一触即発〈ロメル編〉その1
「どういうこと!」
私は玄関のドアが閉まったとたん我慢出来ずに言った。
どうして私があの部屋にいるってわかったの?まさか‥‥‥‥‥ずっと私を監視していたとでも言うの?
私はカイルの目をキッと睨んだ。
カイルは参ったような困惑の顔で言った。
「俺、駅前の本屋に行ったんだ。そしたら偶然ロメルを見かけて‥‥‥そしたら見たことない派手な男と腕を組んで歩いていたから‥‥‥‥俺、驚いて‥‥‥‥」
あれ‥‥‥‥‥。
私の思い違い?私を監視してた訳では無かった?
私ったら‥‥‥‥‥‥‥自意識過剰だったの‥‥‥‥‥かな。
確かに男の子にくっついてあんな風に歩く私なんて見たらびっくりしてしまうのも当然と言えば当然だけど。
「あ‥‥‥‥‥そうだったの?本屋さんに‥‥‥‥」
「ああ、冬季号の『パノラマ天体観測』が出たから先週から買いに行こうと思っていたんだ。俺、今日午前中はロメルの代わりに掃除やら片付けしてただろ?だから行く暇無くて。ロメルが出かけた後、俺も家を出たんだ。」
私がお手伝いを代わってもらったせいでカイルは午前中時間がなかったんだ‥‥‥‥
それで、出かける時間が重なったんだ‥‥‥‥‥私を見かけたのって半分は必然的だったの?
でも、だからって、いきなり連れ戻しに部屋に入って来るなんて。
私は納得できずカイルを責めた。
「俺だって迷ったさ。こんなことするのは。でも、ロメルがあんなチャラい男と二人きりの部屋で‥‥‥‥もし迫ってこられたらどうすんだよ!」
ええっ?カイル、そんなこと考えてたの!
まさか、あの部屋であの沙入くんと私がキ‥‥するって、もう!考えようとするだけで恥ずかしいってば!
沙入くんが私にそんなことしようとする理由すらないの。
「そっ、そんな事あるわけないでしょ!」
「そんなことわからないだろ。だって、あれがロメルの言っていた隣の中学の彼氏なんだろ?だったら‥‥‥‥‥‥」
うわっ、忘れてた!そういえばカイルにも隣の中学に彼氏がいるって嘘ついてたんだっけ!
やばっ。私ったら、その都度いい加減なことばかり、言っていたから‥‥‥‥
「えっ?あ、うん、そうだけど‥‥‥‥その、おかしな想像はしないで!そんなんじゃないから。沙入くんとは。」
敵を欺くには先ず味方からっていうもの。
カイルにもこのまま沙入くんが彼氏だと言うことにしておこう。でも、カイルにそんな恥ずかしい想像をされるのも嫌だわ。本当は今まで、というか今だって彼氏なんていないし、いたことすらないのに。
カイルの顔がすっごく険しい。カイルがこんなに怒るなんて。男の子とカラオケに行っただけなのに。
これってそんなにいけない事だったの?
これって私、迂闊な行動だったの?
私はただ話をするために行っただけなのよ?
「男を甘く見んなよ!俺だってやろうと思えばいつだって出来んだからな!」
カイルが突然私の左手首をガシッと掴んだ。
痛いっ!
な、何?
私を抱き寄せる。
「なっ!」
すれすれに向き合った顔と顔。
カイルの息がかかる。
ほんの数秒のこと。
カイルはすぐに私から手を放した。
「‥‥‥‥あいつだって同じ位の力があるんだ。わかっただろ?」
カイルは諭すように言った。
びびび、びっくりしたー!
‥‥‥‥そっか、今のは。
カイルは男の子の本気の力を私に教えようとしたの。
だからっていきなりこんなこと‥‥‥‥‥‥しなくても。
カイルは私に注意し終えて満足したらしくさっさと部屋の方に行ってしまった。
今頃ドキドキしてきた。
私は玄関でコートを脱いで、ブーツも脱いで、それらにスプレーをかけたりしながら今、カイルから受けたショックが落ち着くのを待った。
確かに中学生にもなれば普通の女の子は男の子の力には敵わない。そんなこと知ってる。
でも、まさか沙入くんが私にあんな風に暴力的に迫ってくるなんてあるわけないの。
だって私は偽物彼女だもん。
カイルは知らないからおかしな想像を‥‥‥‥‥




