邪魔はさせない〈沙入〉
俺は、約束のベンチに座って流河とロメルがやって来るのを待った。
あいつら、俺が何も知らないと思ってんだろうな。
どんな顔して俺の前に来る?
お、来た。
俺が座ってから5分と立たず流河が来た。その後ろにはロメルと二葉っていう子。
3人お揃いで登場のようで。
「遅っせーぞ!お前ら!3分遅刻だぜ?流河、先に来てたんじゃなじゃったのかよ?」
俺はわざと尊大な態度をしながら流河に言った。
さあ、訳を言ってみろよ、流河。
俺は流河の表情を観察する。
「わりぃ、沙入。ちょっとうろうろしててさ。」
いつもと変わらない態度と表情だ。
ロメルと秘密に会っていたっての、おくびにも出さない。
俺、今まで流河ってこんな器用なこと出来るやつだなんて思ってもいなかった。
流河って、見かけと違って周りの空気読めねーし、細かいこと気にしねーし、まして隠し事なんて出来ねー不器用なやつだと思ってた。
こんな面もあったんだな。流河。
何で二人で早めに待ち合わせを?
ロメルは流河のこと好きなのか‥‥‥‥?
こいつらもう付き合ってる?
ロメルは俺がロメルの見せかけの彼氏役だって流河に話したのか?
だとしても、俺がかっさらう。
見てろ、流河。
俺の前に流河とロメルが並んだ。
「ごめんなさい、遅れてしまって。おはよう、沙入くん。」
俺の呼び方、教えてあんだろ?ったく、いい加減なれろよ。
「‥‥‥‥‥‥ちげーだろ?」
ロメル‥‥‥‥いつの間に流河と?
俺は不機嫌な声を出す。
「んっと、おはよう、沙入。」
恥ずかしそうに言うロメルは先週と変わらない。
「おはよ、ロメル。会いたかったぜ。とりあえず隣に座れよ。」
俺はロメルを左隣に座らせた。
俺の隣に素直に座ったってことは流河とは付き合ってるって訳じゃない?
「俺、ロメルに用があるからさ、お前ら向こうで話してこいよ。流河、こいつに謝んだろ?」
流河を見ながら二葉を顎で指しながら言う。
邪魔物は追い払う。そして、
俺は俺の今日のミッションを果たすのみ。
流河と二葉がまだそこにいたが、俺はかまわず目の前で左腕をロメルの肩に回し抱き寄せ耳元でささやいた。
「俺さ、1曲、曲作ってスマホにセルフィー撮ってきたんだぜ。聴いて感想きかせてよ。」
「本当?沙入ってすごいのね。」
ロメルは俺を尊敬の眼差しで見つめて来た。
流河を横目でチラ見すると、ロメルを見ている。
流河のイラついた時の癖、左手の親指と中指をこすり合わせる癖。
ふーん。やっぱ、そうなんだ。
流河の気持ち、見えてる。
でも、もう、遅いぜ?
見てな、流河。
俺は付け加えてロメルの耳もとでささやく。
「それ、ロメルに捧げるラブソング。」
「‥‥‥‥私に?」
ロメルは顔が赤くなった。
俺とロメルのすぐそこにいまだ流河と二葉がうだうだと佇んでる。
ったく、この二葉って子、声でけーし、高けーし、うっさいやつだぜ。
ボイトレでもしてんのかよ?邪魔なやつらだぜ。早くどっか行けっつーの。
ふと、流河と目が合った。
ふっ、何か言いたそうな、不満そうな顔してら。
おまえに邪魔なんかさせない。俺をバカするのは許さない。
「早く行けよ、流河。俺らここにいるからさ。」
「あ‥‥‥‥そうだな。」
俺が斜めに見上げて言うと我に返ったような顔で返してきた。
「ほら、行くよっ!」
「いてっ!」
「おまえ‥‥‥‥‥いきなり何すんだよ!痛てーじゃねーか!」
こいつらが目の前で騒ぐもんだから俺らいい雰囲気だったのに台無し。
しかもロメルは‥‥‥‥‥
「二葉ちゃんたら。ダメよ、流河くんにそんなことしないで。流河くん、ごめんなさい。大丈夫?」
なんで流河なんか気にする?
「ああ、別に。」
なんでロメルと見つめ合う?
ロメルは俺が先に見つけたんだぜ?
流河はもうかかわんな。
「‥‥‥‥‥‥ったく、おまえらうっせーぞ!ロメル、俺らがどっか行こうぜ。」
俺は乱暴にロメルの手首を引く。
「きゃっ!」
ロメルはよろめいて俺の胸に入った。
「ごっ、ごめんなさい。沙入くん。」
ロメルは俺からすぐ離れたが俺はロメルの手首は放してはいない。
「じゃあなっ!」
俺はロメルを連れ公園の奥へ向かった。
静かな場所で、ロメルにメロディとともに想いを伝える。
「ちょっと、あんた!15分後には戻りなさーい!さもないとお仕置きだよっ!ロメルちゃんもわかったねー?」
俺らの後ろで二葉って子が叫んでいるのが聞こえる。
おまえら、これ以上俺とロメルの邪魔すんな。
いくらなんでも15分で口説くのは無理。
悪りーな。待ってろ。
戻って来たときには俺らはもう本物の彼氏と彼女になってるぜ。




