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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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イブの祈り〈カイル〉

 


 あれから、ロメルは2度ほど水籠(みごもり)とデートに行こうとしていたが俺は直前で阻止している。



 1度目はロメルが出かける支度をしている時に俺が急な体調不良をロメルに訴えたため。


 俺は出もしないゲロを吐く真似をしてトイレにこもり演技した。

 あの時は無理矢理呻いたお陰で本当に喉を痛めてしまった。


 だがあの日、ロメルはすごく心配して、俺の背中をさすってずっとベッドの横に付き添ってくれた。

 俺のためにお粥を作って部屋まで運んでくれた。


 俺にとっては得も言われぬ日になった。



 2度目は、俺がリビングに出現したGを追いかけていたらロメルの部屋のドアの下から中に逃げ込んだ、と俺が嘘をついた。


 洗面所で念入りに鏡を見ていたロメルだったが、自分の部屋にGがいると聞いて青ざめた。


 色々物を動かして探したがもちろん見つからず、だからといってそのままにしておくのは気持ちが収まらない。


 ロメルはデートを断念し、Gを排除する方を選んだ。


 俺だって困っちまった。きっと見つかるまでロメルは納得しないだろう。


 俺はいもしないGを一緒に探す振りをし、およそ30分後、不意に終わらせるチャンスが訪れた。



 ピンポーン‥‥‥‥‥玄関のインターカムが鳴った。



 食材の宅配が届き、ロメルが受け取りに出た隙に、俺はリビングにあった一口大カップのコンニャクゼリーグレープ味を一つ素早くゲットした。


 そいつをトイレットペーパーで包みぎゅっと潰した。


 戻ってきたロメルに、出来上がったトレペボールを見せた。



「やった!ロメル、ついに俺が捕まえたぜ!」



 俺が掲げた汁が染みてる丸まったトレペを見てロメルは後ずさった。


 俺はバレない内にそれをさっさとトイレに流して捨てた。

 早くしないとブドウの甘い匂いに気づかれてしまう。



 俺はロメルを引き止めるため、必死なんだ。



 だが、3度目のクリスマスイブの今日、もはやそんな手は使えやしない。



 仕方がない。俺はロメルを待ち合わせ場所まで送って行こうと思う。


 そして、水籠(みごもり)を問いただす。


 なぜロメルにロザリオを贈ったのか。


 ロメルにおかしな真似はしていないか。


 そして、俺はロメルと水籠(みごもり)の付き合いを認めないと宣言する。


 そうだ。


 きっぱりと言ってやる!




「ロメル、俺も一緒に行くからな。水籠(みごもり)にも会っておきたいし。」


 俺とロメルで、母親をもてなすためのクリスマスディナーの準備をほぼ終わらせて、出かける支度を始めようとしたロメルに俺は言った。


「えっ?会うって?どうして?」


「俺だって知っといた方がいいだろ。それに俺、学校で水籠(みごもり)のこと聞かれること多くてさ。どんなやつか知っておきたいし。俺はすぐ帰るから。」


「そんなこと、知らないって言えばいいだけでしょう?私についてくるだなんて言語道断よ!絶対だめに決まってる!」


 ロメルはいつになく怒っている。


 やはり過去2回、直前デートを潰されたことは遺恨を残しているようだ。


 あのロザリオを受け取った日以降、ロメルと水籠(みごもり)は直接会ってはいないはずだ。



 ここでごり押ししたらヤバそうだ。


 俺は一旦引く。


「‥‥‥‥‥ロメルがそんなに嫌がるならしょうがないな。わかったけど、時間には帰って来いよ、絶対。」


「わかってる。ちゃんと帰るから。」


 ロメルは俺を冷たい目で見てから自室に着替えに入った。





 俺も自室に戻り一人で出かける支度をする。


 こうなったら先に出て待ち伏せだ。


 どうせ、ロメルたちの待ち合わせ場所はあの公園の正面とか、噴水辺りに決まってる。


 ロメルには2時間しかない。この辺でイルミネーションをみる場所なんて限られている。


 たぶん、ロメルと水籠(みごもり)は見つけられるだろう。


 ロメルはそこにいるだけで目立つ。




 俺は地味な目立たない服装に着替え、明るい色の髪が隠れるようにニットキャップを目深にかぶった。



 ロメルの部屋をノックして扉越しに言った。


「俺、ちょっとコンビニ行ってくる。玄関戸締まりよろ。ロメル、気をつけて行って来いよ。」


「わかった。」



 俺は自転車に乗り駅前の大きな公園まで飛ばした。


 今はまだ明るいが、そのうちあっという間に暗くなってしまうだろう。





 俺は運命の神様に祈る。


 聖なる日を迎えるための前夜、イブに。




 神様、俺の下にロメルを返してください。


 俺はロメルがいなければ生きてけないんだ。


 俺は今まで兄妹の禁忌は侵してはいない。


 神に恥じることなど一つもない。


 運命よ。俺の味方になって下さい。




 だがもし、俺の願いが聞き入れられないのならば俺だって近いうちに神を裏切らねばならなくなる。




 俺は公園に着くと茂みの脇の目立たないところに自転車をとめてカギをかけた。


 さて、全体を見渡せる場所は‥‥‥‥‥‥‥


 あのベンチに座っていよう。


 首につけているこのネックウォーマーで鼻まで覆ってしまえばもう俺の顔はほとんどわからないだろう。


 これなら気付かれない。



 今、午後4時37分。


 既に薄暗くなってきた。


 ロメルと水籠(みごもり)の待ち合わせは5時15分。



 さあ、早く来るがいい!水籠(みごもり)沙入。



 俺がバシッと言ってやる。


 ロメルに近づくなと。


 俺の運命の片割れ、ロメルに。











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