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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第2章
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回想 〈二葉〉

 今日はクリスマスイブ。


 私はもう今日から冬休みに入ってるけど、お兄ちゃんは明日から。

 今日は半日だけ学校行ってる。


 もうすぐ午後1時になるからそろそろ帰ってくるかな。


 今日は私、お兄ちゃんとあるところへ招待されてんの。


 美味しいものたくさん食べるんだー。えっへっへー。




 今日みたいな特別な日にはね、特に思い出すんだ。


 私はあの約1ヶ月半前の運命の分かれ道だった日のことをまた思い出す。

 

 今だって細かく鮮明に覚えてるよ。あの土曜日の事。




 ほんと、世の中思い通りにはいかないよね。




 忘れもしないよ。あれは初めてロメルちゃんと流河くんと沙入くんと私の4人で、新黒豆駅前公園で待ち合わせした日のことだった。


 あの日私は表向き、流河くんに謝罪されるためにロメルちゃんに同行して、向こうからの攻撃にもしっかり備えて出向いた訳だけど‥‥‥‥‥


 今思えば、ロメルちゃんとの二人での事前の待ち合わせからしてへんてこりんな具合だったな‥‥‥‥‥


 そんで、ロメルちゃんと流河くんと私の3人でロメルちゃんのフェイク彼氏の沙入くんが待ってる公園のベンチまで行った時には既に想定外の分かれ道へと向かっていたのだった!



 その時、流河くんにおいては、ロメルちゃんに出会った早々から既にロメル効果は発動し始めてた。


 その時から流河くんは、すっかりロメルちゃんに惹かれてたってこと。


 私の見解ではね、多分、あれだね、『吊り橋効果』ってやつ。あれがさらに効果倍増させちゃったんじゃないの?


 きっと、小白くんたちと対決して二人で共通のドキドキ体験しちゃってさ、余計に好きになっちゃったんじゃない?


 でも『吊り橋効果』って長く続かないらしいけど‥‥‥‥‥


 でも、流河くんは今も続いてるよ。苦しい切ない片想い。





 で、想定外の原因。沙入くん。


 沙入くんは私たち3人が合流して、すぐにロメルちゃんにだけかまいっきりでさ、待ち合わせ場所に来た私と流河くんのことはほぼ無視。


 べたべたなれなれしくロメルちゃんに触ってさ、その時からまるで本物の彼氏のようだった。

 フェイクのくせにおかしいって、こいつ絶対マジでロメルちゃんにお熱だって思ったよ。


 あげくの果て流河くんと私を残して、ロメルちゃんを連れて他の場所に移動してしまうしさ。


 あの時、あの時だよ!何で妨害しなかったんだろ?

 うすのろばかの私。そうすれば運命は変わってたかもしれないのに。


 でも、ま、それはそれで。今となっては。





 さて、残された私と流河くん。


 流河くんは暫く、ロメルちゃんたちの後ろ姿を悔しげに見ていた。



『流河くんも沙入ってやつもどうせ想いは叶わないよ。

 だってロメルちゃんは家のお兄ちゃんのこと好きなんだもん。

 ロメルちゃんは我が家の嫁になる運命なんだから!あんたたちがロメルちゃんを好きになったところで私が邪魔してやる‥‥‥‥』



 その時はそんな風に楽天的に考えてたのがとんだ間違いだったんだ!


 向こうではあんなことになってるなんてさ、後悔先に立たずってほんとだね‥‥‥‥‥しくしく。




 私は未来の家の嫁(ロメルちゃん)をプロテクトしつつ、その前に、いっちょ、こいつに文化祭でいちゃもんつけてきた落とし前つけてもらおうか‥‥‥‥なんてつもりで流河くんに対峙していた。

 さらにしっかりものの私は、流河くんからのさらなる攻撃に警戒もしていたし、備えもしていた。



 ロメルちゃんと沙入くんの後ろ姿に対し、どう見ても嫉妬の視線をいつまでもしつこく送っている流河くん。


 我慢の限界を迎えた私は言った。



「まず、自己紹介よ!私は中村二葉、新黒豆中2年。一深(ヒトミ)の妹だよ。で、あんたは?」


 私は主導権を握るべく仕切ることにした。


「‥‥‥‥あ?ああ、わり。俺は青豆中2年、池中流河(ルカ)。池中マナカの弟だ。」



 心ここに在らずの流河くん。



「とりあえずこのベンチに座るよ。流河くん。」



 流河くんは、さっきまでロメルちゃんが座っていた所に座った。



「で、どういうことさ?流河くん。反省してるって本心なの?」


 私はなるべく強面を作りつつ言った。何事も最初が肝心だからね。


「ぷっっ‥‥‥‥‥兄妹って似るんだな。‥‥‥‥そういや、ヒトミも面白いやつだよな。」



 流河くんは私の顔を見て思い出したように言った。



「はっ?」


「マナカが毎日ヒトミの話してさ。眉毛大丈夫なのか?あれ。」



 ‥‥‥‥‥おうっ!あれ、知ってたのか!流河くんまで‥‥‥‥



 お兄ちゃんはマナカさんと付き合いだしてから行動に変化が現れ始めた。


 その一環におしゃれに気を配る、ということが含まれていた。


 その日から一週間前の土曜日のこと。


 お兄ちゃんは鏡を見ては眉を抜いてみたりちょっと剃って見たりを1日繰り返していた。

 ロメルちゃんが勉強会に来た午前中はまだなんとか、まだなんとか許容範囲ではあった。


 お兄ちゃんによれば勉強を見てあげた時にロメルちゃんに褒められたって喜んでいた。


 そこでやめときゃよかったのに。


 さらにその後、雑誌のイケメンモデルの顔を参考にさらに整えた(?)らしい。


 夜になった頃は取り返しのつかないことになっていた。

 まあ、私としては、これでお兄ちゃんがマナカさんから振られてくれたら、うぇーいって感じだったけどね。



 結局は、学校でマナカさんがアイブロウペンシルで眉を描いてくれたらしい。


 マナカさん‥‥‥優しいんだね。お兄ちゃんの顔、こんな乙なことになっちゃったのに。



 ついでにそのペンシルも貰ってきた。


 何でも文化祭で使った残りらしい。



 その話を流河くんに話している内、知らない間に私の強面に作った顔は普通に戻ってた。


 あの顔、疲れんだよね。



「文化祭ん時は、悪かった。ついかっとしちまって。ヒトミはちょっと変だけど、いいやつって感じはしてる。マナカがヒトミを選んだんだ。で、今日はロメルからもヒトミの話聞いてさ、もうけりつけようと思ってたけど‥‥‥‥あいつら戻って来んのかよ?」



 なんだか、流河くんはもう、お兄ちゃんとマナカさんのことはどうでもいいっぽい。


 どちらかというと、その事にかこつけてロメルちゃんとお話したいようだと私は推測した。



「どうだろうね?10時半過ぎても戻ってこなかったらロメルちゃんに電話してみるよ。沙入って男子はロメルちゃんのフェイク彼氏してるだけなのになれなれしくし過ぎだよ!」


 私が言うと、流河くんは眉を寄せた。


「何だよそれ?ロメルのフェイク彼氏って?フェイクって偽物だろ?ロメルは沙入の彼女じゃん。」








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