目撃〈沙入〉
沙入が約束の公園に向かっているところから。
俺はチャリで約束の公園に向かっていた。
流河、まさかまた寝てんじゃねーだろうな?
俺はおまえのために初デートを半分犠牲にしてんだぜ?
流河は時々寝坊することがある。
俺は赤信号で止まったついでにふと気になって流河に電話した。
流河はすぐに出た。
「よお!起きてんだろーな?遅刻すんなよ。」
俺が言うと意外にも、
「おう、沙入?俺、もう着いてる。」
って返事が帰って来た。
珍しいな。いつもギリのくせに。どうしちゃったの?
俺は安心して、またチャリをこぎだした。
今日は俺、ロメルを本当の彼女にしちまう予定。
俺はあの日会った時からロメルに惚れている。
ロメルだって俺の本気がわかればきっとうなずく。
おっと、そうだ。
コンビニに寄って口臭ケアのガムかタブレットでも買って食っとこ。
最初が肝心だぜ!
俺は公園の側にある広い駐車場付きのコンビニに寄った。
時計を見ると9時40分。
まだ余裕だぜ。
俺は店に入りペパーミントのレモン味のタブレットを買うと外に出た。
さてと、今のうちに食っとこう。口臭男なんて最悪だろ。
俺は店の前ですぐに封を開けて一つ口に入れた。
目の前は横断歩道を渡ればもう公園だ。チャリはその辺の隅にとめときゃいい。
俺はチャリにまたがり信号が変わるのを待った。
ったく、ここの信号長げーんだよ。俺が来たらすぐ変われっつーの。
俺は目の前の公園の出入口をなにげに見ていた。
「!」
あれっ!
流河じゃん。誰かと一緒に‥‥‥‥‥‥‥ってあれはっ!
ロメルじゃん!
流河とロメルが手をつないで走ってる!
公園から出て曲がるとそのまま駅方面へ駆けていく。
どう言うことだよ!?
流河はロメルのこと名前以外知らないはず。ロメルだって流河のことあの時一度見ただけだって言ってた。
今俺と電話したばっかじゃん。
流河、なんも言って無かったよな?ロメルと一緒にいるなんて。
‥‥‥‥‥隠してた?
俺の胸が疼いた。
流河とロメルが駆けて行った後、どこからどう見てもDQNの二人組がチンタラ走ってきた。
どうやら、流河とロメルを追いかけている?
だが、奴等は途中で止まって戻ってきた。
信号が青になった。
DQN二人組は走って戻るとこちら側に渡って来た。
やっと信号が変わったが、俺はチャリにまたがったまま止まっていた。
やつらが喋っている。
「‥‥‥‥ったくさー、こっちは親切で言ってやってんのに!」
「蛇ノ目、男を見る目ねーよな?顔しか見てねーんじゃね?あんなすぐに逃げ出すヘタレ、嗤えるよな。」
俺は回れ右でやつらの後ろについて行った。
やつらはコンビニ前に設置してある店のでかい看板の横で止まって喋りだした。
俺はさりげなく、スマホをいじるふりをしてやつらの横に留まった。
「いいよなー、あいつ。蛇ノ目にあんな風に腕に抱きつかれてーよなー‥‥‥『お待たせー、小白くん。』ってさー。」
「あの男、ぜってー腕に蛇ノ目の胸当たってたぜ、あれ。」
「あいつら、どこまでいってんの?蛇ノ目、遊んでんのって本当かもな。」
「それな。噂じゃ先週もあいつと二人きりでカラオケオールしてたんだろ?」
「‥‥‥‥‥‥あんな純情な顔してんのにな。」
「俺ら、そんな軽いやつらとは違げーってのがわかんねーのかよっ!蛇ノ目はさ。ったくよぉー!こっちはマジなのに。」
「それなー!俺らで更正させてやろうぜ。」
大体のことはわかった。
こいつらにもう用はない。
俺は横断歩道を渡り公園に向かった。
俺はあの『コハク&おまけ』二人の言っていたことを反芻していた。
あいつの話の内容では、流河は『お待たせー、流河くん。』ってロメルから腕に抱きかれたってことだろ?
あいつら、俺に内緒でもっと前の時間に二人だけで会う約束してたに違いない。
密かにつながってやがった。
俺に隠して。
俺をバカしてんのか?
何か訳があるなら来た時言うはず。
さて、流河。
俺になんて言う気だ?
公園に入りその辺にチャリを止めカギを二重にかけると約束の待ち合わせのベンチに向かった。
何でこうなんの?
俺はムシャクシャしながらベンチに座った。
何で俺の役が流河と入れ替わってんの?
酷くね?
ロメルは俺が彼女にするっての。もう半分そうなってんじゃん。
後からしゃしゃり出て来んなよ、流河。
いくらおまえでも、許さねーからな。こんなの。
なんだよ?あいつ、ねーちゃん命じゃなかったのかよ?
ったく。クソが!ロメルを狙ってるやつ、どんだけ出てくんの!
わかってるだけでも『雪村くん』にロメルの守護してる兄ちゃん『カイル』、さっきの『コハクくん&おまけ野郎』。
もし、これに流河が加われば一番の強敵は流河。
俺の大事な、俺が認めてる男。
そうなったらきっと簡単には俺をロメルとイカせてくんないだろ?
流河がこれ以上絡んで来る前に決めちまうしかねぇ。
悪りーな、流河。俺、先いただく。




