゃんはノーメイクだもん。



「ふふん。見たか?俺の隠された実力を!」


 立ち上がって雑誌のモデルのようにポーズをとった。


 お兄ちゃんより背もちょっと高いし本当のモデルさんみたい。多分170センチ越えてる。



「‥‥‥‥‥うわー!やばいぜ!流河くん‥‥‥俺、一目惚れ!」


 お兄ちゃんが流河くんの右手を取った。


「やめろ!キモいぞ、ヒトミさんっ!」


 流河くんは握られた手をブンブン振ったけどお兄ちゃんは放さない。


「いいじゃん、男同士なんだからさ。ちょっと触ったって。」


「男だろうが女だろうが気安く触んじゃねぇ!」


 声はともかく、怒る流河くんもまた美しい。



「そうよ、全くもう!‥‥‥‥‥そういえばミチルの時はひざまずいてプロポーズしてたよね?」


 マナカさんが昔の出来事を思い出したらしい。


 むすっとしてお兄ちゃんの手をバシッとした。



「マナカー、冗談だってばー。」


 お兄ちゃんは慌てて取り繕っている。



 いいや、お兄ちゃん。今のはマジに見えました。むむむぅー。そういう気があったのか?



 知らなかった。私、お兄ちゃんのことなら何でも知ってると思ってたのに。



 マナカさんがいると今までなかった新たな刺激をもらえるね。


 私、今まで何で『私だけのお兄ちゃん』に固執してたんだろう?




 お兄ちゃんと二人も楽しいけど、マナカさんや流河くんがいた方がもっと楽しいや。


 今日は来て良かったな。


 マナカさん、流河くん、お兄ちゃん、ありがとう。


 私は心の中は珍しくほんの一時だけど素直になったのだった。


 ふと気がつくともう4時30分過ぎてる。


 外もいつの間にか薄暗くなってきてた。







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