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全然近くて全然遠い!  作者: メイズ
第1章
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フェイク彼氏〈ロメル編〉

 私は沙入くんの腕に掴まりながら公園を出た。


 沙入くんの足は駅の方に向かっている。


「ロメル、まだ、俺の腕に絡まってろよ。『雪村くん』がこっそり見てるかもしれないぜ?‥‥‥‥うーん、俺らどこで話そうか?」


 そうね、偶然を装ってわざわざ私の彼氏を見に来るなんて‥‥‥‥‥まだ、油断できない‥‥‥‥‥私、本当に窮地だった‥‥‥‥‥


「あの‥‥‥‥‥普通のお店だと雪村くんが来る可能性もあるし、私、話を誰かに聞かれたくないの‥‥‥‥‥‥そうだ、あっちの線路沿いのカラオケ店でもいいかな?部屋で二人で話せるし他の人はこないもの。これ、私の都合で私が言い出したのだから私が払いますから。」


 私は沙入くんは私の彼氏だと雪村くんに思い込ませるために完璧を期した。


 カラオケルームなら誰にも話は聞かれないし、もし、まだ、見られていたとしたら二人でカラオケに行くなんて、いかにも仲良さげじゃない?

 お小遣い、今月はまだ、ほとんど使ってなくってよかったー。



「オーケー。」



 沙入くんは言った。


 それからは黙ったままだった。


 横顔をそっと見た。


 きれいな横顔。切れ長の目。白くて綺麗な肌。細い首。


 今は無表情。




 沙入くんは咄嗟に助けてはくれたけど、本当は内心迷惑千万だよね‥‥‥‥‥


 知らないうちにほとんど知らない人の彼氏ってことに勝手にされていたんだもの。

 私だって、もしそんなことされてたらひいてしまう。


 私、まさにヤバい人に相当してる。


 だって、咄嗟についた嘘を、まさか本人の沙入くんに知られちゃうなんて思いもしなかった。


 こんなに手慣れてる風のカッコいい人だもの、彼女だって絶対いるはず。

 私が沙入くんにこんなくっついて歩いてるの見たら彼女だって激おこだよ‥‥‥‥‥‥



 まずは‥‥‥‥この事を謝ることから始めなければならないの。






「さて、と。どういう訳?」


 部屋に入り座ったと同時に沙入くんが訝しい顔で私を見た。


 うっ‥‥‥‥‥怒ってる。



「あの‥‥‥ごめんなさい。迷惑をかけてしまって。のど、乾いてない?何か飲む?」


 私が言うと、怖い顔で返してきた。


「‥‥‥‥‥‥‥‥俺が聞いてんのは違うだろ?」


 そうだよね、こんな嘘をついて勝手に名前を使われたことについて聞いているのに。


 私はつい、出任せを言ってしまったいきさつをしどろもどろながら話した。


 これで、伝わったかな?


 私はそっと沙入くんの顔を見た。



「ふうん。じゃあ、彼氏がいないロメルは雪村避けに俺の名前を利用したってことなんだ?」


 はい、すみませんでしたっ!その通りなのです‥‥‥‥


 沙入くんの言葉尻には大変気分を害してるのが現れている。どうしよう‥‥‥‥なんて言えば許してくれるのかしら?



「あ‥‥‥‥‥本当にごめんなさい。沙入(サイリ)くんに迷惑をかけるつもりはなかったの。私、こんな嘘を言ってしまって‥‥‥‥まさかこんなことになるなんて。きっとこんな事わかったら沙入(サイリ)くんの彼女も怒ってしまうよね‥‥‥‥‥‥‥」


 うっ、私ったらいいわけがましいことしか言えない‥‥‥‥‥‥語彙力なし。



 それにも関わらず、沙入くんは、

 

「ふーん、仕方ねーな。じゃあさ、そのまま周りにはそーゆー事にしといていいぜ。困ってんだろ?俺、彼女とかいねーし。」


 急にどうでもいいことのような態度に変化した。


 沙入くんは私のあまりに痛い人ぶりに呆れて怒る気を無くしたのかな?




 ‥‥‥‥‥これってあの、災い転じて福と成すとかっていうやつ?



「いいって言ってんじゃん。じゃ、そういうことだから、今から俺のこと呼び捨てにしてみろ。その方がそれっぽいし。ほら、言ってみろよ。」


 これからも彼氏の振りしてくれるってこと?


 でも、いきなり呼び捨てなんてハードル高いよ‥‥‥‥‥でも、沙入くんもいつのまにかなぜか私のことも呼び捨てにしてたよね‥‥‥‥



「えっと‥‥‥‥沙入(サイリ)‥‥‥‥?」



 言って見たけど、恥ずかしい!



「ったくよー!ちゃんと言えよ!俺は彼氏だぜ?ロメル。」



 せっかくの沙入くんの親切だもの。ここはありがたく乗っておこうかな。

 カラオケ代も払う甲斐があるってものよね。



「‥‥‥‥ありがとう、沙入(サイリ)。」



 私は恥ずかしながら思いきって言ってみた。 


 なんて親切な人なのかしら。沙入く、じゃなくて沙入。感謝、感謝!



「じゃ、早速来週デートしようぜ。ラインも送るから既読スルーすんなよ?」



 え?沙入くん、そこまでしてくれなくてもいいのよ。私はこれでもう十分だわ。



「えっ?そこまでリアルにしなくても‥‥‥‥‥沙入(サイリ)くんだって迷惑でしょう?」


「サイリだろ?」


 何かまた不機嫌ぽい?どうして?


「あー、雪村にさっきのは嘘だってばれてもいいんだ?」



 ‥‥‥‥そうか、何か沙入くんとのこと聞かれた時のために一回くらいデートみたいなことをしておいた方がいいって言っているのかな。




 って沙入くんと話してたら!



「ロメルっ!」



 なぜかいきなりカイルが部屋に飛び込んで来た!


 ど、どうして?


 どうしてここにカイルが?


 「ロメル、こいつ誰だよ?」


 沙入くんはめっちゃ迷惑げに私言った。 


 私はこの人は私の双子の兄だと説明した。


 

「ロメルっ!男と二人きりでこんな所に入るなんて!何考えてんだ!帰るぞっ!」


 

 カイルは私たちがここに来た事情も知らないのにすごく怒っている。



 沙入くんは激昂しているカイルと戸惑い慌てている私をあきれて見ていた。



「お前、ちゃんと料金払っとけよ!」



 私の腕を力ずくで引っ張りたたせるとカイルが沙入くんに言い捨てた。



 私はカイルの力ずくには抗う力はないの。


 部屋から簡単に連れ出されてしまった。




 私とカイルはそのまま無言で家まで帰った。


 だって、どちらかが一言でもしゃべったらもう止まらなくなってしまうのはわかりきっている。



 きっとお互いに、聞きたいことも言いたいこともどうにかこらえている状態なの。



 私、沙入くんにはどう思われてしまったの‥‥‥‥‥‥?







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